シュークリーム・イヤーズ
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始めこそ、諏訪子は若いだけに無知で教養もなく、物の価値、というものを知らなかった。
しかし藍染に付き従って行動するうちに、衣類や酒食、武器や美術品などの相場に詳しくなった。目利きになったと言っていい。藍染の大逆の計画に必要な物を、集まってくる軍資でどのように、どれ程調達すれば良いのか、彼女はすぐに才能を発揮し始めた。手厚く払うべきところは払い、値切るべきところは値切り、効率よく金銭を仕切るのに、彼女程うってつけの者はいなかった。なにせ何百年と生きている死神でさえ、彼女の才知に敵う者がいなかったのである。藍染に付き従う死神は武張った者が多く、武家ゆえの弱点を彼女が大きく補ったと言っていい。藍染も、藍染家の家宰も、藍染派の者達も、彼女を信頼し、蔵の鍵と帳簿を預けた。彼女は他家の者である。しかし彼女はまるで自分の家は藍染の家であるかのように、藍染派に染み込むように馴染んでいった。
諏訪子は藍染の家の秘密が、最初は自分の自由にならない婚姻を遠ざけてくれるだけのことのように考えていた。しかし何年も経つうちに、藍染に対して忠義心を持つに至った。彼女は家族にも、友人にも、藍染の家の鍵や帳簿を預かっていることを教えず、藍染の家に出入りしていることも秘密にしていた。どこをほっつき歩いているのか分からない娘、として生きていた。
そして藍染出奔の数日前、大切な物だけを持って軽く旅支度をすると、「旅に出ます。探さないで下さい。」とだけ書き置きをして、家を出て虚圏に去ってしまった。彼女の困窮していた友人は、念願の教鞭を執り始めたばかりで、周りの者は、諏訪子が何を考えているのかさっぱり分からず、放蕩娘がいつ帰って来るのか、としか思わなかった。
諏訪子は大人になった。
藍染派全軍の生命線を握っているのである。
ところが彼女は童顔なせいもあり、どことなく子供じみていて、その未熟さは、しかし指揮を執る者の柔軟さの表れであった。