第1章 はじまりの夜
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「あぁ、母上もきっとお喜びになられるよ」
絶えず手折りながら弟を見上げると、フィルガは目を輝かせた。
銀の髪の狭間で、自分とそっくりな紅の瞳が希望のひかりに煌めく。
そのさまは本気で一族の者を蝕むのろいが解けると信じているようだった。
遅れて籠を花で埋めつくしたヴァレオは服についた砂を払い立ち上がる。
「さぁ、そろそろ帰ろう。父上が心配なさる前に」
「はい、兄さん!」
素直に頷く弟をみていると、僅かに胸が軋む。
(まだのろいが解けると決まった訳じゃないない。
それでもおまえは信じているのだな)
その痛みを押していると、コツ、コツ……と密やかに長靴の打ち鳴らす音をとらえる。
(なんだ……?)
不思議に思って視線をさ迷わせると、
ランタンを手にした少女が足早にどこかへ向かうところだった。
「なぜ、この森にあんな子が……?」
フィルガも疑問を口にする。すると、足を止めた彼女がつと振り返った。
刹那、その瞳と視線が交わる。
繊細なレースに彩られた白のシンプルなドレスに、
細い紐で編み上げた黒のビスチェを合わせている。
クセのなくまっすぐな薄藤色 の髪は腰に届くほど長く美しく、
その瞳は星の煌めきを閉じ込めたような菫色。
唇は瑞々しく紅い血汐を透かした水紅水紅 色だが、
鼻は小さく頤は華奢、
小さくたおやかな手足はたやすく手折れてしまいそうなほど細かった。
「…………。」
「……………………。」
言葉もなくしばし見交わす瞳。
その穢れのない瞳に見惚れていると、
そのうちに彼女はこちらが生きた人間だと気づいたのだろう。
怯えたようにおもてを強張らせ、森の奥へと駆けていった。
「待ってくれ……!」
その後ろ背に叫ぶ。けれど彼女は振り向かず、
黒曜に染まる木々の狭間を縫うように往ってしまう。
「追いかけよう、兄さん……!」
そう言って兄を見上げる弟に頷く。
愛らしい容貌のなかに、たしかに存在する苦悩と悲しみ……。
その理を知りたい。………その痛みを分かちたい。
そんな思考にのみ突き動かされていた。
絶えず手折りながら弟を見上げると、フィルガは目を輝かせた。
銀の髪の狭間で、自分とそっくりな紅の瞳が希望のひかりに煌めく。
そのさまは本気で一族の者を蝕むのろいが解けると信じているようだった。
遅れて籠を花で埋めつくしたヴァレオは服についた砂を払い立ち上がる。
「さぁ、そろそろ帰ろう。父上が心配なさる前に」
「はい、兄さん!」
素直に頷く弟をみていると、僅かに胸が軋む。
(まだのろいが解けると決まった訳じゃないない。
それでもおまえは信じているのだな)
その痛みを押していると、コツ、コツ……と密やかに長靴の打ち鳴らす音をとらえる。
(なんだ……?)
不思議に思って視線をさ迷わせると、
ランタンを手にした少女が足早にどこかへ向かうところだった。
「なぜ、この森にあんな子が……?」
フィルガも疑問を口にする。すると、足を止めた彼女がつと振り返った。
刹那、その瞳と視線が交わる。
繊細なレースに彩られた白のシンプルなドレスに、
細い紐で編み上げた黒のビスチェを合わせている。
クセのなくまっすぐな
その瞳は星の煌めきを閉じ込めたような菫色。
唇は瑞々しく紅い血汐を透かした水紅
鼻は小さく頤は華奢、
小さくたおやかな手足はたやすく手折れてしまいそうなほど細かった。
「…………。」
「……………………。」
言葉もなくしばし見交わす瞳。
その穢れのない瞳に見惚れていると、
そのうちに彼女はこちらが生きた人間だと気づいたのだろう。
怯えたようにおもてを強張らせ、森の奥へと駆けていった。
「待ってくれ……!」
その後ろ背に叫ぶ。けれど彼女は振り向かず、
黒曜に染まる木々の狭間を縫うように往ってしまう。
「追いかけよう、兄さん……!」
そう言って兄を見上げる弟に頷く。
愛らしい容貌のなかに、たしかに存在する苦悩と悲しみ……。
その理を知りたい。………その痛みを分かちたい。
そんな思考にのみ突き動かされていた。