86話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先生が持ってきた紙にお父さんが保護者のサインを書き、皆して席を立とうとしていたので慌てて止める。
「何だ?」
『あの、寮に入る前に少々…2箇所程、遠出をしたいんです。
いい…ですか?』
「お前なあ、自分の立場分かってんのか?
オール・フォー・ワンの事でソレ(妖怪ウォッチ)が世間に露見したんだぞ。また"敵"が来るかもしれねぇのに…。認められない。寮入りまで家で大人しくしてろ。」
「大人しくしてろと言われてもですね~…。
相手さんが大人しくしてない処かココ数時間で騒がしくなってきてるんですよ…。」
『でも…、』
言い返そうとしたら後方で着信音が鳴った。廊下から聞こえるソレは私の携帯電話の音で…。
「ぎゃああぁああ!何でここにあるの!?」
「怖いニャン!
オシッコチビるかと思ったニャン!!」
二階の自室に置いてきたはずの携帯電話が居間の扉前に置いてあった。
放置するわけにもいかず電話に出る。朝と同じ内容だった。
勝手に切れた携帯電話をテーブルに置いて溜め息をつく。
『会いたいって言ってくれるのは嬉しいんですけど、行けない理由を話す前に電話切られちゃうんです。
こっちからは電話送れないのに…。』
「は?」
相澤先生の眉が歪む。口を開こうとしたらまた着信音が鳴った。
『あれ?私のじゃないな。』
「……。」
相澤先生は無言でポケットから携帯電話を取り出した。
「(マナーモードにしといたんだが…)スミマセン。すぐ切ります。」
「いや、出ても出なくても変わらないだろうね。」
お父さんの言葉に首を傾げる。問う前に相澤先生の携帯電話が鳴り止み、通話状態になっていた。相澤先生は不審に思いながらも電話を耳に当てる。
約一分後。顔を青くさせた相澤先生は耳元から電話を離して私に質問してきた。
「妖見に会いたいって電話掛けてた奴の名前は?」
『?
えんえん少女です。』
「人間、じゃないのか…?」
『幽霊ですよ。とっても力の強い女の子です。』
だいたいの身長を手で示す。出会った当初は私とあまり変わらない身長だったが、今では私の胸くらいだろうか。
『えんえん少女がどうしましたか?電話、急用だったんじゃないんですか?』
相澤先生は私の質問には答えず大きく溜め息を吐いた。
「えんえん少女…の家は遠いのか。」
『会うのはいつも家じゃなくておっきな池みたいな所です。ここから電車で2~3時間くらいするケマモト村にありますよ。と、言っても電車じゃなくてベランダからうんがい鏡なのですぐ着きます!』
「(うんがい鏡…?)……色々言いたい事はあるが…、今そのえんえん少女から電話が来た。余り聞き取れなかったが妖見を行かさないとえんえんと電話をかけ続けると言ってな……。」
口端をひくつかせて、ふざけるなと顔に書いてあった。お父さんとオールマイトは同情の眼差しを送る。
「えんえん少女が相澤先生の電話までジャックを!?というか話聞いてる!?
どこまで怖い事する気ですか!?」
『う、う~ん…。』
「えんえん少女ならそのうち家まで来そう。
それこそ、"私メリーさん。今アナタの後ろにいるの。"的な感じで。」
フゥ2が冗談を言っていると、また着信音が鳴って催促の電話が来る。
寂しがっているだけの女の子だったはずなんだけどな…。
「明後日だ。明後日に俺が同伴して行かせてやるからこの電話止めさせろ…。」
携帯を渡されて電話に出ると台詞のようにまたまた同じ言葉が繰り返させる。言葉を被さる形で明後日に行くと告げると、数秒沈黙が続いた後に「楽しみにしてる。」と言って通話が切れた。
「……どうだった?」
『多分もう電話来ませんよ。』
今までと違う終わり方だったのでもう大丈夫だろう。
相澤先生のホッとした顔を見てレアな表情だなーなんて呑気に考えた。
今度こそと家を出る先生達を玄関まで見送る。
「失礼しました。寮入りが決まりましたらまた連絡します。」
『先生達も来てくれてありがとうございました!
あ、そういえばかっちゃんはあの後怪我とかなかったですか?』
かっちゃんとは自宅待機となってから連絡を取り合っていない。かっちゃんが全く返してくれないからだ。
「ああ。爆豪にはなんら異常もない。此処に来る前に訪問したが元気そうだったよ。」
オールマイトが深刻な顔をして訊ねてくる。
「一つ聞きたいのだが、合宿の"敵"襲撃の後から爆豪少年を救出に行くまでに緑谷少年に会わなかったかい?」
『いっくんに?いいえ。
病院で起きてすぐに妖怪ウォッチ奪還の為の作戦をして病院を抜けたので、その間誰にも会ってません。』
「そうか。いや、会ってないのならいいんだ。」
『いっくんがどうかしました?もしかして怪我が酷かったとか…、』
「怪我は治ったよ。妖見少女が心配することは何もない。」
オールマイトはお邪魔しました。とそそくさと家から出て行ってしまった。
不思議に思ってると、相澤先生が後に判ると告げて出ていった。
R02.04.16