白雨〜2025年七夕に寄す〜
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雨はやみそうにない。
二人はしばらく黙って外を見つめて座っていたが、娘から立つ花の香りに、藍染は情欲を刺激された。娘はごく平凡な娘で、楚々としていることが最大の美点であろう。ただその清潔感は、精神不安定な潔癖というわけではなく、優れた美質であった。
この娘と深い仲になってもいい。
ただこの娘が自分についてこられればの話、そう思った。
藍染は娘から離れて座っていたが、立ち上がって娘の側まで歩き、膝をつくと、
「紗奈…。」
と娘を抱き締めて、耳元で名を囁いた。
娘は驚いて、藍染から離れようとした。藍染が自分を知っている―万人の中の一人に過ぎない自分に、こんな千載一遇の機会がやってきたことを、娘は喜ばず、恐れた。
「何を驚いているんだい?散々私に文と贈り物をくれたじゃないか。君がどんな人間なのか、私はとうに知っている。」
藍染は艶を含んだ、少し呆れたような親愛を含んだ笑みで、娘を側に引き寄せた。娘は慌てて、「隊長に対して」、失礼にならないよう、少しだけ抗った。
娘から花の香りがする。
激しい雨はひんやりとした空気を運んできて、二人の頭は冷静で、それがゆえに恐ろしい。
「君は自分から歩み寄ろうとして、何をそんなに恐れているんだい?これは奇跡でも偶然でもなく、『必然』だ。いいかい、一つだけ言っておく。全てのものは、それが例え偶然だろうが必然だろうが関係ない。『全ては自らの手で獲りに行くもの』―。誰にも手綱を渡してはならない。」
藍染はそう言って娘に顔を近付け、鼻を触れ合わせた。
「紗奈…。」
藍染は吐息を触れ合わせると、娘の唇を奪った。
娘は、もうそれ以上、抵抗出来なかった。
豪雨は、天から白い壁を作り、その離れで起きたことを全て隠した。しばらくやまない雨は、まるで藍染の意のままのようだった。
火照った膚に、ひんやりとした空気が心地良い。
この漢(ひと)は、こんな人だったのか。あの穏やかな人のどこに、こんな強い言葉が隠されていたのだろうか。
娘は思考をぼやけさせることを許さない冷涼な空気に、それでも思ったより悲しい思いを抱かなかった。
娘は藍染についていけただろう。
全てはまだ先の話―。
今は白雨、とでもいうべき雨だけが、二人を知っていた。
〈了〉