苺は愛で鯛〜バレンタインデー2016〜
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五番隊隊舎に夕闇が落ちてくる。勤務時間は終わっていた。
藍染は隊主室から帰らずにいた。隊主室には女性の死神が、間を置かずに訪れている。どこの隊舎でも同じような光景が見受けられるだろう。今日はバレンタインデー。現世の習慣が尸魂界でも流行り、定番になろうとしていた。
藍染は、女性隊士達を穏やかにあしらうと、特に誰を恋の相手に選ぶでもなく、いつも通りの平静さだった。
(あーあ…ちょっとは浮ついていて下さっている方が渡しやすいのに…。)
若い娘はため息をついた。
(今年も「義理チョコと本命チョコの中間です!」とか、訳の分かんないこと、言っちゃうのかなあ…。)
鈴泥、という五番隊の女隊士は下を向いた。
「女」といっても、まだ鈴泥は幼さの残る年頃だった。年齢的には雛森よりやや年上、という辺りで、雛森と鈴泥が会話をしている様は、まるでまだ霊術院での光景のようだった。
その鈴泥も年頃で、隊長である藍染に恋をしていた。彼女は隠し事が苦手な質で、昨年のバレンタインデーに藍染にチョコレートを渡した際、藍染に
「水都君、これ、本命チョコだと嬉しいのだけれど、ね。」
と先に言われ、からかわれた時、思わず顔を赤くしてしまったのである。
(なんてデリカシーの無い男(ひと)!)
と、腹も立ったが、そこは惚れた弱みである。
「あ、あの、義理チョコと本命チョコの中間です!」
と訳の分からないことを口走り、隊主室から逃げてきたのである。その日をもってして、彼女の恋心は藍染に知られることとなった。
(はあー…。)
昨年のことを思い出し、鈴泥はため息をついた。
今日は勤務時間が終わってから、ずっと隊主室の方をちらちらと気にしていたが、藍染の元を訪れる女達は、皆優れて美しく見えた。
(素敵な大人の女性、って感じの人が結構多いなあ…。私なんかぜんぜん…。)
鈴泥は自信をすっかり喪失していた。
(残業もないのに、隊舎に長居したらおかしいと思われるよね…仕方ない、せっかく準備したんだし、チョコレート、渡してこよう…。)
彼女はまとめていた髪をほどき、せめてもの装い、と思い、長い髪を櫛で梳いた。
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