彼の夕食
年の明け。
暖房も追いつかない、明け方に一つ明かりが灯る。
冬の朝日はまだ見える気配もなく息も白く消える。
静寂を静寂のままに、作業を進める一人。
かたかたことこと…静かに響く。
ふと目が覚めた。
視界は黒。
いや、扉からこぼれる光の筋が一つ。
白いような黄色いような、
淡くて消し忘れたような光。
むくと起き上がり、扉をあける…その前に、
耳に入った小さな音。
……誰?
家に人を入れた覚えはない。
酒も飲んでいなかったから、
私が酔い潰れて記憶がない可能性もない。
……泥棒?
思い付くと、体がぐっと縮まった。
胸に堪えるこの恐怖。
固まる体を何とか動かし、ようやく扉に手をかける。
そうっと、そうっと、隙間を作る。
黒から淡い光の中に視界が広がり、やはり少し眩しい。
かたかたことこと作業を進める一人。
香りが広がり少し心朗らかにした、その時だった。
「…春?」
「…あ、ああ葵。起こしちゃったか」
怪しい物音は愛しい人の作る料理だった。
「どうしたの?こんな時間に」
起きたての枯れた声で言ってみてから時計を見る。
辺りの暗さで推しはかっていたが正確な時間は知らなかった。
「いやあ、一応ね。
待ってて、もう出来る」
午前4時。真っ暗な冬の夜。
彼の立つ台所は暖房もついていないのに布団の中より暖かく感じた。
暖房も追いつかない、明け方に一つ明かりが灯る。
冬の朝日はまだ見える気配もなく息も白く消える。
静寂を静寂のままに、作業を進める一人。
かたかたことこと…静かに響く。
ふと目が覚めた。
視界は黒。
いや、扉からこぼれる光の筋が一つ。
白いような黄色いような、
淡くて消し忘れたような光。
むくと起き上がり、扉をあける…その前に、
耳に入った小さな音。
……誰?
家に人を入れた覚えはない。
酒も飲んでいなかったから、
私が酔い潰れて記憶がない可能性もない。
……泥棒?
思い付くと、体がぐっと縮まった。
胸に堪えるこの恐怖。
固まる体を何とか動かし、ようやく扉に手をかける。
そうっと、そうっと、隙間を作る。
黒から淡い光の中に視界が広がり、やはり少し眩しい。
かたかたことこと作業を進める一人。
香りが広がり少し心朗らかにした、その時だった。
「…春?」
「…あ、ああ葵。起こしちゃったか」
怪しい物音は愛しい人の作る料理だった。
「どうしたの?こんな時間に」
起きたての枯れた声で言ってみてから時計を見る。
辺りの暗さで推しはかっていたが正確な時間は知らなかった。
「いやあ、一応ね。
待ってて、もう出来る」
午前4時。真っ暗な冬の夜。
彼の立つ台所は暖房もついていないのに布団の中より暖かく感じた。
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