粟島様(あわしまさま)〜2022年七夕に寄す〜
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小さな広場に古い平屋、「昌田町集会所」という小さい石碑、そしてその奥に、桜の木の下に祀られた氏神の石塔、そこには人気はなく、虚の生成実験を行っても現世の人間は誰も気付かない。今日も藍染と市丸、藍染派一党の死神達は、夜陰に紛れて実験に使った虚をそこで始末した。
「なあ、藍染隊長、座標がずれとらん?こない小さな広場やのうて、もっと大きい空き地に虚が出るはずやなかったん?」
市丸は斬魄刀を振り、虚の残骸を刃から振り払いながら問うた。同じく刀を振り、刃を鞘に納めながら、
「そうだね…この間から修正されていないようだね。」
藍染は考え込んだ。今のところ現世の人間にも、瀞霊廷の死神達にも、この実験は見つかっていない。しかし虚を出現させる地点が、明らかに予定とずれていた。
「東仙さんがいけへんの?機械をいじくってんの、東仙さんやろ?」
虚生成実験は、瀞霊廷と現世の二手に分かれて行われていた。
「じゃあ今度は君が瀞霊廷に残るかい?」
藍染は市丸に聞いてみたが、市丸は機器の操作に自信がなさそうだ。
「それでは次回は私が瀞霊廷に残り、ギンと要に虚討伐をお願いするよ。」
藍染は伝令神機に残した記録映像を確認すると、
「今日はもう遅い、ひとまず瀞霊廷に戻ろう。」
と撤収の意を示した。
そこへ、古い平屋の隣の、これまた古い平屋から、腰の曲がった老婆が、お神酒徳利を持ってノロノロとやってきた。老婆には藍染達死神や虚は見えておらず、真横を通り過ぎ、広場の隅の桜の木の下にしめ縄を巻いて飾られた石塔に徳利を供えると、手をこすり合わせて、何やらゴニョゴニョと拝んでいた。
老婆は白いマスクをしていた。現世では悪質な感染症が流行しており、人間達は家の外に出るのにマスクを着用するのを余儀なくされていた。
「ああ、いつまでこんなもんしてないといけんのでしょうかね…。」
老婆は石塔に手を合わせて呟いた。
「粟島様、どうか病気を鎮めて下さい…。」
老婆は深々と頭を下げると、またノロノロと陋屋に戻って行った。
「人間が住んどったんですね…。」
陋屋は薄暗く、老婆一人しかいないためか物音もしなかったため、藍染達はこんなに近くで人間に遭遇すると思っていなかった。
「見つかるといけない。今度は慎重に行おう。」
藍染は皆に立ち去るように促しかけた。そこへカツカツという、高い足音が聞こえた。女性のハイヒールの音である。若い女はマスクをしていて、顔はよく見えなかったが、足音からしてかなり気が強い印象を与えた。若い女は藍染のすぐ隣で立ち止まり、辺りを見回した。
「なんか変…。」
彼女は呟いた。藍染は存在を見破られたかと思い、鏡花水月の柄に手をかけた。しかし女はまた足を進めると、
「おばあちゃん、ただいまー。」
と陋屋へと入っていった。
一同は緊張を解いて息を吐くと、
「ここはもう使えない。次回は座標をずらそう。」
という藍染の言葉にうなずいた。
「『粟島様』、ゆう神様がおるんやな。」
信仰心からまるで遠い市丸が、木の下の石塔に目をやった。
もう二度と来ない地であろう。藍染は今まで実験がうまくいったことに感謝して、石塔に頭を下げた。藍染は姿を消した。それを追って、全員が現世から存在を消した。
「なあ、藍染隊長、座標がずれとらん?こない小さな広場やのうて、もっと大きい空き地に虚が出るはずやなかったん?」
市丸は斬魄刀を振り、虚の残骸を刃から振り払いながら問うた。同じく刀を振り、刃を鞘に納めながら、
「そうだね…この間から修正されていないようだね。」
藍染は考え込んだ。今のところ現世の人間にも、瀞霊廷の死神達にも、この実験は見つかっていない。しかし虚を出現させる地点が、明らかに予定とずれていた。
「東仙さんがいけへんの?機械をいじくってんの、東仙さんやろ?」
虚生成実験は、瀞霊廷と現世の二手に分かれて行われていた。
「じゃあ今度は君が瀞霊廷に残るかい?」
藍染は市丸に聞いてみたが、市丸は機器の操作に自信がなさそうだ。
「それでは次回は私が瀞霊廷に残り、ギンと要に虚討伐をお願いするよ。」
藍染は伝令神機に残した記録映像を確認すると、
「今日はもう遅い、ひとまず瀞霊廷に戻ろう。」
と撤収の意を示した。
そこへ、古い平屋の隣の、これまた古い平屋から、腰の曲がった老婆が、お神酒徳利を持ってノロノロとやってきた。老婆には藍染達死神や虚は見えておらず、真横を通り過ぎ、広場の隅の桜の木の下にしめ縄を巻いて飾られた石塔に徳利を供えると、手をこすり合わせて、何やらゴニョゴニョと拝んでいた。
老婆は白いマスクをしていた。現世では悪質な感染症が流行しており、人間達は家の外に出るのにマスクを着用するのを余儀なくされていた。
「ああ、いつまでこんなもんしてないといけんのでしょうかね…。」
老婆は石塔に手を合わせて呟いた。
「粟島様、どうか病気を鎮めて下さい…。」
老婆は深々と頭を下げると、またノロノロと陋屋に戻って行った。
「人間が住んどったんですね…。」
陋屋は薄暗く、老婆一人しかいないためか物音もしなかったため、藍染達はこんなに近くで人間に遭遇すると思っていなかった。
「見つかるといけない。今度は慎重に行おう。」
藍染は皆に立ち去るように促しかけた。そこへカツカツという、高い足音が聞こえた。女性のハイヒールの音である。若い女はマスクをしていて、顔はよく見えなかったが、足音からしてかなり気が強い印象を与えた。若い女は藍染のすぐ隣で立ち止まり、辺りを見回した。
「なんか変…。」
彼女は呟いた。藍染は存在を見破られたかと思い、鏡花水月の柄に手をかけた。しかし女はまた足を進めると、
「おばあちゃん、ただいまー。」
と陋屋へと入っていった。
一同は緊張を解いて息を吐くと、
「ここはもう使えない。次回は座標をずらそう。」
という藍染の言葉にうなずいた。
「『粟島様』、ゆう神様がおるんやな。」
信仰心からまるで遠い市丸が、木の下の石塔に目をやった。
もう二度と来ない地であろう。藍染は今まで実験がうまくいったことに感謝して、石塔に頭を下げた。藍染は姿を消した。それを追って、全員が現世から存在を消した。
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