血判〜藍染様お誕生日記念2022〜
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二人は少しの間、黙って動かず見つめ合っていた。その間を、不釣り合いな蝶が、ひらひらと行き来した。紗希は笑い出し、蝶を追いかけてくるくると舞った。まるで胡旋舞のように、体を軽々と回して戯れていた。紗希は笑い声を上げた。藍染は刀を抜いた。謀略を知られた以上、生かしておくわけにはいかない。ましてや市丸のことまで知られてしまったのである。そこへ、道端の野菊に蝶が止まった。紗希は身をかがめて、静かに蝶の止まった野菊を手折った。蝶は、花から逃げなかった。
かがんだ姿勢から、紗希は藍染に拝跪した。左手の親指と中指で持った菊を、そっと藍染に差出し、人差し指を伸ばした。蝶は逃げなかった。
藍染は刀を下に構えた。紗希は伸ばした人差し指を、藍染の刀の刃に触れさせた。鋭く研がれた刃は、やすやすと切り傷を付け、紗希の人差し指から、みるみる血が滴った。音もなく静かな時間だったが、蝶は自分の姿が輝く刃に写ったことに驚いたらしい。蝶はさっと飛び去った。後にはまた二人だけが残された。
静かに時間だけは流れ続ける。紗希の人差し指から滴る血は、野菊の花冠に受け止め切れず、手首をつたい、死覇装の中に着た白い襦袢に吸い込まれた。赤い鮮血の花を咲かせながら、藍染様、と彼女は声を放った。この一ノ瀬 紗希、どうかいつまでも、藍染様のお側に、彼女はそう言うと、血に染まった野菊を捧げながら頭を下げた。それは家族や友人を棄てる、ということか、と藍染は驚いた。長い髪に覆われて、下げた顔の表情は見えなかったが、少なくとも彼女は笑っていた。既に覚悟は決まっていたのだろう。藍染はガチャリと刀を地に落とすと、彼女から野菊を受け取った。並々と血の溜まった野菊の花から落ちた血が、藍染の白い襦袢をも汚した。藍染はかがんで紗希を抱き締めて、その左手を取った。滴り続ける血は、二人の白い襦袢の袖口を染め続けた。藍染は紗希の左の人差し指を口に咥えた。舌に霊圧を込め傷口を消し去った。紗希の血は薄く、鉄の味がしなかった。過去に戦闘で傷付いた平子や市丸の傷口から血を吸ったことがあるが、紗希の血からは、男性的な濃厚な血の味を感じなかった。
刀を向けたりしてすまなかった、と、藍染は紗希に頭を下げた。未来の王である、自尊の強い藍染が頭を下げたのである。紗希はとがめなかった。藍染は悲しくなった。こんなにひ弱い女をおいていくのか、と自責した。君を玉座の隣に座らせよう、約束する、と藍染は紗希に告げた。彼女は黙って頷いた。市丸副隊長にね、紗希は唐突に市丸の名を出してきた。私も共に参ります、だからご心配は御無用にて、ともらったものを返したのよ、と言って笑った。まるで市丸副隊長と一緒に行く、みたいに誤解させたかしら、と紗希は気丈に笑い続けた。ギンには私から尋問する、と藍染は言って、紗希の指の傷が治っていることを確認した。妬いてるの?と聞かれたので、ああ、と言い、藍染も笑った。君は貧血だろう、医務室にはきちんと通っているのか、と藍染は紗希に尋ねた。きちんと行ってます、と彼女は言葉を正した。もう長いこと一緒にいるのに、まだ、ですって…と言葉尻を濁し、紗希は腹に手をやった。そうか…とだけ言って、藍染はまた紗希を抱き締めなおした。何故おいていこうとしたのだろう、おいていけるはずがない、藍染も覚悟を決めた。彼女だって相当の苦悩があったはずだ。何故自分だけ逃げられようか。
人に見られます、と言って紗希は立ち上がろうとした。しかし藍染はしばらく強い力で彼女を抱き締め続けた。そうじゃないのよ、と紗希は言った。その物騒なものを早くしまって、私が藍染隊長を怒らせた、と言って、誰かに𠮟られるかもしれない、と彼女は笑った。藍染はそれもそうだと思い、謝って刀を鞘に収めた。
鰻でも食べに行かないか、と唐突に藍染は言った。豆腐懐石はどうするの、楽しみにしていたじゃない、と紗希は少し驚いた。君に精をつけさせないと、と藍染は笑って言った。お代は私が払うよ、だから早く可愛い子供を身ごもっておくれ、と言って、藍染は素早く紗希の唇を奪った。紗希は顔を赤くして、何から怒ればいいの、財布を軽く見られたこと、それとも往来でこんな真似されたこと、と大声を上げた。藍染は上を向いて笑った。十分血の気は濃いみたいだね、と言って、藍染は紗希の手を取った。とりあえず着替えに帰ろう、それからたっぷり可愛がるとする、と藍染は勝手に決めた。紗希は照れてまた怒り始めた。
それは愛の血判、他の誰にも押せないものだ。
かがんだ姿勢から、紗希は藍染に拝跪した。左手の親指と中指で持った菊を、そっと藍染に差出し、人差し指を伸ばした。蝶は逃げなかった。
藍染は刀を下に構えた。紗希は伸ばした人差し指を、藍染の刀の刃に触れさせた。鋭く研がれた刃は、やすやすと切り傷を付け、紗希の人差し指から、みるみる血が滴った。音もなく静かな時間だったが、蝶は自分の姿が輝く刃に写ったことに驚いたらしい。蝶はさっと飛び去った。後にはまた二人だけが残された。
静かに時間だけは流れ続ける。紗希の人差し指から滴る血は、野菊の花冠に受け止め切れず、手首をつたい、死覇装の中に着た白い襦袢に吸い込まれた。赤い鮮血の花を咲かせながら、藍染様、と彼女は声を放った。この一ノ瀬 紗希、どうかいつまでも、藍染様のお側に、彼女はそう言うと、血に染まった野菊を捧げながら頭を下げた。それは家族や友人を棄てる、ということか、と藍染は驚いた。長い髪に覆われて、下げた顔の表情は見えなかったが、少なくとも彼女は笑っていた。既に覚悟は決まっていたのだろう。藍染はガチャリと刀を地に落とすと、彼女から野菊を受け取った。並々と血の溜まった野菊の花から落ちた血が、藍染の白い襦袢をも汚した。藍染はかがんで紗希を抱き締めて、その左手を取った。滴り続ける血は、二人の白い襦袢の袖口を染め続けた。藍染は紗希の左の人差し指を口に咥えた。舌に霊圧を込め傷口を消し去った。紗希の血は薄く、鉄の味がしなかった。過去に戦闘で傷付いた平子や市丸の傷口から血を吸ったことがあるが、紗希の血からは、男性的な濃厚な血の味を感じなかった。
刀を向けたりしてすまなかった、と、藍染は紗希に頭を下げた。未来の王である、自尊の強い藍染が頭を下げたのである。紗希はとがめなかった。藍染は悲しくなった。こんなにひ弱い女をおいていくのか、と自責した。君を玉座の隣に座らせよう、約束する、と藍染は紗希に告げた。彼女は黙って頷いた。市丸副隊長にね、紗希は唐突に市丸の名を出してきた。私も共に参ります、だからご心配は御無用にて、ともらったものを返したのよ、と言って笑った。まるで市丸副隊長と一緒に行く、みたいに誤解させたかしら、と紗希は気丈に笑い続けた。ギンには私から尋問する、と藍染は言って、紗希の指の傷が治っていることを確認した。妬いてるの?と聞かれたので、ああ、と言い、藍染も笑った。君は貧血だろう、医務室にはきちんと通っているのか、と藍染は紗希に尋ねた。きちんと行ってます、と彼女は言葉を正した。もう長いこと一緒にいるのに、まだ、ですって…と言葉尻を濁し、紗希は腹に手をやった。そうか…とだけ言って、藍染はまた紗希を抱き締めなおした。何故おいていこうとしたのだろう、おいていけるはずがない、藍染も覚悟を決めた。彼女だって相当の苦悩があったはずだ。何故自分だけ逃げられようか。
人に見られます、と言って紗希は立ち上がろうとした。しかし藍染はしばらく強い力で彼女を抱き締め続けた。そうじゃないのよ、と紗希は言った。その物騒なものを早くしまって、私が藍染隊長を怒らせた、と言って、誰かに𠮟られるかもしれない、と彼女は笑った。藍染はそれもそうだと思い、謝って刀を鞘に収めた。
鰻でも食べに行かないか、と唐突に藍染は言った。豆腐懐石はどうするの、楽しみにしていたじゃない、と紗希は少し驚いた。君に精をつけさせないと、と藍染は笑って言った。お代は私が払うよ、だから早く可愛い子供を身ごもっておくれ、と言って、藍染は素早く紗希の唇を奪った。紗希は顔を赤くして、何から怒ればいいの、財布を軽く見られたこと、それとも往来でこんな真似されたこと、と大声を上げた。藍染は上を向いて笑った。十分血の気は濃いみたいだね、と言って、藍染は紗希の手を取った。とりあえず着替えに帰ろう、それからたっぷり可愛がるとする、と藍染は勝手に決めた。紗希は照れてまた怒り始めた。
それは愛の血判、他の誰にも押せないものだ。