準備〜バレンタインデー2023〜
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翌朝、食堂に集まった面々は、席が変えられていることに気付いた。いつも一番奥の長テーブルの先端の席に藍染が座っていたものが、奥の壁に、高砂のように藍染と小夜子が並んで座る、レースをあしらったテーブルクロスと銀食器で飾られた豪奢な長テーブルがしつらえられていた。まるで皇帝と皇妃が、家臣を見渡しているかのようであった。いや、いるかのようではない、そのものである。
ほとんど眠らないウルキオラは、早朝からこの普請の指揮を藍染に任されていた。ウルキオラは藍染が目覚め、身の安全を保っていることを確認すると、すぐさまこの作業に取りかかった。能臣である。
小夜子は早朝、藍染の腕の中で目を覚ました。目覚めてすぐ、大きく目を見開き、自分の職務を忘れていたことに気付いた。が、その考えは次の瞬間、もう要らぬものとなったのだと、戸惑いと共にすり替えられた。絹の夜着を着て、藍染の体のぬくもりの中で目覚めたものの、身についた女官生活の癖は、一朝一夕では覆らない。彼女は藍染の朝の支度をどうするのか、と考えた。ここは藍染の宮室の女官達が取り仕切っており、厨房の女官などという下級の身分の自分にとっては、藍染程にも上を見上げるような精鋭達の住まう場所なのである。それは昨夜、メイド服を脱がされ、湯を賜った時、自分を扱う女官達の洗練された手付きや気遣いから、嫌という程知った。
「おはよう。」
藍染はとろりと微笑みながら小夜子に告げた。
「昨夜はありがとう。本当にこれで良かったのかと、後悔していないかい?もっとも私は君を離す気はないのだけれど。」
藍染は小夜子を抱き締め直すと、一応は気遣いを見せた。しかし王の絶対命令に、誰が抗えるというのか。小夜子は藍染の抱擁に、体中の痛みを覚えた。よくいう「やってしまった」とはこの事か、とようやく悟った。昨夜は藍染に気絶する程痛みと快楽を与えられ、いつの間にか眠ってしまったのである。気丈さを保とうと、小夜子は指を額に当てた。しかし藍染の顔を見ても、言葉も出ない程めまいを覚えた。藍染に挨拶も出来ないのか、と、小夜子は藍染の顔を直視することが出来なかった。
「いいんだよ、無理しなくて。」
藍染は余裕のある様で小夜子の頭を撫でた。
「もう少し眠ろう。」
彼は小夜子に優しく言った。この会話も逐一女官の誰かが聞いているのだろう、と小夜子は思った。
「私…。」
出ない声で彼女は言った。
「『私』?そう『私は皇妃』。それでいい。」
藍染の言葉は思いやりがなく感じられた。自分はそんなに強いわけではない、そのことを藍染に伝えたかったが、どうしても出来なかった。
「大丈夫。君のことは私が必ず守る。信じて欲しい。だから今は休もう。」
藍染は優しい声音で言うと、小夜子と自分の体を毛布で包んだ。物理的な暖かさに、小夜子の体は緩んで眠りに落ちた。涙が一雫、閉じたまぶたから伝った。
ほとんど眠らないウルキオラは、早朝からこの普請の指揮を藍染に任されていた。ウルキオラは藍染が目覚め、身の安全を保っていることを確認すると、すぐさまこの作業に取りかかった。能臣である。
小夜子は早朝、藍染の腕の中で目を覚ました。目覚めてすぐ、大きく目を見開き、自分の職務を忘れていたことに気付いた。が、その考えは次の瞬間、もう要らぬものとなったのだと、戸惑いと共にすり替えられた。絹の夜着を着て、藍染の体のぬくもりの中で目覚めたものの、身についた女官生活の癖は、一朝一夕では覆らない。彼女は藍染の朝の支度をどうするのか、と考えた。ここは藍染の宮室の女官達が取り仕切っており、厨房の女官などという下級の身分の自分にとっては、藍染程にも上を見上げるような精鋭達の住まう場所なのである。それは昨夜、メイド服を脱がされ、湯を賜った時、自分を扱う女官達の洗練された手付きや気遣いから、嫌という程知った。
「おはよう。」
藍染はとろりと微笑みながら小夜子に告げた。
「昨夜はありがとう。本当にこれで良かったのかと、後悔していないかい?もっとも私は君を離す気はないのだけれど。」
藍染は小夜子を抱き締め直すと、一応は気遣いを見せた。しかし王の絶対命令に、誰が抗えるというのか。小夜子は藍染の抱擁に、体中の痛みを覚えた。よくいう「やってしまった」とはこの事か、とようやく悟った。昨夜は藍染に気絶する程痛みと快楽を与えられ、いつの間にか眠ってしまったのである。気丈さを保とうと、小夜子は指を額に当てた。しかし藍染の顔を見ても、言葉も出ない程めまいを覚えた。藍染に挨拶も出来ないのか、と、小夜子は藍染の顔を直視することが出来なかった。
「いいんだよ、無理しなくて。」
藍染は余裕のある様で小夜子の頭を撫でた。
「もう少し眠ろう。」
彼は小夜子に優しく言った。この会話も逐一女官の誰かが聞いているのだろう、と小夜子は思った。
「私…。」
出ない声で彼女は言った。
「『私』?そう『私は皇妃』。それでいい。」
藍染の言葉は思いやりがなく感じられた。自分はそんなに強いわけではない、そのことを藍染に伝えたかったが、どうしても出来なかった。
「大丈夫。君のことは私が必ず守る。信じて欲しい。だから今は休もう。」
藍染は優しい声音で言うと、小夜子と自分の体を毛布で包んだ。物理的な暖かさに、小夜子の体は緩んで眠りに落ちた。涙が一雫、閉じたまぶたから伝った。