苺は愛で鯛〜バレンタインデー2016〜
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藍染は鈴泥を先に隊主室に入れると、後ろ手に戸に鍵をかけた。
(な、何で鍵まで…!?さっき沢山女の人達が尋ねてきた時は、戸は開け放してあったじゃない!?)
鈴泥が戸を凝視していると、
「君に誤解されたくなかったからだよ。」
と、彼女の心を読んだかのような藍染の言葉が発せられた。
「女性と戸を閉めた部屋で二人っきりになったら、君が誤解するだろう。そういう状況になってもいいのは君だけ。分かるかい。」
鈴泥は穴の空く程藍染の顔を見つめた。そして藍染の言葉を頭では理解していないのに、体が先に反応し、顔を朱に染めた。
「可愛いね、水都君は。」
藍染は鈴泥の頭を撫でると、座布団の上に座らせた。
脇に、お盆に載った緑茶の茶碗が置いてあった。藍染が手ずから淹れたものだった。
「まあ、お茶でも飲みなさい。」
藍染はお盆を、突き合わせた二人の膝の側まで滑らせると、片方の茶碗を鈴泥の手に取らせた。そして自分も茶碗を手にすると、一口口をつけた。
鈴泥は藍染の様子を見ていると、自分もお茶を飲まないといけないような気分になり、
「い、頂きます。」
と言って口をつけた。
「それでどうだい。一年経ったら、義理チョコと本命チョコの割合は、二八位になったかい?」
藍染が鈴泥の顔をのぞき込むと、彼女は盛大にお茶を吹いてむせ込んだ。
「ほらほら大丈夫かい。今私が君を口説いているところなんだから、しっかり受け止めて、色よい返事をしてもらわないと。」
藍染は笑っている。
「す、すみません!」
鈴泥はもうどうして良いのか分からず、下を向いた。
藍染は、可愛い愛玩動物が手に入ったように、非常にご満悦だった。
「そうだ。君が用意してくれたチョコレートを頂きたいなあ。私にくれる気になったかい?」
鈴泥は恥ずかしくて恥ずかしくて、顔を上げられない様子だった。チョコレートの包みを下を向いたまま藍染に差し上げると、藍染はクスリと笑い、
「ありがとう。」
と言って包みを受け取った。
(あの…えーっと…藍染隊長は今…私を…口説いてる…。)
鈴泥は何も考えられそうもない頭で、藍染の言葉を反芻していた。部屋の鍵は閉まっている。そうとすれば、この先待ち受けているのは…。
「あ、あの、突然は駄目です!無理です!私、初めてだし、た、隊主室は嫌です!」
鈴泥は自分でも何を言っておるのか、と思ったが、それどころではない危機に直面している、と思った。
藍染は包みを開ける手を止めると、少し驚いたような顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべ、
「話が早いじゃないか。」
と言った。
(うわ、私、何か間違ったこと言っちゃったかな、どうしよう、どうしよう、)
彼女は完全に混乱状態だった。
しかし藍染はまた包みを開ける作業を再開させ、
「気持ちはありがたいけど、今日は君を抱かないよ。君がもっと私との関係に慣れて、自我をはっきり持っている時に抱く。君に破瓜の苦痛を与えたのは私なんだと、しっかり刻みつけたいからね。」
と、恐ろしいことを、とろけそうな笑顔で言った。
「さ、開いた。」
藍染は箱のふたをそっと開けた。
中には抹茶色の山が、八粒並んでいた。