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本棚

xx

どうしてと、理由を考えるのも飽いてきた。
こうすればと、己の行動を考え直すのにももう飽いた。
そして、俺がどのような行動をとろうとも。
想像の中でさえ、彼女はあの男と手を結び俺を陥れ、あの男は俺の物を全て奪い取り帝に取り入るのだ。
まるで悪夢の様だった。
国を救うために太刀を手に妖を斬ったというのに、俺の帰りを待っていたのは愛しい女のあざける声。
そして良き日の想い出を塗りつぶす血の色に、見知った顔の打ち首行列。
旅の途中で産まれたばかりと話を聞いていた甥っ子の、陽太の初めて見る顔は、酷く苦しそうな表情をした野ざらしの腐肉だった。

これを許してなるものか。
例えこの身が化生に堕ちようとも、この屈辱を晴らさぬ事には一族の皆も報われぬ。
我が名を、友の名を、家族の名を貶め踏みにじった者共に、この太刀を突き付けてやらねば気がすまぬ。
この妖切りの恐ろしさを、あの化け物共に思い知らせてやらねば、死んでも死に切れぬのだ。
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