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400字短編

夏休み真っ只中の、昼下がり。

蝉のせわしい鳴き声が薄まるくらい私の心臓は高鳴って、息をするのも忘れていた。

私と彼しかいない、静かな教室。
私は扉から1番奥の窓際の椅子に座って、扉に立つ彼を見つめていた。

うなじから背中に滴る汗を感じて唾を飲む。
ほんの5秒程の間(ま)に息もせずただ言葉をまった。
彼が言葉を見つけられないとわかっていながら、ただまった。
それでも彼は俯いたまま垂らした腕の拳を握りしめるだけ。

ごめんね、と口にするとかすれた息のようだった。

言い切るまでに肺の空気がなくって代わりに鼻の奥がつんとした。
駄目だと制止しようとするほど涙が止まらなくなっていく。
気付かれたくないのに鼻をすすると音が出る。
身体の震えを止めようと力を入れると頭に何がふわりと乗った。

「会いに行く」

彼の赤い目元には雫がキラキラ輝いていて大好きな笑顔が力強く向けられていた。
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