徒然
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それから藍染は、茜が上がる高座には、全て来るようになった。そして花束やら菓子やら金一封やらをいつも携えてきた。そのうちに楽屋にまで訪ねて来るようになり、さしもの茜も嬉しいような、怖いような気持ちになった。特に妻の麗諦を連れて来ない時等は、さすがの彼女も、引き気味だった。
「あのう、藍染隊長、」
「今は隊長ではないのだから、惣右介と呼んでおくれ。」
「…あの…じゃあ、藍染、さん。」
「下の名前で呼んでくれないのかい?」
「あの…そこまで仲が良い訳ではないと思うのですが…。」
「じゃあ、下の名前で呼んでもおかしくない関係に今すぐなろうか。」
そう言ってにじりよって来る藍染が、心底怖かった。
「一体何を考えてるんですか?私は怒っているんですよ?」
「それは知らなかったな。許しておくれ。」
悪びれもせず、相変わらず距離を詰めて来る藍染に、茜は自分の控え室の扉を開け放った。
「退場!退場です!!」
「は?誰がだい?」
「私と藍染隊長と、ここには二人しかいないでしょう、だから、」
「二人きり…都合がいいじゃないか。」
そう言って藍染はまたも悪びれもせず笑顔だった。
茜はため息をつくと、
「じゃあ私が退場しますから。それじゃあ。」
と出て行こうとすると、しぶしぶ藍染は帰って行った。
多分からかわれているのだろう、本気を出されたら、けっしてかなわない。
「何も思わなかった昔が懐かしいな…。」
茜はつぶやいた。男女の何事もなく、ただ笑いを追っていた日々…もう戻りたくても戻れないのだ。
いつの間に、と思う。自分のせいだ、と思う。藍染に恋をしてからだ、と強く思う。
でも自分には護廷亭紫楽という任務がある。笑いを追うことはいくらでも出来る。それに自分には徒然亭がある。舞台の上でも客席でも、どこにいても面白い、そんな場所は他にはない。
茜は元気を取り戻した。そうだ、私にはお笑いがある、茜は初心に帰ってみることが出来た。
これからも高座に上がろう、これからも徒然亭に通おう。そう独りで純粋に思うことが、茜を奮い立たせた。