第四夜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーー痛みの原因......?
レイジさんの足音が近づいて
ゆっくり私の肩を持ち
壁に寄りかかるようにして座らされる。
肩を持ったままレイジさんは私を見つめ
優しく微笑んでから言った。
「貴女を本物のヴァンパイアにして差し上げたのですよ。」
「.........ヴァンパイア、に?」
「...クク、ハハハハ!」
それだけいうと私からまた離れて
珍しいほどに高く笑う。
手を顔に当てて笑いをこらえて
指の間から私を見つめる。
「貴女のその体は
たった今人間からヴァンパイアへと
変化している最中なのですよ。
身体中のいたるところに
激しい痛みと蠢く憎悪が宿ってくるはずです。
ふふ、もう少しすれば吸血衝動もね。」
ーーヴァンパイア...私が...?
驚いて目を点にする。が、
全て信じられない訳ではなかった。
昔は人間のいう
【ヴァンパイアに血を吸われた者は
ヴァンパイアになってしまう】
という噂も信じていたし、
だから覚醒の話だって
案外すんなりと飲み込めた。
でも実際なったからといって
外見が変わったわけでもない。
それに覚醒の話をしていた時、
まだ時間がかかるようなことを
言ってた気がしたのに...
「信じられないという顔ですね。
まあこれからいくらでも実感することでしょう。」
「......ヴァンパイアに...。」
「ええ。
拷問室で貴女がカナトに襲われかけていた時です。」
ーーあの時...?
あの時、やっぱり...!
左腕の包帯を見る。
包帯は少しだけ血が染みている。
固く結ばれたそれは未だほどけることなく
綺麗に巻かれていて
手当てしてくれた人の内面が見えるようだった。
ーーこれはやっぱりレイジさんが
私にしてくれた手当ての跡だったんだ。
じゃあ走馬灯かと思ったあのレイジさんは
本物...だったの?
一度緩んだ涙腺はなかなか締まりにくいもの。
涙はさっきより早く溢れるそれを素早く両手で拭って
レイジさんを真剣に見つめ
話を聞く意欲を見せる。
「カナトには退出して頂くのに苦労しました。
貴女が気が付いた時には、
血をたっぷり吸わせてやると言えば
おとなしく引いてくれましたがね。」
ーー......え?
「そうして廊下と拷問室の間で
不格好で惨めに倒れていた貴女はほぼ瀕死状態だった。
だから死ぬ間際、
私は貴女に、私の血を飲ませたのです。」
「レイジさんの血を!?」
「フン、急に元気になりましたね。」
スポンジを持っていない方の手で眼鏡を上げる。
無表情で感情の籠っていない瞳。
レイジ様さんはそれから一息ついて
革靴を鳴らし歩く。
タイルと靴がすれる音がキュッキュッと響いて
私はその音にさえ体を痛みに震わす。
シャワーを手に持ちでスポンジと手の泡を洗い直し
私の元までまた戻ってきた。