第3章 迎えに来た麗人
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「先代様のお気入りでさえなければ、今頃貴女を追い出しているのに」
彼女は唇を噛んだ。
母の亡き後、唯一彼女の味方でいてくれているのは祖父である前フローハイム商会社長のラルフだけだからだ。
ともに母を看取って数日後、エステラの実兄クラウスもまた、この青の箱庭を出ていってしまった。
『行かないで、兄様。一人にしないで』
当時まだ幼かったエステラは、泣いて兄を引き留めようとした。
けれどクラウスは妹の言葉を聞き入れなかっただけでなく、そのまま行方を眩ませのだった。
「エステラ様、貴女宛にお手紙が届いております」
何も言い返さないエステラを興ざめと感じたのか、
ネルはつまらなそうに目を眇めたまま、銀のトレイに乗せた封筒を差し出した。
「……ありがとう」
そっと受け取り、そして差出人の名前を見て心臓が軋んだ音を立てる。
(お父様……?)
トレイの上に手紙と一緒に乗せられていたペーパーナイフで封を切り、恐る恐る広げてみると。
『二週間後の夜、青の箱庭で夜会を開くこととなった。
私は反対したのだが、ルゼラかどうしてもお姉様の青の箱庭で開きたいと言うのでな。
言うまでもないことだが、夜会当日はお前は自分の部屋から出ないように。
お前のような幻惑姫には一生縁のない華やかな世界を見せてやる私に精々感謝するといい。
もし私の命令に背いたら、お前を青の箱庭から追い出すからそのつもりでいるように』
くしゃ、とその手紙を握りしめてしまっていると、その所作を見咎めたネルが手元をのぞき込んだ。
「エステラ様?」
ずいと彼女の手を引っ張って、自分が読みやすいように突き出させる。
読み進め、そばかすの散ったおもてに喜色が滲む。
くすくすと嗤いながらエステラを見やるネルに、俯いて唇を噛んだ時。
彼女は唇を噛んだ。
母の亡き後、唯一彼女の味方でいてくれているのは祖父である前フローハイム商会社長のラルフだけだからだ。
ともに母を看取って数日後、エステラの実兄クラウスもまた、この青の箱庭を出ていってしまった。
『行かないで、兄様。一人にしないで』
当時まだ幼かったエステラは、泣いて兄を引き留めようとした。
けれどクラウスは妹の言葉を聞き入れなかっただけでなく、そのまま行方を眩ませのだった。
「エステラ様、貴女宛にお手紙が届いております」
何も言い返さないエステラを興ざめと感じたのか、
ネルはつまらなそうに目を眇めたまま、銀のトレイに乗せた封筒を差し出した。
「……ありがとう」
そっと受け取り、そして差出人の名前を見て心臓が軋んだ音を立てる。
(お父様……?)
トレイの上に手紙と一緒に乗せられていたペーパーナイフで封を切り、恐る恐る広げてみると。
『二週間後の夜、青の箱庭で夜会を開くこととなった。
私は反対したのだが、ルゼラかどうしてもお姉様の青の箱庭で開きたいと言うのでな。
言うまでもないことだが、夜会当日はお前は自分の部屋から出ないように。
お前のような幻惑姫には一生縁のない華やかな世界を見せてやる私に精々感謝するといい。
もし私の命令に背いたら、お前を青の箱庭から追い出すからそのつもりでいるように』
くしゃ、とその手紙を握りしめてしまっていると、その所作を見咎めたネルが手元をのぞき込んだ。
「エステラ様?」
ずいと彼女の手を引っ張って、自分が読みやすいように突き出させる。
読み進め、そばかすの散ったおもてに喜色が滲む。
くすくすと嗤いながらエステラを見やるネルに、俯いて唇を噛んだ時。
