美粧女〜藍染様お誕生日記念2023〜
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藍染が厠から出ると、妙子はまだ鏡の前で、紅を直していた。光る程白い肌に、朱が映えて美しい。藍染は懐から懐紙と矢立を取り出すと、手早く流麗な筆跡で何かを書き、細く折って手に隠し持った。
妙子が化粧を直し終えて出てくると、藍染は妙子に近寄り、
「重ね衿がずれています。」
と言い、直してやるふりをして、襟元にそっと手を添えた。刺繍レースに、重たい程真珠を縫い付けた純白の重ね衿のレースの穴に、藍染はカサリ、と何かを滑り込ませた。妙子にも、藍染が何か細工をしたことが分かった。
藍染の指先が、妙子の襟足に触れた。
「ん…。」
と、彼女は声を漏らした。初めての、官能的な感触だった。藍染は、妙子を思い切り抱き締めて口づけたい衝動を抑えながら、
「次にお会いする時は、きっと『飲み会』ではない気がします。」
と、まるで予言のように言った。
『次』、などあるのか、という不安で悲しい気持ちをこらえて、妙子は勇気を振り絞って藍染の目を直視した。若い娘しか履けない、幾層にも底を重ねた厚い草履が、ひどく重く感じられた。
「お互いが想い合えば、必ず『次』、はあります。貴女がどう思っていようと、私はあきらめません。」
藍染は、妙子の目を強く見つめ返して言い切った。まだ成人したかしないかの娘に、酷なことだと思った。しかし彼女は耐えてくれるだろう、と確信した。
「お見合いをなさったことはありますか?」
「いえ、まだ…。」
「では私が一番手です。誰が何と言おうと、それは譲りません。」
藍染は傲岸不遜とも言える宣誓をした。何と力強いことか、妙子は笑顔になった。
「良い店をいくつか知っています。『次』にお会いする時、またその『次』にお会いする時、またまたその『次』にお会いする時、是非ともお付き合い下さい。貴女のお酌で、また飲みたいものです。」
藍染は希望を込めた笑顔で、艶がありつつも爽やかに言った。
「はい、私も是非とも。」
妙子も健気な笑顔で答えた。
手も握らない、たったそれだけのことで、二人は宴席に戻ってきた。二人は笑顔だった。周りの者は、もう気にしていなかった。
「妙子お嬢様、そろそろお帰りになりませんと…。」
妙子の乳母が、彼女をせっつきに来た。妙子は名残惜しそうに周囲を見渡すと、最後に藍染を見た。藍染は笑って、黙ってうなづいた。
「皆様それではお暇させて頂きます。本日は大変ありがとうございました。」
妙子は非常に丁寧に頭を下げると、場をぶち壊しにしたことなど頓着もせずに、輿に乗って去って行った。とんでもない爆弾娘だ、と、藍染は救いの女神を想い、下を向いて笑った。彼女がいなかったら、気疲れして仕方のない宴になっていただろう。
夜の街は、まだ暖かだった。二次会もなく、皆しらけて帰って行った。
「ちょっと!!何だったの?!」
金脈を無くした乱菊と七緒は、ブツブツと言いながらも、切り替えは早い。
「次は朽木隊長の後添え募集、ってのはどうかしら?!」
二人は早くも相談を始めた。
「やめておけ!」
日番谷が乱菊のすねを蹴った。
(あの場に雛森がいなくて良かった…。)
日番谷は眉間にシワを寄せて、ため息をついた。