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遠すぎる恋





「どうしてリノヒョンは最後の愛なの?」




"誰かの初恋"と"最後の愛"をどちらを選ぶかという質問だった。
僕は、懐かしさを感じられる誰かの初恋の人でありたいと答えたが彼は違った。
最後の愛を選んでいた。

初恋は実らないから、最後の愛が良いと言う。
そうか。僕はずっと、"初恋"に囚われているんだろう。
答えを聞くのが怖い、実ったところでどうしたらいいのか分からないから怖いんだろう。
だったら、ずっと想い出として初恋の綺麗なままで記憶に残しておきたい。


どこまでいっても僕達は、いつも反対。
彼をこんなに好きでいても、彼は気づかないんだ。





「最後の愛の方が絶対にいい」
「...リノヒョンはどちらにせよ初恋も最後の愛も持っていくような人でしょ」
「は?」
「...なんでもない」




会話を強制的に終わらせるかのように途切れさせ、その場を後にしようとするとが僕の腕を引っ張る。



「...何逃げてんの?」



その言葉にドキッとする。
心の中を読まれたかと、目に動揺が走る。
でも彼が言いたい"逃げる"とはこの場から去るなよという意味なのだろう。
決して、僕の心の中に問い掛けたわけではなさそうだった。



「お前は何で、初恋なの」
「それは......」



言葉に詰まってしまった。
僕が初恋でありたい理由はただ、怖いから。
僕は、"キミ"から逃げている。
純粋に好きなのに、どこかで僕の中にずっとしまい込んでおきたい思い出として残しておきたいのだ。



「...実ったところで、って話だから」
「そんなの分かんないだろ、実ったならいいんじゃないの?」



それには一理ある。
最初から諦めるのも良くないと知っている。
けど僕が好きなのはヒョン、あなただ。
この気持ちだけは、知られちゃダメなんだ。




「ヒョンの言ってることも確かに分かるけど、...それでも僕は初恋の思い出としてでいいんだ」
「...ふーん、まぁお前がそこまで言うならそれでいいんじゃない」




そう。興味なんか無いよね。
いやリノヒョンの事だし、これ以上この事について話し合っても自身が思う事をそれ以上に根掘り葉掘り聞こうとはしないんだろう。



「...ヒョン、そろそろ出ないと遅刻するよ」


急かすようにリノヒョンに追い討ちをかければ、そうだったと慌ててカバンを持って出て行こうとする。


分かってる。
そんなに急いで"誰と"出掛けるのかは。



「とりあえず行ってくる」
「気をつけて」



僕のその言葉をちゃんと聞いていたかは分からない。
いや、ほとんど聞いてなかっただろう。


ドアの向こう側から微かに聞こえる"ハナ"という名前に切なくも肩を落とす。


分かっているが故に、締め付けられるものだと歌の歌詞にでも出来そうだ。





「...行っちゃった」




彼の心を射止めてるのは、ハン。
だからといって友達に嫉妬する事は無い。
大切な友達で、家族。そしてチーム。
嫉妬なんてありえない事だ。



今は自分のやる事をしっかりやろうと既に諦めに入っていた。




そして、玄関のドアが開く。





「スンミナァ〜、帰って来たら一緒に飯食おう」




それだけを言ってまた出て行った。





返事こそしなかったが、僕は思った以上に表情に出ていたのだろう。
口元が緩くなってしまう。


どうして諦めかけた時にこうやってまた引きずり込んでいくのだろう。
1ミリでも爪痕を残していく彼にまた"好き"という気持ちが募っていく。




「...ずるい人だ」




それでも僕は、液晶画面に映るデリバリーメニューを何時間でも見ていられるだろう。


彼と僕の2人分をお忘れなく。









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