シュークリーム・イヤーズ
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諏訪子は藍染が用意してくれた家に着くと、中に入って久々に着物に着替えた。ドレスの方が楽だった、と言っても、瀞霊廷でドレスでは目立つので仕方ない。
着物姿で通りに出て、蕎麦屋で食事を済ませると、諏訪子は長かった髪をばっさり切ってもらい、藍染が昔かけていた伊達眼鏡が家にあったので、それをかけた。これで仮に知り合いに見つかったとしても、少しはごまかせるのではないかと思った。
瀞霊廷はそれ程厳しい空気ではなかったが、お腹いっぱいになって一心地ついたというのに、居づらいものを感じた。明るさを装い、八百屋や魚屋や米屋で、明日からの食事の材料を買って、不得手な料理に思いを致すと頭が痛くなった。
「あーあ、一人暮らしかあ…。」
諏訪子は不安ではなかったが、つまらない、と思った。藍染の側にいたかった、と思った。
翌日から、諏訪子は払いがまだだった店を一軒一軒めぐり、隠語で手形を切って払いを済ませていった。店の方はこんな厳戒下でも、藍染派だろうがなんだろうが、お金が入ってくれば結構、といった具合で、店の者も、藍染は大罪人であるというのに、アンタ、藍染様のお遣いの人だろ、何かの折はまた一つご贔屓に、などと言う始末で、尸魂界もグダグダだな、と彼女は呆れた。
そんな日々を送っている間に、藍染が敗れてしまったのである。
嘘でしょ、という思いは、しばらく襲ってきたが、一人暮らしが否応なく続いているうちに、本当に一人になった事実が、それを打ち消していった。虚夜宮にいた時に周りにいた人々は、皆消えてしまったのだ。毎日毎日、危険を冒してまで、とはいえなくとも、決済を繰り返す一人だけの日々は、彼女に現実を突きつけてきた。
「藍染隊長…?」
言葉尻が疑問で上がる。
一人。
それでも諏訪子は、生家に帰ろうと思わなかった。
いつか藍染と過ごした日々が帰ってくるのでは、という思いは、日に日に薄れていくが、藍染がこの家を残してくれた。
そして、まだ決済するべき店が残っていた。
案外危険なく過ぎていってしまう日々に、諏訪子は呆けそうになる。
そうこうしているうちに、また払いを繰り返し続ける。
しかしその残債整理も、ほとんど終わりに近づいた。
口座の残金、一千億環。
もうほとんど減りそうになかった。