粟島様(あわしまさま)〜2022年七夕に寄す〜
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一方、その頃の藍染は、ジャスミンティーを淹れ、それを口に含み含み隊主室で書類整理にあたっていた。
(絶世の美女、というわけではないが、気の強そうな、いい面構えだった。)
何度も思い返すと、柔らかな唇から漂ってきた甘い血とジャスミンティーの香りを思い出し、たまらなくなった。
藍染はニヤついて、
(ジャスミンティーを口にするのは、あと十件、書類を片付けてから。)
と己を制すと、仕事に黙々と励んだ。ああいう女は、きっと仕事の出来ない男は嫌いだろう、と藍染は勝手に想像して、己を律していた。そこが藍染と市丸の違いである。
市丸は相変わらず仕事をせず、神槍の手入れをしていた。
「藍染隊長、今日も例の…。」
「決まっているじゃないか。」
「何のせいで座標が狂っとるん?東仙さん、むっちゃ責任感じてたで。」
市丸は別に気の毒でもなさげにそう言った。
(嗚呼、彼女に会いたい…。)
藍染はあっという間に書類を十件分片付けると、少しだけジャスミンティーを口に含み、口の中で転がした。
「うわあ、藍染隊長、それであン女(ひと)の口吸うとるつもり?きしょ!!」
市丸に嫌味を言われても、反論するでもなく、藍染は上機嫌だった。別に市丸の怠勤を責めるでもない。
(あちゃー、藍染隊長がポンコツになっとる。)
市丸は肩をすくめて隊舎を抜け出した。
「別に藍染隊長の逢い引きに付き合う気ぃないんやけど。」
市丸は口にすると、干し柿を買いに行った。
「七夕に始まった恋なんに、毎日会うなんておかしいやろ。」
市丸はまだブツブツ言っていた。
「現世の流行病(はやりやまい)、あン女(ひと)の唇に触って、藍染隊長もかかったんと違うんか。あれ、絶対熱あるで。」
市丸は干し柿を手に取った。
「あン女(ひと)の分も買うてくか。タダでラムネもろうたん、悪いし。」
市丸は干し柿を二綴り買うと、素直に隊舎へ戻った。藍染の後ろには片付け終わった書類が山になっていた。
「アホらし。ようやるわ。」
市丸は干し柿にむしゃぶりついた。
藍染は湯呑に口を付け、マスクの下もいい女だった、と、ふっ、と口元をゆるめていた。
(彼女と出会えたのは、きっと粟島様のお引き合わせだ。)
藍染は、あの桜の木の下にある石塔に供える、一等上質な清酒を買いに行こうと考えていた。
(そうすれば、あの老婆もきっと喜ぶだろう。)
彼は美里の祖母のことも慮った。
藍染惣右介、きっと美里のお眼鏡に叶うに違いない。
〈了〉
(絶世の美女、というわけではないが、気の強そうな、いい面構えだった。)
何度も思い返すと、柔らかな唇から漂ってきた甘い血とジャスミンティーの香りを思い出し、たまらなくなった。
藍染はニヤついて、
(ジャスミンティーを口にするのは、あと十件、書類を片付けてから。)
と己を制すと、仕事に黙々と励んだ。ああいう女は、きっと仕事の出来ない男は嫌いだろう、と藍染は勝手に想像して、己を律していた。そこが藍染と市丸の違いである。
市丸は相変わらず仕事をせず、神槍の手入れをしていた。
「藍染隊長、今日も例の…。」
「決まっているじゃないか。」
「何のせいで座標が狂っとるん?東仙さん、むっちゃ責任感じてたで。」
市丸は別に気の毒でもなさげにそう言った。
(嗚呼、彼女に会いたい…。)
藍染はあっという間に書類を十件分片付けると、少しだけジャスミンティーを口に含み、口の中で転がした。
「うわあ、藍染隊長、それであン女(ひと)の口吸うとるつもり?きしょ!!」
市丸に嫌味を言われても、反論するでもなく、藍染は上機嫌だった。別に市丸の怠勤を責めるでもない。
(あちゃー、藍染隊長がポンコツになっとる。)
市丸は肩をすくめて隊舎を抜け出した。
「別に藍染隊長の逢い引きに付き合う気ぃないんやけど。」
市丸は口にすると、干し柿を買いに行った。
「七夕に始まった恋なんに、毎日会うなんておかしいやろ。」
市丸はまだブツブツ言っていた。
「現世の流行病(はやりやまい)、あン女(ひと)の唇に触って、藍染隊長もかかったんと違うんか。あれ、絶対熱あるで。」
市丸は干し柿を手に取った。
「あン女(ひと)の分も買うてくか。タダでラムネもろうたん、悪いし。」
市丸は干し柿を二綴り買うと、素直に隊舎へ戻った。藍染の後ろには片付け終わった書類が山になっていた。
「アホらし。ようやるわ。」
市丸は干し柿にむしゃぶりついた。
藍染は湯呑に口を付け、マスクの下もいい女だった、と、ふっ、と口元をゆるめていた。
(彼女と出会えたのは、きっと粟島様のお引き合わせだ。)
藍染は、あの桜の木の下にある石塔に供える、一等上質な清酒を買いに行こうと考えていた。
(そうすれば、あの老婆もきっと喜ぶだろう。)
彼は美里の祖母のことも慮った。
藍染惣右介、きっと美里のお眼鏡に叶うに違いない。
〈了〉