苺は愛で鯛〜バレンタインデー2016〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕食を終え廊下に出ると、音も立てずに、さり気ない素振りで藍染が鈴泥を追ってきた。
「水都君。」
「藍染隊長。」
お腹がふくれてひと心地ついたのか、鈴泥は落ち着いていた。
「先程はごちそうさまでした。」
鈴泥は藍染に頭を下げた。藍染は鈴泥の頭を撫でると、
「私からの逆チョコの代わりだよ。」
と言い、鈴泥に微笑みかけた。
「今日から秘密の恋人同士だよ。出来そうかい。」
藍染は笑顔のまま言った。
「それともいっそ、皆に公表…。」
「ダメです!そんな恐ろしいこと、考えるのも無理です!」
鈴泥は頬に両手をやって、目をギュッとつむった。
その時、藍染が素早く唇を重ねてきた。触れるだけの口づけから、お互いに、鯛の甘い脂の香りがした。
「ちょっ…藍染隊長、誰かに見られたら、」
「苺もいいけど、鯛もいいだろう?」
藍染は嬉しそうだった。
「もう少し一緒にいたいけど、今日はもう解散しよう。私はどうやら君を疲れさせてばかりいるらしいからね。」
鈴泥はほっとしたような、残念なような、複雑な気持ちになって、何となく藍染の隊長羽織の袖をつかんだ。
「可愛いことをするね…。」
藍染は可愛くてたまらない、という気持ちをため息でごまかした。
「隊舎の君の部屋まで送って行くよ。」
そう言って藍染は、視線だけで鈴泥を促した。
二人は黙って廊下を歩いた。時折藍染が鈴泥の手を取ろうとしたが、彼女は拒否した。肩を抱くのも、腰に手を回すのも、拒否した。時折鈴泥の歩みがおぼつかなくなる。藍染は彼女の体に何が起きているのか、分かっているので鈴泥を責めなかった。鈴泥は官能を感じて、子宮がひきつれるような感覚を覚えていた。
藍染は、鈴泥はまるで彼女が自分に贈ったチョコレートのようだ、と思ったことに間違いはなかったと思った。見かけは青いものの、中身は鮮やかで充分熟れている…清らか故に、己の成熟が認められない、まだそんな年頃なんだろうと思った。
二人は鈴泥の部屋の前に着いた。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。」
鈴泥はようやく笑って、藍染の顔を見た。藍染はそのことにほっとして、頷いた。
「今日はよく休みなさい。そして明日からは、毎日ずっと、お互いによろしくお願いします、だよ。」
藍染は鈴泥の頭を撫でた。
「あ、それから言い忘れていた。新婚旅行の行き先だけど、」
藍染は鈴泥の耳元で
「虚圏、というところに行くよ。」
と小さく囁いた。
「???…ウェコ…?」
「まだ早いね。忘れなさい。」
現世にそんな地名、あったかしら、といぶかる鈴泥は、少し間をおいて、襟元まで真っ赤になった。
藍染はハハと笑うと、
「鈴泥、愛してる。お休み。」
と、鈴泥の目見て言い、彼女の頬を撫でた。
「もう!眠れなくなってしまいます!」
鈴泥は涙目になって藍染の胸を両手の平で突き飛ばし、引き戸を閉めた。
「お休み。水都君。」
藍染はそう言って部屋の前から立ち去った。
まだ肌寒い二月、しかしお互いのぬくもりを欲しがるには、まだ早い二人だった。
For Mr.A,
From the Sweet Lady,
With Love….
<了>