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誕生日【荒銀淋】


「ただいまー!」

息を切らして帰ってきた。
外はもう夕暮れも終わり、
星が見えてきた頃だった。


「遅いぞ」

「リン!」


みよしのに戻ると
一番に近づいてきたのは
私を悩ませていた張本人だった。


「お前こんな時間まで何してたんだ?」


怪訝そうな目でこちらを見つめる。
答えを考えながら
走って乱れた前髪と息を整える。
しかし胸の音は鳴り止みそうにない。



「おう!やっと帰ってきたか双葉葵ちゃん」


「スケさん!」

「お帰りなさいませ、姫。
走ってこられたのですか?」

「うん、遅くなっちゃったから。
ごめんね。」


よく見るとみよしのの内装が
変わっている。
壁に丸まった巻物のようなものが
いくつか張り付けてある。


「おう!姫さん帰ってきたのか!」

「ハッチ!」

「おうおうお帰り。
菩薩殿、まあ座って酒でも....」

「諏訪!!お前と言う男は!
一日中酒を飲んでまだ足りないと言うのか!?」

「ああったく、悪かったよ。
おお怖い怖い。」



カクさんは、
おそらく今日一日酒を飲み
この内装準備や何やらを知らずに過ごした
七巳に腹をたてているんだろう。


「まあまあ、キカク。
ナナミに言うの忘れてた俺の責任だし
あんまり責めないでやってくれ。」


「はあ......しかし、そうだな。
せっかくの祝いの場だ。」

「...祝い?
というか、この状況はなんだ?
俺も何も聞かされてないぞケンスケ」



「まあそれは、
双葉葵ちゃんが言ってくれるんじゃないのか?」



そうしてみんなの視線が私に集まる
胸を押さえながら口を開いた

その瞬間


「おやおや?皆さんお揃いで?」

「ホウセン!?」

「おや?お邪魔でしたか?」


私の背後からやってきたホウセンさん。
いつもの笑顔で何ともなしにみよしのに入り、
椅子に腰掛ける。


「ふふ、そういえば聞きましたよ?
リンさんあなた...」
「ま、待てホウセン!!
お前が言うな!」


スケさんが目に見えないスピードで
ホウセンさんの背後に移動し
口を押さえる。


「双葉葵ちゃん!今だ!早くいえ!」

「......お前ら何を企んでやがる?」


怪しそうな目でみんなを見回し
私を見つめ返すリン。


「企んでなんか......企みになるのかな?

まあ何にしても!
リン、お誕生日おめでとう!」


「誕、生日?俺のか?」


はっきりわかっていないような表情で
私を見つめ返すリン。

「おや、帰ってきてたのかい」

「セイジ!」

「ああ、おかえり。
けぇきは一応準備できたぞ。」

「旦那も!」

「ふふ、
この楽しそうなぱあてぃに
私も参加していいかな?」

「ゆ、ユキチさん!?いつの間に!」


台所から出てきた三人。
旦那の頬に、
あと諭吉さんの頬にも
生クリームがついている。


「ふっ」

「「「ハハハハハ!」」」



誰かの吹き出した声に
みんな一斉に笑いだした。
楽しい時間。
リンもまた、
わからないと言いながら顔を赤くし
照れながら笑ってくれていた。


   
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