カレの父親はカレを、早速武器屋に連れていった。彼はレイピアを娘に、と相談を店主にした。お子様用ですか、と問われたが、いいや、と答えもしないうちからカレは店内を物色し始めた。壁にかかっている高価で立派な剣には目もくれず、彼女は十把一絡げに筒状の剣立てに挿してあるレイピアを、ガチャガチャと出したりしまったりしていた。

そのうちに、カレは一本のレイピアを取り出し、しか、と上に向けて握り、掲げた。刃は銀色、柄は蔓草の金色の装飾、そして彼女の瞳と同じ、スミレ色の宝石をいくつか上品にあしらったそのレイピアが光りを一瞬放った。こんにちは、『針水晶』、とカレはレイピアに挨拶をした。
お父様、と彼女は自分の父親の方に振り返り、この子を買って欲しいの、と言った。あのね、お父様、私この子の声が聞こえたのよ、彼女は興奮して嬉しそうにはしゃいだ。彼女の父親は、驚きのあまり固まっていた。店主はいぶかしげに見ている。

カレには斬魄刀の声が聞こえていた。

彼女は、父親の血を継いでいた。
彼女は、死神としての力を持っていたのだ。

重くないのか、と父親はカレに問いただした。いいえお父様、彼女は答えた。ティースプーンみたいに軽いわ、と、レイピアを抱き締めながら答えた。娘は死神なのだ、とあらためて思い知った。


何を言っているのか、といぶかしげな店主に代金を払い店を出ると、空に空間の歪みが現れた。あれは─。カレの父親は目をすがめた。それは死神の父娘を瀞霊廷へと呼ぶ、時空を繋ぐ門だった。

カレの父親は、自分が自身の斬魄刀を携えていることを確めると、娘と娘のレイピアを抱いて歪みに飛び込んだ。空間に入ったすぐ向こう側は一番隊隊舎の側だった。カレはきょろきょろして、お父様、ここはどぉこ？と問うたが、良い子だから大人しくしていなさいと言い、隊舎に入った。某番隊日比谷某、ただ今復命致しました！、と叫んだ。感無量、といった気持ちが初めはしていたが、いつもは無邪気で好奇心旺盛なカレが黙り込んで不安げな様子を見て、帰ってこない方が良かったのか、と思った、その時、山本総隊長が直々に入口に出迎え、そなた、生きておったか、と驚きつつ、手を取り、肩を叩いた。