長からむ〜藍染様お誕生日記念2025〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
女はざんばらな頭のまま艷やかに笑い、
「これ、貴方にあげるわ。」
と言い放った。藍染が、そして幾多の男達が愛してやまなかった長く美しい黒髪は、今は彼女の体から離れてしまった。しかしその美しさは、ただの毛束となっても、藍染を魅了するほどに艷やかにうねっている。
「貴方、これが好きだったでしょう。だからあげる。」
どういうつもりなのか聞きたいが、その言葉と髪束の美しさは、強い抑えとなって、些細を尋ねることを阻んだ。
「なんだか貴方は、側にいて良い人じゃないみたい。」
女は、恐れるでもなく、藍染の歪みを艶然と、率直に指摘した。あれだけ紳士に接していたのに、そんな事を言う女がいるのか、温厚をよそおう藍染は真っ先に、自らの大逆の計画をこの女に知られてしまったのか、と思った。それならこの女を斬らねばならない。
「なんだか貴方ってよく分からない人ね。本当に貴方は、私の見ているだけの、温かい貴方なのかしら。」
女は何も知らないながら、鋭い女の勘で、藍染を危険視し始めたのだ。
面倒事は避けねばならない、お互いに思った。
「これからは今までどおり、藍染隊長、とお呼びします。今まで沢山ごちそうさまでした。ありがとうございました。御礼は、身を引くことでお返し致します。」
女は深入りしていないがゆえの未練の無さで、すっと立ち去って行った。
思わず受け取ってしまった髪束を手に、藍染は女に、背中で名を呼んだ。それは音にならず、息となって、夜に消えた。
綾華、と、二人だけの時にしか呼び捨てで呼ばなかった名を口にしたものの、その時間は短かった。
清いまま別れたのだ、何もなかったのと同じ、彼女とて、全て心得ているだろう。
主を失った髪は、それでも錦のように艷やかに、夜の暗さの中で輝いていた。
まだ街は眠らない頃で、彼女は髪を整えられるだろう。
藍染は突然迎えた別れを、悲しいとは思わなかった。
藍染は、彼女も自分も似た者同士なのだろうと思った。彼女は世界を転覆させたりはしないだろうが、人一人位狂わせる位の美しさを持っている。
どうせまともな恋なんて出来ないのは、お互いに同じこと―藍染は、長い毛束を風呂敷に包むと、自らも何の後腐れもなく、夜も更けぬうちに隠れ家を後にした。