第2章 或る月夜の出逢い
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「はぁ、はぁ………っ」
その少女、エステラは森の最奥で立ち止まり、急く心臓を押さえた。
「これで、大丈夫かな………。」
その視線の先に、円状に石を連ねたのみの簡素な墓がある。
母が永眠る場所だ。
「お母様………。」
その唇に笑みをのせる。墓石を透かして、母をみつめるように。
円の中心にアイリスの花冠を手向けて、両の指を組み合わせる。
「こんな暗い場所にしかお墓を作れなくてごめんなさい。
私が『幻惑姫』と呼ばれている間は………。」
さぁ……と吹き抜ける風が 花弁を、彼女の言葉をさらう。
頬を撫でるその風が母の言葉を運んできた———気がした。
「わかっています、お母様。私がどんなに私自身を責めても、
お母様は帰ってこないことくらい、わかっているの………。」
苔の生えかえた墓石を撫で、その唇を震わせる。
エステラはその場にしゃがみ込んだ。
ぽた、………ぽた、と墓石に雫が落ちる。
(お父様、………どうして、)
………疲れた。
母と自分を見捨てた父を恨み、あの過ちに怯え、苛まれる日々に疲れ果てた。
瞼をとじればあの日の言葉が甦ってくる。
『お前のような幻惑姫など私の娘ではない。即刻、この屋敷から出ていけ』
溢れる雫をそのままに、ただ肩を震わせていると。
ふいに色彩の美しいものが視界の裾に映り、彼女はおもてを上げた。
それは、薔薇の花弁だった。深紅の花弁を戸惑った瞳でみつめる。
(どうして……?
この森ではアイリスしか自生しない筈なのに………。)
はらり、………はらり。
繰り返し降り積もる花弁の軌跡を辿り、そして気づく。
「!」
白樺の木の幹に腰かけて、彼女の頭上で花を降らせているふたりの少年の姿を。
一人は癖のなくまっすぐな黒髪に白のリボンを編み込んでおり、
もう一人はやや癖のある、軽やかにウェーブを纏った金髪を襟足にかかる程度に伸ばしている。
その瞳は紅。知性と感情の炎を宿した、深いふかい色彩。
その聡明なひかりを湛えた瞳に胸の奥が痺れた気がした。
その少女、エステラは森の最奥で立ち止まり、急く心臓を押さえた。
「これで、大丈夫かな………。」
その視線の先に、円状に石を連ねたのみの簡素な墓がある。
母が永眠る場所だ。
「お母様………。」
その唇に笑みをのせる。墓石を透かして、母をみつめるように。
円の中心にアイリスの花冠を手向けて、両の指を組み合わせる。
「こんな暗い場所にしかお墓を作れなくてごめんなさい。
私が『幻惑姫』と呼ばれている間は………。」
さぁ……と吹き抜ける風が 花弁を、彼女の言葉をさらう。
頬を撫でるその風が母の言葉を運んできた———気がした。
「わかっています、お母様。私がどんなに私自身を責めても、
お母様は帰ってこないことくらい、わかっているの………。」
苔の生えかえた墓石を撫で、その唇を震わせる。
エステラはその場にしゃがみ込んだ。
ぽた、………ぽた、と墓石に雫が落ちる。
(お父様、………どうして、)
………疲れた。
母と自分を見捨てた父を恨み、あの過ちに怯え、苛まれる日々に疲れ果てた。
瞼をとじればあの日の言葉が甦ってくる。
『お前のような幻惑姫など私の娘ではない。即刻、この屋敷から出ていけ』
溢れる雫をそのままに、ただ肩を震わせていると。
ふいに色彩の美しいものが視界の裾に映り、彼女はおもてを上げた。
それは、薔薇の花弁だった。深紅の花弁を戸惑った瞳でみつめる。
(どうして……?
この森ではアイリスしか自生しない筈なのに………。)
はらり、………はらり。
繰り返し降り積もる花弁の軌跡を辿り、そして気づく。
「!」
白樺の木の幹に腰かけて、彼女の頭上で花を降らせているふたりの少年の姿を。
一人は癖のなくまっすぐな黒髪に白のリボンを編み込んでおり、
もう一人はやや癖のある、軽やかにウェーブを纏った金髪を襟足にかかる程度に伸ばしている。
その瞳は紅。知性と感情の炎を宿した、深いふかい色彩。
その聡明なひかりを湛えた瞳に胸の奥が痺れた気がした。
