誕生日【荒銀淋】
「......で、ここって訳なの?」
「そうなの!
ここが一番身近だし、
今はリン、茂丹ちゃんとお散歩行ってるから」
スケさんが呼んでこようと立ち上がった時、
驚くほどタイミングよく
セイジもみよしのに立ち寄ったようで
事情を説明して
この異様な密談現場に同伴させた。
「で、ケーキの調達というか...
協力してほしいの!」
「自分もその...けぇきを
作れるなら作ろうと思うのだが...」
「ああ!なるほど。
じゃあつい最近できたお店で買ってこようか」
甘くて美味しいんだ!
と何とも愛らしい表情で笑うセイジ。
やっぱり軍人だからかな?
町のことは詳しいみたい。
「僕甘いものが好きでね♪」
....いや...個人的な趣味かな...
「じゃあ、それはセイジに任せよう。
セイジ、この話は外に漏らすなよ?」
「では、自分も付き添おう。
帰りに食材もできるだけ集めてみる。」
「おう、頼んだぜ。」
スケさんの一言で
セイジと旦那は足並み軽やかに台所を出た。
「で、双葉葵ちゃん?
けぇきって奴を食うだけじゃないんだろ?
その......誕生日ってやつを祝うのは」
「うん。
プレゼント...贈り物も考えなくちゃ...」
「贈り物ですか」
「ふうん?
.......ああだがこれは、
俺達が出る出番ではなさそうだなあ?」
「え?どうして?」
スケさんが台所の水場に
濡れないよう置いていた帽子を被った。
「だって贈り物だろう?
それは俺達で考えるより
双葉葵ちゃんが考えてやったほうが
リンも喜ぶだろうよ。」
「...なるほど。
残念ですがケンスケの言う通りですね。
今回はお役に立てそうにありません。」
「そっか...そうだね!」
ーーそうだよね、
リンの誕生日に贈りたいもの...!
「が!しかし!
誕生日祝いの場は
この鬼格がご準備致しましょう!」
すくっとカクさんは立ち上がり
「さあ!ケンスケお前もだ!」
「って、おい!キカク!
引っ張るなって!おい!....」
そのままスケさんを引っ張り台所から
出ていってしまった。