血判〜藍染様お誕生日記念2022〜
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それから二人は隊舎に戻って手を清め、平服に着替えた。予想通り、隊の仕事は滞っており、市丸は人の悪い顔で笑ってごまかしているだけだった。あらら、何で戻って来はったん、と、市丸は笑っていたが、何かを悟ったような暗い顔になった。彼女は堕ちたのか、と絶望を隠した笑顔に、紗希は黙って会釈した。ただそれだけのことが、惚れていたわけではないが助けたかった、その一念が通じなかった無念さとなって、命尽きるまで市丸を責め続けることになった。
虚圏に去ってから、紗希は白いドレスを着ている。藍染の隣に席を置き、女王となったのである。ある時藍染と紗希の宮室の衣装の片付けをしていた侍女が、この袖の汚れた襦袢はいかが致しましょう、もうお着物をお召しになるのに、このような質素なお品をお使いになられることはないのでは、と尋ねてきた。それはあの日、野菊と二人の手を汚した血が染み付いた白い襦袢であった。
それは大切に取っておいてくれないか、と背後から藍染の声がした。紗希と侍女が振り向くと、藍染は珍しく温かな笑顔で笑っていた。侍女は頭を下げて脇に引いた。藍染は自分の衣装棚から、あの日自分が着ていた袖口の汚れた襦袢を出してきて、これを一緒にしまっておいておくれ、と言った。藍染も同じ思いでいてくれたことが、雷撃を浴びたように嬉しく、紗希は泣き崩れた。彼女とて、棄ててきた世界を思い辛いのである。しかし藍染の愛が確かにここにある、そのことが彼女を奮い立たせた。
最近よく泣くね、藍染はその日の閨で紗希の髪を撫でながら言った。子供が出来たのでしょうか…、彼女は細い声で不安げに言った。明日医師に診させよう、藍染は彼女を抱き締めた。大丈夫、藍染は言った。例え何があっても大丈夫、紗希は心の中で思った。母となった故、強くもなれば弱くもなるのだ、と、まだはっきり分からないなりに思った。
私は血判を押したのだ、と彼女は思った。
その誓約は、身を裂かれても破られることはないと世界に誓える、と強く思った。
他の誰にも押せないもの。
その思いが私を強くする。
〈了〉
虚圏に去ってから、紗希は白いドレスを着ている。藍染の隣に席を置き、女王となったのである。ある時藍染と紗希の宮室の衣装の片付けをしていた侍女が、この袖の汚れた襦袢はいかが致しましょう、もうお着物をお召しになるのに、このような質素なお品をお使いになられることはないのでは、と尋ねてきた。それはあの日、野菊と二人の手を汚した血が染み付いた白い襦袢であった。
それは大切に取っておいてくれないか、と背後から藍染の声がした。紗希と侍女が振り向くと、藍染は珍しく温かな笑顔で笑っていた。侍女は頭を下げて脇に引いた。藍染は自分の衣装棚から、あの日自分が着ていた袖口の汚れた襦袢を出してきて、これを一緒にしまっておいておくれ、と言った。藍染も同じ思いでいてくれたことが、雷撃を浴びたように嬉しく、紗希は泣き崩れた。彼女とて、棄ててきた世界を思い辛いのである。しかし藍染の愛が確かにここにある、そのことが彼女を奮い立たせた。
最近よく泣くね、藍染はその日の閨で紗希の髪を撫でながら言った。子供が出来たのでしょうか…、彼女は細い声で不安げに言った。明日医師に診させよう、藍染は彼女を抱き締めた。大丈夫、藍染は言った。例え何があっても大丈夫、紗希は心の中で思った。母となった故、強くもなれば弱くもなるのだ、と、まだはっきり分からないなりに思った。
私は血判を押したのだ、と彼女は思った。
その誓約は、身を裂かれても破られることはないと世界に誓える、と強く思った。
他の誰にも押せないもの。
その思いが私を強くする。
〈了〉