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Cookie FRIEND






僕がクッキーを作り始めた理由。
今ではクッキーとブラウニーといえば僕、っていう感じになるほど定着している。
そもそも、どうしてベーキング料理を作るようになったかっていう理由はメンバーもSTAYも誰も知らない。
誰にも言ってないから当たり前だけど、だからと言って今更誰かに言わなきゃいけないなんてことも無い。
ただ、"きっかけ"はあった。
僕がクッキーを作り続けようと思ったきっかけ。


それは、僕の親友。
同じチームであり、家族であり、兄弟であり、親友。


彼がいたから、僕はずっとクッキーを作っていこうって決めたんだ。









その日、僕は仕事も無く朝早くから目が覚めていた。シャワーを浴びて、何かをするにも特に思い浮かばない。



「......うーん...何しようかな」


ソファーの上で暇を持て余していれば、丁度お菓子の番組が始まる。



「わぁ...めちゃくちゃ美味しそう」


テレビにはチョコチップクッキーが映し出され、さくホロっとしそうなビジュアルに思わず釘付けになる。




「...クッキー、か...作ってみようかな」


オーストラリアにいる時はよく僕の母が作ってくれていた。
シンプルだけど、作る人によっては味も食感も見た目も全て違ってくるクッキー。
僕は久しぶりに手作りのあのクッキーが食べたくなった。
材料を買いに急いで支度を始める。
買う物は全て、スマホのメモ欄に打ち込みすぐに目に触れるようにしてから家を出た。



大きいスーパーに着けばあらかた決めておいた材料をどんどんカゴの中に入れていく。
誰が見ても今からお菓子作りをする人だ、とわかるくらいだ。



「よし、これも買ったし、あれも買って...うん、材料も全部買えたし、会計して早く戻ろう」



僕は終始わくわくしながら、持ってきたエコバッグにものを詰める。
足早にスーパーを出て、宿舎に戻った。




「おっも...やっと帰ってきた〜...」



溜息と共にエコバッグを置けば、その声に反応して寝巻き姿のヒョンジンが現れる。



「ヨンボガ〜?どうしたのその荷物」
「あ、ヒョンジナー!」
「何買ってきたの?」
「秘密〜」
「え、気になる」
「作ってからのお楽しみね」
「ほーい」


シャワー入ってくる、とヒョンジンはその場を去る。
お楽しみとは言ったものの、初めて作るし正直自信は無かった。僕が食べれればそれでいいかな、程度にしか考えてなかったからまさか自分以外に食べる人が増えてしまった事に少し動揺する。



「...大丈夫、かな...初めてなんだけど...」



買ってきた材料を見て、苦い顔をする。



「レシピ通り作れば問題ないか」



よし、と気合いを入れて早速クッキー作りに入るとする。
スマホを見ながらの作業に、小麦粉が付いた手で触ってしまったりでテーブルの上は白い粉が舞っていた。


「...ちゃんと片付けないとチャニヒョンに怒られちゃうね、これは...」


いそいそとクッキーの生地の形状にしていく。
そこに、チョコチップを流し込み全体に混じるように手で捏ねていく。



「上手くいくといいなぁ...」



天板の上にクッキングシートを広げて、少量ずつ手に取っては丸めてそれを均等に薄くしていく作業を1時間ほどしていた。
もうとっくにシャワーから上がっているヒョンジンも時折見に来ては楽しそうに待っていた。



「あと焼くだけだ〜...あ〜大変だよ...」
「お!マジで?おつかれヨンボギ」


ひょこっとオーブンレンジの前に来て、焼けるのを待っていた。



「ヒョンジナ、上手くいくかな?僕初めて作るんだけど...」
「大丈夫だよ、めちゃくちゃ良い匂いしてるし」
「匂いは確かに良いけどさ...問題は味だよ」
「お前が作ったんだから、心配ないよ」



そう言ってヒョンジンは僕を励ましてくれた。



「ヒョンジナ、ありがとね」
「んー?当たり前なことを言っただけだよ」
「なんでそう思うの?上手くいくって」
「...天使が作るクッキー、美味いに決まってる」
「あははっ、冗談やめてよ〜」



とは言いつつも、ヒョンジンの優しい言葉はすごく嬉しかった。
いつも何かをする時、僕のそばにいてくれるヒョンジン。ステージの上ではあんなに豹変するのに宿舎や僕達といる時はすごくおっちょこちょいで世話を焼きたくなる。
そんなヒョンジンといる時が幸せだ。



「ねぇ、ヨンボギ...クッキーが出来たらさ、俺が一番最初に食べてもいい?」
「ぇえっ?!初めて作ったし、僕が最初に食べるよ!」
「いや、まぁさ、...そうなんだけど、...俺が食べたいんだよね最初に」
「え、...いや、うん...そんなに言うなら食べてもいいけど...味はどうかわかんないけどいいの?」
「美味しいに決まってるから大丈夫」
「そ、そう...」



どうしても、最初に食べたいというヒョンジンに後押しされて食べてもらう事にした。
クッキーもいよいよ香ばしい香りと甘い匂い、そして薄茶色に変わっていく。
チリンっと終わりの合図が鳴り、僕とヒョンジンは駆け寄った。
扉を開ければ、とっても甘くてクッキー屋さんに入った時の香りが鼻をくすぐる。



「わぁ〜!いい感じに焼けてる!」
「だから言っただろ、お前なら上手くいくって」
「えへへっ、早速食べてみよう!!」


まだ熱々のクッキーをヒョンジンが手に取り、それを口に運ぶ。


熱がりながらも、はふはふとクッキーを食べ始める。



「ちょ、火傷しないようにね」


OKと出しながら、クッキーを堪能するヒョンジン。すごくドキドキしていた。
緊張でヒョンジンを凝視する。



「ヨンボガ...」
「な、何どうしたの?味やっぱり変?」
「美味い...」
「...へ?」
「めちゃくちゃ美味しい!!ヨンボギ、お前の作ったクッキーめちゃくちゃ美味しい!!こんなに美味しいクッキー初めて食べたよ!!」


満面の笑みで僕を抱きしめる。
まるで僕の喜びのように、ヒョンジンはすごく喜んでいた。
その姿に、僕も嬉しくなって目から涙が溢れた。


「ちょ、な、なんで泣いてんの?!」
「いや、ヒョンジナが...」
「え、ぇえ?俺?ごめん、痛かった?ごめんな」
「そうじゃなくて、すごく喜んでくれたから」
「ぇ、あ、ぇえ?そっち?そっちなの?...ははっ、嬉しい涙なら良かった」


そう言ってヒョンジンは僕の頭を撫でる。
大きくて、暖かいヒョンジンの手。
そんなヒョンジンの手が大好きでたまらない。
その手に抱きしめられたり、撫でてもらえたり、手を握ったりするだけでこんなに幸せになるんだ。それこそヒョンジンが僕の天使じゃないか。



「自信なかったけど、ヒョンジナに言われてすごく嬉しかった!ありがとうっ」



僕も抱きしめ返すと、よしよしと頭を優しく撫でてくれた。



「これからも暇な時に作ったらいいんじゃない?」
「うんっ、そうするつもり」
「お前はほんとに、ヘンボギなんだな〜」
「えへへっ」



2枚目にも手を出しながら、その後ヒョンジンと楽しくお喋りをする。
その日は、最高に楽しくて僕の新しい挑戦が増えたすごく良い日になったのを覚えている。





「ヒョンジナ、」
「んー?なにー?」



「またいつかクッキーを作る時があったらさ」
「うん」
「その時もまた、ヒョンジナが一番最初に食べてくれる?」
「うん、もちろん良いよ」
「そしたら、ヒョンジナためにたくさん作ってあげるからね」
「そりゃー嬉しいね、期待してる」
「期待しててね」




そう言って僕達は、大量にあったクッキーを半分ほど食べてしまった。




ヒョンジナ、いつまでも僕のそばで笑っていて。





いつの日も、僕のそばにいてね。





キミが悲しい時は、僕がそばにいて甘くて美味しいクッキーをいつでも焼いてあげるから。





僕がクッキーを作り始めたきっかけ。






それはキミが一番最初に、僕の作ったクッキーを食べてくれたこと。





キミは知らないかもしれないけど







キミは僕のヒーローでクッキーフレンド。
















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