それから数年が経ち、カレは十二歳になった。その頃には背も高くなり、年齢より大人びて見えるようになった。母親譲りの美しいスミレ色の瞳、抜けるように白い肌、そしてそれにも負けず輝く、腰まで伸びた銀髪、無駄な肉のない、鋼のような骨を持つ体躯、伸びやかな四肢─。それらはやがて異性の不潔な目に曝されることになる、隙を見せてはいけない、凛と、常に凛と、と両親に何度も繰り返し言われ続けた。何故そう言われるようになったかというと、彼女が統学院に入るため、カルファを、両親の元を巣立つことになったからである。彼女の父親は、カルファと瀞霊廷を任務上行き来しているため、完全に縁が切れる訳ではないが、それでも一人になることに変わりはない。
「お父様、お母様、心して参ります。婿殿は自分で見つけて参りますので、どうか結婚により私を閉じ込めないで頂けますと幸いです。」
カレは冗談めかして、本心を述べた。
「カレ！」
出発の日、彼女の母親は、娘に抱きついて、離したくない、と言いたげに泣いた。
「お母様…。」
娘の方が母親を諭すように母親を抱き返した。
「休暇には帰って参ります。だから泣かないで。」
その二人をカレの父親が抱き締めた。カレは両親の愛情に感謝した。

そして彼女は統学院、真央霊術院を飛び級で卒業し十五歳で五番隊へ入隊してきた。彼女は異界の人間だからか、年の取り方が他の死神達と違い早く、恐らく亡くなるのも早いのではないか、と周囲の者は思っていた。カレもそう思っていた。しかし彼女にそんなことは関係なかった。早咲きの凛とした花、彼女はそういった感じを、周囲に与えた。
カレのような異形の者、と言って悪意あると責めを受けるとするなら、やや変わった死神は、護廷隊にも沢山いた。そのうちそんな違いを気にする者はいなくなった。彼女は品よく、自分には厳しくとも、他者には親切だったため、その人柄を褒める者は多かった。やがて席官になり、今に至る。

藍染は、カレのような隊士を、便利だと思っていた。万能の即戦力、といえばいいだろう。その程度にしか思っていなかった。

そう、たった今まで。