準備〜バレンタインデー2023〜
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そろそろ朝食の時間、という時になり、藍染と小夜子は、上座の方に設けられている、高位の者しかくぐれない扉から食堂に入った。ウルキオラが手づから扉を開け、藍染と小夜子を案内した。皆二人の姿に視線が釘付けになった。小夜子は虚夜宮の何処にそんな豪奢な品があったのか、という程凝ったドレスを身にまとい、重たい程の装身具の音をシャラシャラと立てながら、藍染に手を取られてやって来たのである。大丈夫かい、と藍染が気遣う声に、ありがとうございます、と慎ましやかに答える小夜子の様は実に美しく、二人の仲睦まじさに、周りの者は肝を抜かれた。ウルキオラが小夜子のために椅子を引き、彼女が腰を掛ける前に、彼女ははにかんだようにかすかに微笑み、食堂にいる者全てに頭を下げた。それだけで、もう周囲の者を圧倒するに十分だった。藍染は皇妃となった小夜子の初々しさに目を細めると、念の為、陰口を叩くことも忘れてしまった主に女官達に向けて、
「これからは皇妃に向かい意見することは、私に対して意見すると同じと思え。慎むが良い。」
と、威厳を込めて言い放ち、霊圧を高めた。皆思わず頭を垂れて、恭順の意を示さずにいられなかった。
藍染が威圧を解くと、女官や執事達は配膳を始めた。今朝は祝い膳なのか、朝からクロワッサンにローストビーフとサニーレタスをたっぷりとはさんだクロワッサンサンドが供された。スープやサラダ、前菜が運ばれ、オレンジジュースやコーヒー、紅茶が運ばれると、スミレの砂糖漬に金粉を添えた小皿が最後に並べられた。女官長が料理長に頼んで用意させたものだという。祝いの品としてはささやかだったが、毎日厨房に出入りしていた小夜子は、厨房の者が味方なのである。小夜子は、あの苦難の日々を共に過ごしてくれた皆を忘れまい、と胸に誓った。
食事が始まると、遠くで料理に手もつけず、残念そうに小夜子を見つめるザエルアポロの姿が目立った。昨夜まであんなに可愛がっていたのに、とでも言いたげな様子だった。今朝も、コーヒーの焙煎度合いにでも難癖をつけて、なんやかんやと話をしようと考えていたのに、一夜にして小夜子を奪われた、と、ザエルアポロは見当違いの悲しみに襲われていた。小夜子は自分を見つめ続ける彼に少し情が湧いて、控えめに彼に微笑み返した。その瞬間、ザエルアポロに、ひらめきが降ってきた。
「おお、我がミューズ!!」
ザエルアポロは席を立つと、一直線に小夜子の元に駆け寄り、跪いてその手を取り、強く口づけた。
「皇妃様、これからは藍染様のお子を身籠らねばなりません。お困りのことがあらば、是非このザエルアポロにご相談を!!」
そう言って、今度は熱い視線を小夜子にぶつけた。産医を買って出るなど、やはり被験体だと思っていたのか、と藍染は呆れ、ザエルアポロを見やると、
「ちょっと、小夜子様はお食事の途中でしょ?!アンタも早く自分の分を片付けなさいよ!!」
と、リリネットがやって来て彼の背中を蹴りつけた。白い衣は靴跡が着いて、ザエルアポロは慌てて着替えに向かった。
「何なの、アイツ!!小夜子様に気でもあるのかな?マジでキモくない?実験されないように気を付けてね!」
リリネットは片手でつかんだクロワッサンサンドにかぶりつくと、
「あ~あ、藍染様がいなくなっちゃったからつまんない!!スタークも抜け殻だよ!!」
と、藍染と小夜子に遠慮なく言った。スタークが飛んできて、
「藍染様、小夜子様、リリネットがすみません。」
と頭を下げると、リリネットを片腕で抱えて歩きながら、小声で小言を言った。
「新婚さんの邪魔をするな!!そんなだからいつまで経ってもぺちゃんこなんだよ!!」
と、スタークは言ってはならないことを言った。十刃のテーブルの上座は、にぎやかになった。
「ああ、もう!!藍染様、帰ってきて下さいよ!!リリネットがうるさくて仕方ねえ!!」
スタークはリリネットとプロレス技をかけ合いながら愚痴をこぼした。藍染は少し寂しく思いながらも、やはり小夜子がいい、と彼女の方を向いた。小夜子は苦笑しつつ、クロワッサンサンドをフォークとナイフで切り分けて口にしようとしていた。慎ましやかで佳い、としか言いようがない。藍染は頬を緩ませると、
「スミレの砂糖漬は好きかい?」
と彼女に尋ねた。
「好物です。」
小夜子は答えた。
「私の分をあげようか。」
と藍染が小皿に手を伸ばすと、
「今日はお祝いを頂戴したのですから、藍染様もどうかお召し上がり下さいませ。」
と、小夜子は遠慮した。その仲の良い様に、女官達は残念さに脱力した。第二夫人でもいい、なんて、それも無理そう、女官達はそろそろ朝食を終える者が出始めた食堂で、己の不運を嘆いた。
「あーん。」
藍染が口を開けた。スミレの砂糖漬をつまんで口にしようとした小夜子に、その指をこちらに向けるように言ったのだ。
「藍染様、皆様がご覧になっておられます。」
小夜子は恥ずかしがって、その手を止めた。
「別にいいじゃないか、あんな声を私の宮室の女官達に聞かせたクセに。」
藍染はしれっと大胆なことを言った。
「私に黙って欲しかったら、素直にその指を私の口にもってくることだね。さもないともっといじめてあげよう。」
藍染は意地悪く笑うと、目をしばたたかせて固まっている小夜子に向けて、もう一度、口を開けた。
「藍染様!!おふざけが過ぎます!!」
要するにのろけである。
「可愛いね…。」
藍染は目尻を下げて笑った。
「もう、今夜まで待てるだろうか…。」
藍染は小夜子の頬を突っついてからかった。
やってられない、そろそろと席を立つ者が多くなった。いつまでもスミレの砂糖漬が、小夜子の口に入らないまま、甘ったるい時間が流れた。
「これからは皇妃に向かい意見することは、私に対して意見すると同じと思え。慎むが良い。」
と、威厳を込めて言い放ち、霊圧を高めた。皆思わず頭を垂れて、恭順の意を示さずにいられなかった。
藍染が威圧を解くと、女官や執事達は配膳を始めた。今朝は祝い膳なのか、朝からクロワッサンにローストビーフとサニーレタスをたっぷりとはさんだクロワッサンサンドが供された。スープやサラダ、前菜が運ばれ、オレンジジュースやコーヒー、紅茶が運ばれると、スミレの砂糖漬に金粉を添えた小皿が最後に並べられた。女官長が料理長に頼んで用意させたものだという。祝いの品としてはささやかだったが、毎日厨房に出入りしていた小夜子は、厨房の者が味方なのである。小夜子は、あの苦難の日々を共に過ごしてくれた皆を忘れまい、と胸に誓った。
食事が始まると、遠くで料理に手もつけず、残念そうに小夜子を見つめるザエルアポロの姿が目立った。昨夜まであんなに可愛がっていたのに、とでも言いたげな様子だった。今朝も、コーヒーの焙煎度合いにでも難癖をつけて、なんやかんやと話をしようと考えていたのに、一夜にして小夜子を奪われた、と、ザエルアポロは見当違いの悲しみに襲われていた。小夜子は自分を見つめ続ける彼に少し情が湧いて、控えめに彼に微笑み返した。その瞬間、ザエルアポロに、ひらめきが降ってきた。
「おお、我がミューズ!!」
ザエルアポロは席を立つと、一直線に小夜子の元に駆け寄り、跪いてその手を取り、強く口づけた。
「皇妃様、これからは藍染様のお子を身籠らねばなりません。お困りのことがあらば、是非このザエルアポロにご相談を!!」
そう言って、今度は熱い視線を小夜子にぶつけた。産医を買って出るなど、やはり被験体だと思っていたのか、と藍染は呆れ、ザエルアポロを見やると、
「ちょっと、小夜子様はお食事の途中でしょ?!アンタも早く自分の分を片付けなさいよ!!」
と、リリネットがやって来て彼の背中を蹴りつけた。白い衣は靴跡が着いて、ザエルアポロは慌てて着替えに向かった。
「何なの、アイツ!!小夜子様に気でもあるのかな?マジでキモくない?実験されないように気を付けてね!」
リリネットは片手でつかんだクロワッサンサンドにかぶりつくと、
「あ~あ、藍染様がいなくなっちゃったからつまんない!!スタークも抜け殻だよ!!」
と、藍染と小夜子に遠慮なく言った。スタークが飛んできて、
「藍染様、小夜子様、リリネットがすみません。」
と頭を下げると、リリネットを片腕で抱えて歩きながら、小声で小言を言った。
「新婚さんの邪魔をするな!!そんなだからいつまで経ってもぺちゃんこなんだよ!!」
と、スタークは言ってはならないことを言った。十刃のテーブルの上座は、にぎやかになった。
「ああ、もう!!藍染様、帰ってきて下さいよ!!リリネットがうるさくて仕方ねえ!!」
スタークはリリネットとプロレス技をかけ合いながら愚痴をこぼした。藍染は少し寂しく思いながらも、やはり小夜子がいい、と彼女の方を向いた。小夜子は苦笑しつつ、クロワッサンサンドをフォークとナイフで切り分けて口にしようとしていた。慎ましやかで佳い、としか言いようがない。藍染は頬を緩ませると、
「スミレの砂糖漬は好きかい?」
と彼女に尋ねた。
「好物です。」
小夜子は答えた。
「私の分をあげようか。」
と藍染が小皿に手を伸ばすと、
「今日はお祝いを頂戴したのですから、藍染様もどうかお召し上がり下さいませ。」
と、小夜子は遠慮した。その仲の良い様に、女官達は残念さに脱力した。第二夫人でもいい、なんて、それも無理そう、女官達はそろそろ朝食を終える者が出始めた食堂で、己の不運を嘆いた。
「あーん。」
藍染が口を開けた。スミレの砂糖漬をつまんで口にしようとした小夜子に、その指をこちらに向けるように言ったのだ。
「藍染様、皆様がご覧になっておられます。」
小夜子は恥ずかしがって、その手を止めた。
「別にいいじゃないか、あんな声を私の宮室の女官達に聞かせたクセに。」
藍染はしれっと大胆なことを言った。
「私に黙って欲しかったら、素直にその指を私の口にもってくることだね。さもないともっといじめてあげよう。」
藍染は意地悪く笑うと、目をしばたたかせて固まっている小夜子に向けて、もう一度、口を開けた。
「藍染様!!おふざけが過ぎます!!」
要するにのろけである。
「可愛いね…。」
藍染は目尻を下げて笑った。
「もう、今夜まで待てるだろうか…。」
藍染は小夜子の頬を突っついてからかった。
やってられない、そろそろと席を立つ者が多くなった。いつまでもスミレの砂糖漬が、小夜子の口に入らないまま、甘ったるい時間が流れた。