祈り〜藍染様お誕生日記念2024〜
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もう数日後には決起の日だ、そう思いながら、藍染はいつも通う神社へと道を急いでいた。朽木ルキアの処刑の日は早まり続け、計画どおりとはいえ、せわしないものを感じた。
瀞霊廷は忙しく動き、本来なら藍染には暇などない。しかし大事を前に、心を整えておきたくて、しばしば願掛けに通った神社へ足を向けた。その神社も、大乱の果てに蹂躙され、無茶苦茶に破壊されるかもしれない。未練など無いが、「気が済まない」、それだけのことで、ただ場を利用したかった。はなから神など信じていない。神社での願掛けは、彼にとって茶一服程度の重みしかなかった。
この神社には、「先が視える」という、千里眼を噂される娘がいるとの話を聞いていた。高貴な身分の者が、大金をはたいてこっそり通っているという。この神社は先代の社主の三人の息子が、権禰宜と禰宜をして継いでいて、大家族なのだ。その娘の稼ぎは、食べていくための「必要悪」だろう、と藍染は思っていた。善と悪との間に、境など無いと彼は思っている。ただ生き残った者だけが名を残せるのだ、藍染の考えは変わらなかった。
いつも通り太い木を組んだ社務所の窓口に声をかけ、いつもの通り絵馬を買った。『大願成就』の絵馬である。藍染は穏健派を装っているため、神社の者達は、死覇装に隊長羽織で堂々とやってくる藍染に信用と親愛をおいていて、愛想良く接した。護廷隊の隊長程の者でも、信心が必要なのかと、驚きもし、親しみも覚え、己の生業に意義と誇りを見い出しもし、神社の者達は藍染をまったく疑っていなかった。藍染は社務所に詰めている若い娘の中で、その千里眼の娘はどの娘か、といつも探っていたが、娘達はいつも屈託なく素直そうに笑っていて、その尋常ならざる力をもって生まれた根の暗さを感じさせる者を見つけられなかった。そんなこんなするうちに、娘は一人、また一人と嫁いでいってしまい、姿を消した。別に何を見透かされようと恐れてはいなかったが、その娘の存在は、ちょっとした謎解きのようで、彼の関心事の一つだった。
初穂料を払い、絵馬を受け取ると、藍染は窓口の隅の、参拝者用に用意されている筆と、硯に刷られた墨の元へ進み、誓願と名前を書き入れた。素晴らしい手並みである。今日でこの願掛けも最後か、と、何の感傷もなく思い、絵馬をかける御神木の元へ向かおうとした時、窓口から娘の声がした。
「『祈り』というのは、美しいものばかりではないと、貴方様に教えられました。」
藍染は、最後にしてようやく出会えた、と、軽い驚きと共に確信した。
その声の持ち主こそ、千里眼の娘だった。
瀞霊廷は忙しく動き、本来なら藍染には暇などない。しかし大事を前に、心を整えておきたくて、しばしば願掛けに通った神社へ足を向けた。その神社も、大乱の果てに蹂躙され、無茶苦茶に破壊されるかもしれない。未練など無いが、「気が済まない」、それだけのことで、ただ場を利用したかった。はなから神など信じていない。神社での願掛けは、彼にとって茶一服程度の重みしかなかった。
この神社には、「先が視える」という、千里眼を噂される娘がいるとの話を聞いていた。高貴な身分の者が、大金をはたいてこっそり通っているという。この神社は先代の社主の三人の息子が、権禰宜と禰宜をして継いでいて、大家族なのだ。その娘の稼ぎは、食べていくための「必要悪」だろう、と藍染は思っていた。善と悪との間に、境など無いと彼は思っている。ただ生き残った者だけが名を残せるのだ、藍染の考えは変わらなかった。
いつも通り太い木を組んだ社務所の窓口に声をかけ、いつもの通り絵馬を買った。『大願成就』の絵馬である。藍染は穏健派を装っているため、神社の者達は、死覇装に隊長羽織で堂々とやってくる藍染に信用と親愛をおいていて、愛想良く接した。護廷隊の隊長程の者でも、信心が必要なのかと、驚きもし、親しみも覚え、己の生業に意義と誇りを見い出しもし、神社の者達は藍染をまったく疑っていなかった。藍染は社務所に詰めている若い娘の中で、その千里眼の娘はどの娘か、といつも探っていたが、娘達はいつも屈託なく素直そうに笑っていて、その尋常ならざる力をもって生まれた根の暗さを感じさせる者を見つけられなかった。そんなこんなするうちに、娘は一人、また一人と嫁いでいってしまい、姿を消した。別に何を見透かされようと恐れてはいなかったが、その娘の存在は、ちょっとした謎解きのようで、彼の関心事の一つだった。
初穂料を払い、絵馬を受け取ると、藍染は窓口の隅の、参拝者用に用意されている筆と、硯に刷られた墨の元へ進み、誓願と名前を書き入れた。素晴らしい手並みである。今日でこの願掛けも最後か、と、何の感傷もなく思い、絵馬をかける御神木の元へ向かおうとした時、窓口から娘の声がした。
「『祈り』というのは、美しいものばかりではないと、貴方様に教えられました。」
藍染は、最後にしてようやく出会えた、と、軽い驚きと共に確信した。
その声の持ち主こそ、千里眼の娘だった。
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