美粧女〜藍染様お誕生日記念2023〜
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その六月最後の吉日、持等院家には、妙子の出発を待つ家人や侍女達の、長い長い行列が表門に控えていた。妙子に従い嫁ぎ先に向かう者は百人を超え、初夏の眩しい陽射しの中、木陰にも入らず粛然と控えていた。
「お父様、お母様、今まで大変大切にお育て頂き、本当にありがとうございました。大変お世話になりました。」
妙子は白無垢に身を包み、両親の前で三つ指をついて、重たげに頭を下げた。胸元の懐剣を収めた袋から、白い飾り房がはらりと下がった。両親は言葉もなく、感無量、と言った様で、言葉少なに、達者で、と言ったきり、涙で声も出なかった。大事な大事な一人娘の門出である。娘を溺愛していた妙子の両親にとって、いくら京楽家と四楓院家の交誼のためとはいえ、娘を嫁がせるのは断腸の思いだった。
妙子は両親に挨拶を済ませると、あっさりと輿に乗り、風のように去ってしまった。花嫁行列は百間以上の長さに及び、道行く人々は、あれはどこの御令嬢のお輿だろうか、と噂し合いながら、笑顔で拍手を送った。
持等院家を出た行列は、大通りを右に曲がり、見えなくなった。次の大通りをさらに右に曲がるはずのところで、行列の輿や長持に掛けられていた四楓院家の紋の入った飾り布は、全て素早く掛け替えられ、家人達の行列に、新たに武人らしき警護の者が道の端々から出て来て加わり、行列は再び動き出した。行列は四楓院家のある右手には曲がらず、大通りを真っ直ぐに進んだ。
藍染家の紋の飾り布を被った輿から、妙子の白無垢の裾が、ほんの少し覗いていた。厚く真綿の入った裾は、夏に向かう陽の光を浴びて、艶を見せながら、風を求めるかのように顔をのぞかせていた。
半刻程で、行列の先頭は、藍染家の表門にたどり着いた。
そこには、黒紋付き羽織袴姿の藍染が、笑顔で花嫁を待っていた。