誕生日【荒銀淋】
「よし、じゃあ始めるぞ!」
あの笑いのあと、
乙姫甲姫が作ってくれた
料理がたくさん机に並べられて、
みんなそれぞれ席についた。
そして
スケさんとカクさん、それにハッチも
スケさんのその一言で立ち上がり
壁についたいくつもの巻物から出るテープを
それぞれ手に持ち、同時に引っ張った!
『リ』
『ン』
『!』
『誕』
『生』
『日』
『お』
『め』
『で』
『と』
『う』
『!!』
筆で書かれた力強い文字が並ぶ。
わぁ、という歓声と共に拍手が響き
誕生日パーティーなる宴会が始まる。
「##NAME1##、ありがとな。」
「え?」
「お前がなんかやってるのは気づいてたよ。
でもまさか、こんなことだったとはな」
「...誕生日おめでとう、リン」
「ああ、ありがとう。」
リンは照れて目線を外したけど
口元は緩く、笑ってくれた。
「ふふーん?
始まったばっかりやのに
もう二人の世界入ってしもうてるみたいやで?」
「キノ!茶化したあかんやろう?」
「そんなこと言いながら
オトだってまじまじ見てるやんか」
「お前ら!うるさい!」
「キャーおリン怖い!ハハハ!」
甲姫がふざけていれる横やりも
こうして和やかな時の中に。
「さて、そろそろ出そうか。」
「おお!そのけぇきってやつか!?」
ハッチが誰よりも輝いた目で旦那を見る。
「そうだ。」
「僕も手伝うよ。」
セイジと旦那が台所へ行き、
二人でそのケーキを持ってきた。
「な、なんという...」
カクさんは退いて
「....思ってたより、大きいな...」
スケさんは驚き半分、好奇心半分
といった目で見つめる。
「うおおー!!すっげえ!
早く!早く食おうぜ!」
「陽太、落ち着け。 」
やはりハッチが一番興奮している。
ナナミさんもハッチを落ち着かせながら
ケーキから目を離せないようで
「ふ、素晴らしい」
ユキチさんはなんだか、満足そうに
「わあ!凄い!」
「甘い匂いがするねえ」
乙姫甲姫はキャッキャッと喜んでいる。
「お呼ばれして良かった!
こんな代物をいただけるなんて!」
ホウセンさんは今にも書き綴りたそうだ。
「これ...食べきれるのか」
「リンは食べたいだけ食べていいよ。」
しかし本当に大きい。
ウエディングケーキ並みだ。
旦那こんなのどうやって作ったんだろう...
聞くところによると、
ユキチさんのコネで材料を集め
デザインのアイデアを皆で出しあい、
後は旦那の腕...だそうだ。