首都(ロンドン)から少し離れ、霧けぶる森を抜けると手入れの行き届いた屋敷(ﾏﾅｰﾊｳｽ)があらわれる



その屋敷に住まう名門貴族ファントムハイブ家当主の朝は


一杯の紅茶(ｱｰﾘｰﾓｰﾆﾝｸﾞﾃｨｰ)から始まる





「坊ちゃん、お目覚めの時間ですよ

本日の朝食はポーチドサーモンとミントサラダをご用意致しました
付け合わせはスコーンとカンパーニュが焼けておりますがどれになさいますか？」

「…スコーン」

屋敷の一角の部屋で会話が行われていた

一人は黒髪に執事服を着た長身の男

もう一人はベッドに寝ていたネグリジェ姿の蒼髪の少年

「この香り…　今日はセイロンか」

「ええ。本日はロイヤル・ドルトンのものを
ティーセットはウェッジウッドの蒼白(ﾌﾞﾙｰﾎﾜｲﾄ)でご用意致しました」

少年の着替えを手伝いながら言う

「そうか…

そういえば霧雲はどうした」

「霧雲様ならまだ寝室で寝ておられます」

「？　昨日なんかあったのか？いつもならもう起きてるはずだろ」

「仕事のようですよ」

「……無茶しないといいんだがな」

「そうですね…」



二人の話の中に出てきた霧雲という者
それはこの少年の家に居候している少女のことだった

霧雲という少女は数ヶ月前にボンゴレファミリーというマフィアから一時期預かるということでこの屋敷にいる

ボンゴレファミリーはマフィア界、イタリア、否、ヨーロッパ全体で有名なファミリーだ
爵位を持っていれば絶対といってもいいほど公爵の地位に入る
そんなところからきた霧雲を断ることなどできるわけがない
そんなことでファントムハイブ家に居候している

しかしマフィアなだけに仕事はある
書類処理や他ファミリーとの貿易、時には





　　　　　殺し





マフィアの仕事は年齢は関係ない
(いや、マフィアだけではないが)

そんなわけで霧雲もファミリーの仕事をしていた

昨夜も仕事をしていたため、寝るのが遅くなって、まだ起きれなかったのだろう





「そうだ、今日の予定は？」

「本日は朝食後、帝王学の権威ユーグ教授がお見えです

そしてご昼食後は―――」