準備〜バレンタインデー2023〜
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突然のことに、小夜子は動転して、後ろへ倒れそうになった。その腰を抱いて藍染が支える。
「いつまでも夢が夢であるはずがない。消える夢もあれば、叶う夢もある。それとも君は、夢は夢のままでいい、と思う程無欲なのかい?」
藍染は小夜子の唇を人差し指でなぞった。紅はもう薄れていて、花びらのような感触が指に心地よい。小夜子は襟元まで真っ赤になって、何が起こったのか理解しようと努めた。しかし藍染の手が腰に回ったままであることが、雄弁に全てを物語っていた。
「お知りになってしまわれたのですか…。」
小夜子は観念したように、尋ねるわけでもなく息を吐いた。
「全て聞かせてもらったよ、小夜子皇妃。」
藍染は小夜子を直視した。その視線の自分を捉えようとする圧倒的な強さに、彼女は腰から這い上がる感覚を感じて立っていられなくなった。藍染は彼女の腰を更にしっかりと抱き締めると、
「嗚呼、甘い香りがする。」
と目を閉じた。そして再び目を開けると、
「しっかり立ちなさい。」
と小夜子に命じた。
「私の婚姻はホットチョコレートの香りだ。」
と藍染は言い、そっと小夜子の腰から手を離した。藍染は調理台に置かれたホットチョコレートのカップに、オールスパイスの瓶を手に取り、強く一振り足した。
「強壮のためにもう一振り。今夜は君のために頑張らないといけないからね。」
藍染はそう艶っぽく笑うと、小夜子に小盆を持たせた。意味が分かった小夜子は、更に顔を赤くしてうつむいた。
「もうこれ以上は厨房でやるのはやめよう。君には私の宮室に部屋を与える。全てを飛び越える覚悟は出来たかい?」
藍染が首をかしげて小夜子の顔を覗き込むと、彼女は固く目を閉じてうなずいた。
「いい子だ。」
藍染が口の端を上げてそっと囁くと、料理長がシャンパンとグラスを2つ用意し、その銀の盆を厨房の入口に控えていたウルキオラにうやうやしく渡した。全てを悟ったウルキオラは、黙って盆を受け取り、藍染の宮室へと先に歩いて行った。藍染の宮室に仕える女官達は職務に忠実で、藍染に不敬な気持ちを抱く者はいない。小夜子のことは驚くかもしれないが、冷遇したりはしないだろう。全て藍染が躾けているのである。
藍染の後を小盆を捧げ持ち、甘い香りをさせてしずしずとついて歩き、彼の宮室へと入った小夜子の姿は、虚夜宮の者達に見られ、にわかに騒ぎとなった。藍染が自宮専任の女官以外の女を部屋に呼ぶのは、職務でハリベルを呼びつけたこと以外になかったのである。小夜子が藍染の寵を受ける身になったのだと、皆に一晩のうちに知れ渡った。おまけにウルキオラが指示して、小夜子のための当面の荷物が藍染の宮室に運びこまれた。藍染付きの女官達が、明日小夜子が身に着ける豪奢な白いドレスをトルソーと共に運んだ。パニエやアクセサリーの類までも運びこまれた。
「どこのお姫様が着るの?」
女官の行列を見ていたリリネットがスタークに尋ねた。
「お前じゃねえことだけは確かだよ。」
スタークはリリネットに、不躾な目で見るな、と注意を促した。スタークもよく知らない女官が、藍染に見初められたのである。人とはよく分からないものだ、とスタークもリリネットも思った。
「いつまでも夢が夢であるはずがない。消える夢もあれば、叶う夢もある。それとも君は、夢は夢のままでいい、と思う程無欲なのかい?」
藍染は小夜子の唇を人差し指でなぞった。紅はもう薄れていて、花びらのような感触が指に心地よい。小夜子は襟元まで真っ赤になって、何が起こったのか理解しようと努めた。しかし藍染の手が腰に回ったままであることが、雄弁に全てを物語っていた。
「お知りになってしまわれたのですか…。」
小夜子は観念したように、尋ねるわけでもなく息を吐いた。
「全て聞かせてもらったよ、小夜子皇妃。」
藍染は小夜子を直視した。その視線の自分を捉えようとする圧倒的な強さに、彼女は腰から這い上がる感覚を感じて立っていられなくなった。藍染は彼女の腰を更にしっかりと抱き締めると、
「嗚呼、甘い香りがする。」
と目を閉じた。そして再び目を開けると、
「しっかり立ちなさい。」
と小夜子に命じた。
「私の婚姻はホットチョコレートの香りだ。」
と藍染は言い、そっと小夜子の腰から手を離した。藍染は調理台に置かれたホットチョコレートのカップに、オールスパイスの瓶を手に取り、強く一振り足した。
「強壮のためにもう一振り。今夜は君のために頑張らないといけないからね。」
藍染はそう艶っぽく笑うと、小夜子に小盆を持たせた。意味が分かった小夜子は、更に顔を赤くしてうつむいた。
「もうこれ以上は厨房でやるのはやめよう。君には私の宮室に部屋を与える。全てを飛び越える覚悟は出来たかい?」
藍染が首をかしげて小夜子の顔を覗き込むと、彼女は固く目を閉じてうなずいた。
「いい子だ。」
藍染が口の端を上げてそっと囁くと、料理長がシャンパンとグラスを2つ用意し、その銀の盆を厨房の入口に控えていたウルキオラにうやうやしく渡した。全てを悟ったウルキオラは、黙って盆を受け取り、藍染の宮室へと先に歩いて行った。藍染の宮室に仕える女官達は職務に忠実で、藍染に不敬な気持ちを抱く者はいない。小夜子のことは驚くかもしれないが、冷遇したりはしないだろう。全て藍染が躾けているのである。
藍染の後を小盆を捧げ持ち、甘い香りをさせてしずしずとついて歩き、彼の宮室へと入った小夜子の姿は、虚夜宮の者達に見られ、にわかに騒ぎとなった。藍染が自宮専任の女官以外の女を部屋に呼ぶのは、職務でハリベルを呼びつけたこと以外になかったのである。小夜子が藍染の寵を受ける身になったのだと、皆に一晩のうちに知れ渡った。おまけにウルキオラが指示して、小夜子のための当面の荷物が藍染の宮室に運びこまれた。藍染付きの女官達が、明日小夜子が身に着ける豪奢な白いドレスをトルソーと共に運んだ。パニエやアクセサリーの類までも運びこまれた。
「どこのお姫様が着るの?」
女官の行列を見ていたリリネットがスタークに尋ねた。
「お前じゃねえことだけは確かだよ。」
スタークはリリネットに、不躾な目で見るな、と注意を促した。スタークもよく知らない女官が、藍染に見初められたのである。人とはよく分からないものだ、とスタークもリリネットも思った。