彼の夕食
なんて、少しクサイことを言うと
「火、つけてたからじゃない?」
と現実的なのか、ロマンの欠如か。
待ってて、と言われた通り
リビングのこたつをつけて
小さく丸まり待つ私一人。
こたつに入らない背中が寒く、
彼がいるからと、
横にもなれないもどかしさに
余計時間が長く感じる。
テレビをつけても正月番組、
私の苦手な生放送のノリ。
ため息一つで消えるテレビに、写った彼。
「お待たせ。」
「…お雑煮?」
「そう、今年初めてだもんな
頑張ったよ。」
「じゃあ毎年頑張ってもらわなきゃね?」
受けとったお椀で温まる手の平。
お雑煮は年の始めに食べるもの、と
くすくす笑う私に彼は
「違うよ、今年が初めてだろ?」
「へ?」
「家族3人でお雑煮、な」
ふわっと胸に空気があがり
無償に苦しく、愛しく、嬉しく、
「…なんで?まだ言ってなかったのに」
涙が落ちるまで気づかなかった、
指にはまるダイヤが淡く光る。