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麻巳子と別れてから、藍染は麻巳子の足跡を探さなかったわけではない。
護廷隊に配属になってから数ヶ月後、初月給で青空座の公演を観に行った。
同期からは、藍染は幼女趣味があるのかよ、などと笑われたが、藍染は藍染なりに麻巳子との約束を守ろうと必死だったのである。
ところが、その舞台に、麻巳子の姿はなかった。
舞台に上がっている幼い娘達の舞踊の技術を見ると、麻巳子は彼女らよりも数段優れた美貌と才能を持っていることが分かった。
では何故―。
藍染は公演の幕が降りると、帰り際に舞台の袖の関係者に少額を掴ませ、自分は麻巳子の支援者であると伝え、彼女の消息を聞いた。
「麻巳子ちゃん?ああ、あの子は少ししかうちの座にいなかったからなあ。」
大道具の若い男は、特に暗いことを話すわけでも、言いにくいことを話すわけでもない様子で言った。
それが救いのように思えた。
「うちは一大新興勢力だから、人の出入りが激しくて、引き抜きもしょっちゅうなんだ。」
「引き抜き?」
藍染は少し顔色を変えて続きを尋ねた。
「麻巳子ちゃんはちょっと目立つので、入ってすぐの舞台練習を見学に来ていた芸能関係者…言っていいのかな…『瀞霊廷エンタープライズ』の社長に目をかけられて、すぐに引き抜かれていなくなったよ。」
男は明るい調子で言った。
「大出世だよなあ…でも瀞霊廷エンタープライズは、デビューまでの稽古が厳しいことで有名だから、麻巳子ちゃん、今頃音を上げていないといいけどなあ。」
藍染は、麻巳子の行方を男にさらに尋ねた。
「そこから先は分からないなあ。今頃山ごもりで修行でもさせられているんじゃないのかな…最近は女の子のグループデビューが流行りだから、そのうちどこかのグループで踊る麻巳子ちゃんが見られるんじゃないかな?お兄さん、応援してやってくれよ。忙しいんでそれじゃ。どうもありがとうな!」
男は藍染が手渡した紙幣を少しひらひらさせると、それを懐にしまって去っていった。
麻巳子は悲しいことにはなっていない。
藍染の勘はそう訴えていたが、しかしその代わり、麻巳子の消息は途絶えてしまった。
瀞霊廷エンタープライズ―通信技術力の高さを武器に、最近十二番隊の技術開発に協力している会社だった。いずれそこの開発した『伝令神機』と言われる携帯端末が、護廷十三隊隊士全員に貸与されるとの噂が上がっている頃だった。
何故瀞霊廷エンタープライズが麻巳子を引き抜いたのか?イメージキャラクターに少女を起用するような社風の企業ではない。
(無事でいてくれ―。)
申の刻の鐘が鳴った。
今頃どこかで、彼女は誓いをつぶやいているだろうか。
晩春の生暖かい夜の風が不安を煽る。
藍染は麻巳子の無事を祈ることしか出来なかった。