「香水...」


私は屋敷にくるまでは香水をいくつか持っていた。
しかし昔使っていたものは
もう生産されてないと言われて
香水選びに戸惑っていた。


ーーそういえば、
ヴァンパイアはニンニクが駄目って本当なのかな？
流石にニンニクみたいな匂いの香水はないだろうけど
他に苦手な匂いなんてあるのかな？


「お客様、迷われておりますか？」


美人なお姉さんが隣にやってくる。
店員さんだろう。
かすかに香る彼女の香水もまたいい香り。


「買い替えようと思ったんですけど
どの匂いがいいか...わかんなくて」

「そうですね、でしたらこちらなんか...」



こうしてショッピングするのも久々だ。
店員さんと話していて
以前の生活に戻ったような気になった。


「じゃあこれにします。」

「ありがとうございます。
少々お待ちくださいね。」

「はい」


結局私は決めかねて、
人気があると言われるものにした。
すべて匂いが悪いわけじゃない
ただ、ピンとくるものがなかった。

いつもならそんな時は
買わずに帰ってしまうけど
今日はそういうわけにもいかない。
それに、
レイジさんが嫌がる可能性は低くしたかった。

いくら隠し通したいからといって
好きな人の嫌いな香水なんて
一時もつけたくない。



「お待たせしました。
ありがとうございました。」



やはり仄かに香ってくる。
店員さんに聞いたら
今日は香水をつけてないと言っていたのに...
家でアロマでも焚いているのかな？


「でもなんでかな？
そういう匂いでもなかったなあ。」

「そういう匂いとは？」