アンティークカフェ〜バレンタインデー2024〜
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この骨董喫茶は、昔はごくありふれた喫茶店だった。この家の娘の時野は、口八手八で、ほとんど一人で喫茶店を切り盛り出来る程の気の利きようだった。両親はすっかり安心してしまい、まだ老境でもないのに半隠居のような暮らしをしていた。
時野は看板娘としてふさわしかったが、それは美貌によるものではない。明朗な人柄と、うるさくはないが細やかな気遣いが、実に商人として向いていて、彼女は「店の者」、としてしか見られなかったのである。
しっかり者過ぎる程しっかり者の彼女に、悪い虫が付くことはなかった。
この骨董喫茶は、小さくとも瀟洒な造りの和洋折衷の木造建築で、調度品も贅沢で、お茶やお菓子が美味しい、というより、優雅な時間を過ごせる場所代を払って楽しむ、という店だった。その経営方針に時野の両親はあぐらをかいており、今まで稼ぎを増やす努力を怠っていたが、時野が成長すると、彼女は店で出すものの仕入れにこだわって、お茶やお菓子の味を一段と高めた。あの骨董喫茶は、最近良いお茶を出すようになった、と、静かに評判になりつつあった。お見合いや商談に使われる、一段と豪奢で美しい奥の間も、場所代を払うだけのもの、から抜け出しつつあった。美味しいものが供されるなら、話も弾むしまとまるものもまとまりやすい。店は連日盛況になりつつあり、今日のようなバレンタインデーなどには、華やぎの雰囲気を求めて、男女の対の客が増えるようになった。
しかしそれでは藍染は困るのである。
ここは煩わしく騒がしい一日から逃げるための場所、人目が集まって藍染が潜んでいると知られたら、彼は別の隠れ家を探さなければならない。
本来なら時野にとって、藍染は雲の上のような人で、彼女が助け舟を出す方だなどと言えば他人に笑われよう。しかし何年も前から、藍染はバレンタインデーの日をこの喫茶店の奥の間を借り切って忍んでいる。
時野にぬかりはない。
藍染が嫌だというなら、いくらでも手を貸そうという侠気が彼女にはあった。
雲の上の人には、雲の上の人なりの苦労があるのだろう。
彼女は、考えなくていいことは考えない、と腹をくくれる美点があった。
顧愷之の描いた美女にもまさる、藍染は心の中で、時野に賛辞を贈った。
時野は看板娘としてふさわしかったが、それは美貌によるものではない。明朗な人柄と、うるさくはないが細やかな気遣いが、実に商人として向いていて、彼女は「店の者」、としてしか見られなかったのである。
しっかり者過ぎる程しっかり者の彼女に、悪い虫が付くことはなかった。
この骨董喫茶は、小さくとも瀟洒な造りの和洋折衷の木造建築で、調度品も贅沢で、お茶やお菓子が美味しい、というより、優雅な時間を過ごせる場所代を払って楽しむ、という店だった。その経営方針に時野の両親はあぐらをかいており、今まで稼ぎを増やす努力を怠っていたが、時野が成長すると、彼女は店で出すものの仕入れにこだわって、お茶やお菓子の味を一段と高めた。あの骨董喫茶は、最近良いお茶を出すようになった、と、静かに評判になりつつあった。お見合いや商談に使われる、一段と豪奢で美しい奥の間も、場所代を払うだけのもの、から抜け出しつつあった。美味しいものが供されるなら、話も弾むしまとまるものもまとまりやすい。店は連日盛況になりつつあり、今日のようなバレンタインデーなどには、華やぎの雰囲気を求めて、男女の対の客が増えるようになった。
しかしそれでは藍染は困るのである。
ここは煩わしく騒がしい一日から逃げるための場所、人目が集まって藍染が潜んでいると知られたら、彼は別の隠れ家を探さなければならない。
本来なら時野にとって、藍染は雲の上のような人で、彼女が助け舟を出す方だなどと言えば他人に笑われよう。しかし何年も前から、藍染はバレンタインデーの日をこの喫茶店の奥の間を借り切って忍んでいる。
時野にぬかりはない。
藍染が嫌だというなら、いくらでも手を貸そうという侠気が彼女にはあった。
雲の上の人には、雲の上の人なりの苦労があるのだろう。
彼女は、考えなくていいことは考えない、と腹をくくれる美点があった。
顧愷之の描いた美女にもまさる、藍染は心の中で、時野に賛辞を贈った。