細雪〜バレンタインデー2025〜
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今年もその雪の日がやってきた。
京楽と七緒は、一番隊でそうした藍染への情がある、ということは聞いていたが、雪乃の配下がその日の夜明け前から、動き始めた厨房からすすんで大きな菜っ葉の入っていた粗末な紙箱を門前に据え付けているのを見ると、雪乃と藍染の仲はますます分からない、と思った。雪乃の配下は、新たに総隊長、副隊長に着任して初めてのバレンタインデイを迎えた京楽と七緒に、笑顔を見せると、「雪乃さんの仏心を見てやって下さい!こんなに出来た恋人がいるなんて、平子隊長も幸せ者ですよね!おっと、あんまり言うと、雪乃さんに怒られるな…」とのたまい、箱の側を去っていった。配下の者は雪乃を売り込んだつもりなのかもしれないが、「藍染と近しい上に平子と恋人!?」と、京楽と七緒は、雪乃という人間が本当に分からなくなった。
「七緒ちゃん…もし雪乃ちゃんが藍染とデキてるなら、他の女の子のために、藍染への贈り物の受け取り箱を用意したりするだろうか?」
「えっと…私も分からなくなってきました…私だったら、本命の方に、他から贈り物が届くのを見るのは辛いものがありますね…。」
「そうだよね…ごめんよ、七緒ちゃん。ボクが総隊長だったり貴族だったりしなかったら、そんな付き合いもなかったかもしれないのにね…。」
「ちょっ、何を謝っていらっしゃるんですか!?私、別に隊長が本命だなんて言ってません!!」
七緒はほんの少し顔を赤くして、京楽に背を向けて隊主室へ戻り始めた。
「何赤くなってるんだい、七緒ちゃん。」
京楽は嬉しそうに鼻の下を伸ばすと、その後をひょこひょこと追った。
「あまりに馬鹿げているんで、怒りで顔が赤くなっただけです!朝食を摂ったら、仕事が待ってますよ。逃げたりしないで下さいね!」
七緒は京楽の方を見ずに、どんどんと歩いていった。
「大丈夫、今日だけは七緒ちゃんの側にいるよ。」
京楽が七緒の肩を抱こうとすると、七緒は瞬歩を使って逃げてしまった。
「相変わらず照れ屋さんなんだから…そういうところも可愛いんだけどね…。おーい、七緒ちゃん!ボクに今年も何かくれるんだろう?楽しみだなあ。」
京楽の問いに答えず、七緒は隊舎の玄関をくぐって去っていってしまった。
「まさか…今年は何もなし?」
京楽は口を開けると、
「悪かった、七緒ちゃん!何でも言うことを聞くから、ご機嫌を直しておくれ!!」
と慌てて後を追った。隊主室まで七緒を追っていくと、入口に書類の山がそびえていた。
「何でも言うことを聞く、とおっしゃいましたよね?『総・隊・長』?」
七緒の仕打ちに、京楽は肩を落とすと、
「たまには総隊長らしく、男らしくいいところを見せますか…」
と、しょんぼりと、早速書類に手を付け始めた。
大丈夫。ご褒美は必ず待っているもの。
刻苦の時間の長かった雪乃は、その様をこっそり遠くから見てくすりと笑うと、今年も雪の舞う中、早朝任務要請で二番隊へ出掛けていった。
入れ違いに砕蜂が一番隊の門前へやってきて、頭痛でもするのか、頭を押さえながら、一番隊の据え付けた箱と、雪乃の配下が据え付けた箱、両方の箱の中に、一つずつチョコレイトの箱を入れた。それで頭がはっきりしたのか、それでも仏頂面で、また来た道を引き返していった。
五番隊へ今年も雪乃は出向き、平子に上等なチョコレイトの箱を渡した。受け取り箱の中に置くだけで失礼しようと雪乃は思ったが、平子は雪乃の霊圧にすぐに気付き、飛んで来て、直に贈り物を受け取ると、天にも昇る勢いでガッツポーズをして喜んでいた。今年は長めの文と共に、雪乃は桐箱に入った筆を贈った。雪乃が帰ってから、贈り物をすぐに広げて中身をあらためた平子は、
「なあ、これ、俺と文通したい、ってことやろ?一歩前進やわ…!!」
と、雛森に尋ねるでもなく言った。
「平子隊長、多分それ、『仕事して下さい』ってことなんじゃないんでしょうか?」
と、雛森は呆れて答えた。
「お前は副隊長ゆうても、まだまだ子供やな…。雪乃さんの想い、俺にはよーく分かるで!!」
平子はチョコレイトの箱と桐箱を抱き締めて、大きく息を吸った。雛森は、大人の恋とはそういうものなのだろうか、と、よく分からないという顔をしていた。あんなに素敵な人なのに、他にも男の人はいるだろう、平子隊長のどこがいいんだろうか、と、平子を慮って、雛森は口には出さなかった。