苺は愛で鯛〜バレンタインデー2016〜
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櫛を懐にしまった、その時である。
雛森が隊主室に入って行く姿が見えた。
(桃ちゃ…じゃなかった、雛森副隊長…。)
雛森は、縮緬のふくさに包まれた、塗りの小さな重箱を携えていた。
(桃ちゃん、手作りしたんだ…えらいなあ…。)
鈴泥は改めて自分の用意したチョコレートを見つめた。
凍結乾燥させた苺を、抹茶の口どけの良いチョコで包み、抹茶をまぶした一品だった。試食した際、抹茶の渋さや甘さと、苺のサクサクとした食感と酸味の意外な組み合わせが、普通の褐色のチョコレートよりも個性的で気に入ったため、これを選んだのだ。色彩も爽やかで、娘心をくすぐった。
(でも、私が美味しいと思ったからって、藍染隊長も美味しいと思って下さるかは別の問題だよね…。)
鈴泥は急に我に返って、失敗したかな、と思った。
思考をぐるぐるとめぐらせていると、雛森がため息をつきながら、落ち込んで隊主室から出てきた。
(あれ…桃ちゃんどうしちゃったんだろう…もしかしてふられ…。)
と、そこまで考えた時である。
「水都君…。」
と、甘く低い腰にくる声が、耳元で聞こえた。
鈴泥はぎょっとして後ろを見た。
藍染が、人の悪そうな笑顔で、鈴泥の肩を後ろから抱いていた。
「お待たせ。いや、私が待たされた方だな。」
藍染は独り言のように言うと、
「さあ、君の番だよ。」
と、鈴泥を隊主室へ促した。