第6話
夢小説設定
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咄嗟に止めようとしたが、相手の方が速かった。
最後まで言うこともできない。
突き出したスカーの掌が憲兵の顔を覆った瞬間、身体の内側から血が噴き出し、どさりと倒れた。
返り血が頬へと飛び、スカーは指の関節を鳴らす。
(…なんなんだ、こいつは)
殺気を放って近づく、それが自身に向けられているものだとエドは気づくが、銃を抜いた憲兵がいとも容易く一瞬のうちに殺されるのを目にして、完全に足がすくんでしまった。
(やばい!やばい!!やばい!!!)
エドが呆然としている間に起こった、一瞬の出来事だった。
行き交う人々の視界の端で、スカーに倒された憲兵の血塗れ死体に、
「何だ」
「うわあ」
一斉に悲鳴をあげて後ずさる。
――殺される。
そんな恐怖で思考が埋め尽されていく中、一歩も動けないでいた。
(身体の芯が「逃げろ」って悲鳴をあげてんのに、足が動かねぇ…!!)
身体が、重く冷たくなる。
一瞬の間に、自分が死ぬかもしれない。
今まさに、相手はそうしようとしている。
そんな、拒んでいた理解と実感が、どんどん心に染み込んでくる。
(ダメだ……死ぬ!!)
その時、時計塔の針が9時を差し、鳴り響く鐘で身体の震えが解けたようにハッとする。
「……っ、アル!!逃げろ!!」
エドは切羽詰まった声でアルと共に、一目散に逃げ出す。
「…逃がさん!」
その鋭い目つきで二人を捉え、スカーも後を追う。
兄弟は逃げる。
ひたすら逃げる。
その後ろ姿を、スカーは執拗に追いすがる。
「ちくしょー、なんだってんだ!人にうらみ買うような事は……………いっぱいしてるけど…命狙われるスジあいはねーぞ!!」
果てのない逃走の途中、アルが路地裏の奥へと手招きする。
「兄さん、こっち!」
「こんな路地に入って、どーすんだよ!?」
「いいから!」
地面にしゃがみ込むと、取り出したチョークで素早く錬成陣を描き上げる。
錬金術が発動し、分厚く高い壁が錬成される。
「これなら、追って来れないだろ」
「おお!」
一安心したのも束の間、壁に亀裂が入り、スカーが掌を突き出した姿勢のまま、いとも簡単に突破した。
エドは顔を真っ青にさせて、アルは愕然とする。
破片が崩れ落ち、スカーはサングラスの奥の瞳で兄弟を睨む。
「でええええ!!!」
一歩身を引き、再び逃げ出す。
「………」
すると、スカーは壁に手を触れた。
その瞬間、壁の表面に亀裂が入り、細かい破片を撒き散らしながら、水の中の魚のような素早さで延びていった。
それは逃げる二人に追いつき、周りの壁が紙のように剥がれ飛び、進行方向を防ぐ。
「…冗談だろ…?」
逃げ道は、もはやなくなった。
(まだ、死ぬわけにはいかない!)
果たすべき使命があり、またそれ以外がある。
例え相手が、完全に殺す気構えで迫ってきたとしても、絶対に、断じて、死ぬわけにはいかなかった。
とはいえ、今の状態でできることは、絶望的に少ない。
(でも、やるしかない)
「あんた、何者だ。なんでオレたちをねらう?」
本来は得意ではない、会話での駆け引きを行うべく、エドは口を開く。
ここだけで、既に博打だった。
ここで駄目なら全て駄目、という最も大きな、丁半の博打。
答えをくれるか、くれないか。
「貴様ら『創る者』がいれば『壊す者』もいるという事だ」
スカーは、まず答えた。
「………」
エドは両手を合わせると、壁を伝うパイプを掴む。
「やるしかねえ……ってか」
パイプはナイフへと錬成され、アルも構えを取り、戦闘体勢へと入る。
「いい度胸だ…」
「いくぞ!!」
拳を握り固めて地を蹴り、兄弟は攻撃を仕掛ける。
「「せいっ」」
その疾風のような踏み込みの中、殴りかかる拳打を、スカーはあっさりとかわした。
見栄えよくギリギリでかわすのではなく、危なげなく余裕をもってかわす。
「だが、遅い!」
まず、右手で鎧の銅部分を、大きく抉るように破壊した。
「……!!」
崩れた体を視界に流して、違和感を覚える。
(む…?)
「アル!!!」
破壊されたアルの体がエドの脇を抜け、受け身も取れずに崩れ落ちる。
「…野郎ォォォォォォォォ」
怒声を喉の奥から吼 え、がむしゃらに突進するが、ナイフを持った右手を掴み取られてしまった。
「遅いと言っている!」
スカーが再び力を込めると、バチィン、と音を立てて弾かれる。
「……?」
「でっ!!」
スカーはまたも疑問符を浮かべ、エドは弾かれたように倒れた。
「…っくそ!!」
立ち上がったエドは荒い息をつきながらコートを脱ぎ捨て、手袋を外す。
少年の右腕が鋼の義肢――機械鎧だと知って、スカーは納得する。
「機械鎧 …なるほど"人体破壊"では壊せぬはずだ。あっちはあっちで、鎧をはがしてから中身を破壊してやろうと思ったが、肝心の中身が無い」
冷静に見つめる先で、両手を合わせたエドは機械鎧の一部を刃へ錬成する。
「変わった奴らよ…おかげで、余計な時間をくってしまったではないか」
「てめえの予定につきあってやる程、お人好しじゃないんだよ!」
鎧の体を破壊され、動くことさえできないアルはせめて、兄だけでも逃げてくれと訴える。
「兄さん、ダメだ、逃げた方が…」
「馬鹿野郎!!おまえ置いて、逃げられっか!!」
アルの警告も聞かず、エドは一喝する。
「ふむ…両の手を合わせる事で輪を作り、循環させた力をもって錬成する訳か。ならば」
そんなの葛藤も露知らず、スカーは錬成陣も描かずに発動してみせたエドの錬金術を見破った。
その時、エドが刃を錬成した右腕を振るう。
「ッらあああああああ」
両者は交差し、刃はスカーの頬を掠っただけで逆に腕を捕まえられる。
「まずはこの、うっとうしい右腕を、破壊させてもらう」
その宣言と同時に、右腕の機械鎧は粉々に破壊された。
最後まで言うこともできない。
突き出したスカーの掌が憲兵の顔を覆った瞬間、身体の内側から血が噴き出し、どさりと倒れた。
返り血が頬へと飛び、スカーは指の関節を鳴らす。
(…なんなんだ、こいつは)
殺気を放って近づく、それが自身に向けられているものだとエドは気づくが、銃を抜いた憲兵がいとも容易く一瞬のうちに殺されるのを目にして、完全に足がすくんでしまった。
(やばい!やばい!!やばい!!!)
エドが呆然としている間に起こった、一瞬の出来事だった。
行き交う人々の視界の端で、スカーに倒された憲兵の血塗れ死体に、
「何だ」
「うわあ」
一斉に悲鳴をあげて後ずさる。
――殺される。
そんな恐怖で思考が埋め尽されていく中、一歩も動けないでいた。
(身体の芯が「逃げろ」って悲鳴をあげてんのに、足が動かねぇ…!!)
身体が、重く冷たくなる。
一瞬の間に、自分が死ぬかもしれない。
今まさに、相手はそうしようとしている。
そんな、拒んでいた理解と実感が、どんどん心に染み込んでくる。
(ダメだ……死ぬ!!)
その時、時計塔の針が9時を差し、鳴り響く鐘で身体の震えが解けたようにハッとする。
「……っ、アル!!逃げろ!!」
エドは切羽詰まった声でアルと共に、一目散に逃げ出す。
「…逃がさん!」
その鋭い目つきで二人を捉え、スカーも後を追う。
兄弟は逃げる。
ひたすら逃げる。
その後ろ姿を、スカーは執拗に追いすがる。
「ちくしょー、なんだってんだ!人にうらみ買うような事は……………いっぱいしてるけど…命狙われるスジあいはねーぞ!!」
果てのない逃走の途中、アルが路地裏の奥へと手招きする。
「兄さん、こっち!」
「こんな路地に入って、どーすんだよ!?」
「いいから!」
地面にしゃがみ込むと、取り出したチョークで素早く錬成陣を描き上げる。
錬金術が発動し、分厚く高い壁が錬成される。
「これなら、追って来れないだろ」
「おお!」
一安心したのも束の間、壁に亀裂が入り、スカーが掌を突き出した姿勢のまま、いとも簡単に突破した。
エドは顔を真っ青にさせて、アルは愕然とする。
破片が崩れ落ち、スカーはサングラスの奥の瞳で兄弟を睨む。
「でええええ!!!」
一歩身を引き、再び逃げ出す。
「………」
すると、スカーは壁に手を触れた。
その瞬間、壁の表面に亀裂が入り、細かい破片を撒き散らしながら、水の中の魚のような素早さで延びていった。
それは逃げる二人に追いつき、周りの壁が紙のように剥がれ飛び、進行方向を防ぐ。
「…冗談だろ…?」
逃げ道は、もはやなくなった。
(まだ、死ぬわけにはいかない!)
果たすべき使命があり、またそれ以外がある。
例え相手が、完全に殺す気構えで迫ってきたとしても、絶対に、断じて、死ぬわけにはいかなかった。
とはいえ、今の状態でできることは、絶望的に少ない。
(でも、やるしかない)
「あんた、何者だ。なんでオレたちをねらう?」
本来は得意ではない、会話での駆け引きを行うべく、エドは口を開く。
ここだけで、既に博打だった。
ここで駄目なら全て駄目、という最も大きな、丁半の博打。
答えをくれるか、くれないか。
「貴様ら『創る者』がいれば『壊す者』もいるという事だ」
スカーは、まず答えた。
「………」
エドは両手を合わせると、壁を伝うパイプを掴む。
「やるしかねえ……ってか」
パイプはナイフへと錬成され、アルも構えを取り、戦闘体勢へと入る。
「いい度胸だ…」
「いくぞ!!」
拳を握り固めて地を蹴り、兄弟は攻撃を仕掛ける。
「「せいっ」」
その疾風のような踏み込みの中、殴りかかる拳打を、スカーはあっさりとかわした。
見栄えよくギリギリでかわすのではなく、危なげなく余裕をもってかわす。
「だが、遅い!」
まず、右手で鎧の銅部分を、大きく抉るように破壊した。
「……!!」
崩れた体を視界に流して、違和感を覚える。
(む…?)
「アル!!!」
破壊されたアルの体がエドの脇を抜け、受け身も取れずに崩れ落ちる。
「…野郎ォォォォォォォォ」
怒声を喉の奥から
「遅いと言っている!」
スカーが再び力を込めると、バチィン、と音を立てて弾かれる。
「……?」
「でっ!!」
スカーはまたも疑問符を浮かべ、エドは弾かれたように倒れた。
「…っくそ!!」
立ち上がったエドは荒い息をつきながらコートを脱ぎ捨て、手袋を外す。
少年の右腕が鋼の義肢――機械鎧だと知って、スカーは納得する。
「
冷静に見つめる先で、両手を合わせたエドは機械鎧の一部を刃へ錬成する。
「変わった奴らよ…おかげで、余計な時間をくってしまったではないか」
「てめえの予定につきあってやる程、お人好しじゃないんだよ!」
鎧の体を破壊され、動くことさえできないアルはせめて、兄だけでも逃げてくれと訴える。
「兄さん、ダメだ、逃げた方が…」
「馬鹿野郎!!おまえ置いて、逃げられっか!!」
アルの警告も聞かず、エドは一喝する。
「ふむ…両の手を合わせる事で輪を作り、循環させた力をもって錬成する訳か。ならば」
そんなの葛藤も露知らず、スカーは錬成陣も描かずに発動してみせたエドの錬金術を見破った。
その時、エドが刃を錬成した右腕を振るう。
「ッらあああああああ」
両者は交差し、刃はスカーの頬を掠っただけで逆に腕を捕まえられる。
「まずはこの、うっとうしい右腕を、破壊させてもらう」
その宣言と同時に、右腕の機械鎧は粉々に破壊された。