82話
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目を覚まして見覚えのある光景にまたか…とぼんやり考えてたが、意識がなくなる前のことを思い出して飛び起きた。
「霊和ちゃんおはよう。
起きてすぐで悪いけど一刻を争うんだ。落ち着いて聞いてね。」
6畳程の個室に数十もの友達が集まっていた。
フゥ2の隣にはフユニャンがいて、サキちゃんやふぶき姫、コマさんコマじろう、キュウビ、妖怪ガッツK、窓の外にも沢山の妖怪が覗いている。
心配する声や安堵する声、疲れやため息をついている音、それぞれの音が騒音となっている。
フゥ2が捲し立てるように話し始めると全員が無言になった。
「勝己とジバニャンが"敵"に誘拐された。それに妖怪ウォッチCと霊和ちゃんのポケットの中にあったメダルも全部盗まれたんだ。」
『かっちゃんとジバニャンが…!?』
狙われていたがまさか連れ去られていたなんて思いもしなかった。しかもジバニャンまで…。
唖然としながらも無意識に左手首を掴んでいて、そこにいつもある物まで無くて消失感が心を渦巻く。
ジバニャンはかっちゃんに引っ付いていたらしく、そのまま一緒に連れ去られたらしい。
「ジバニャン達も心配だけど、妖怪ウォッチCとメダルを取られたことも問題だ。」
今まで妖怪ウォッチの事はお母さん、お父さん、いっくん、かっちゃん、そして今のクラスメイトにしかどういうものか説明していない。
それほど内密されているものが盗まれたんだ。
「勝己はヒーローが助けてくれるとして、妖怪ウォッチCとメダルとジバニャンを助けてくれるヒーローはいない。
だから俺達(妖怪)だけで取り返そうと思っていろいろ動いてたんだ。
相澤先生と一緒にいるオロチから情報を貰ってね、ヒーロー側が"敵"のアジトを見つけたって言うんだ。」
『相澤先生!
相澤先生と洸汰くんはどうなったの!?ウィスパーもいない!』
「皆無事だよ。
ウィスパーは今オールマイトと一緒にいるはず。
霊和ちゃんが一人になっちゃったのはね…、」
フゥ2は言葉を一度切り窓に近付くと、いい加減出てきなよ。と誰かに声を掛ける。
一時の間の後、何かがニュルっと病室に入って来た。
茶色ベースの横縞模様の角の丸い三角形みたいな身体に、足はなくがっしりした腕だけがある。頭は髪の毛なのか緑色になっている。
「コレが"だいだらぼっち"。」
『だいだらぼっちって伝承もある…てことは古典妖怪だね。』
だいだらぼっちは山や湖沼を作った神様とも言われる妖怪で、山程の大きさもある巨人と云われている。
実際のだいだらぼっちは私よりも小さく人の形もしてない。この形は多分山と同じだ。
「このだいだらぼっちは合宿のあった山の一つに住んでいて、"敵"の奇襲で火だるまになっちゃったんだって。
火を消そうとしてたら間違って能力使ってたみたいで、霊和ちゃんみたいにはぐれた子が何人かいたよ。」
だいだらぼっちは地形を変えて迷わせる力、所謂神隠しをさせるそうで、私1人が宿場から離れてしまったのはその所為だったとか。
他にも常闇くんや青山くん、三奈ちゃんにB組の人も何人かはぐれたみたいだ。
「ごめんなさい~。
あそこにボクがいなければ~、君がやられることも~妖怪ウォッチが盗まれることも~なかったんだ~!」
『ううん。
どっちにしても逃げられなかったと思う。』
"敵"は強かった。
身体のあちこちが火傷をして切り傷も出来て痛かった。身体じゅうが火を吹いてるみたいに熱かった。
昼間の回復行為で疲労は溜まり、それとは逆になくなる妖力が眠気を誘ってた。
痛くても眠くても逃げることに必死でドーパミンがドバドバ出てたからなんとか動けてたけど、少しでも気を抜けばもっと早くに意識を失ってただろう。
だいだらぼっちはお詫びにと、いつでも喚んでほしいとメダルをくれた。
そしてフゥ2は話を戻し、オロチから情報を聞き付けた後の事を話し始めた。
「アジトの情報をヒーロー達から盗もうと俺達は考えたりしたんだけど、妖怪だけじゃ成功するかわからないって意見が出て霊和ちゃんに協力してもらおうってことになったんだ。」
そのために医者や看護師が出払ってからヒーラー系の妖怪達に体力や妖力を回復したと教えてもらった。
「無理矢理回復させてごめんね。早く解決済ませたかったんだ。
何処かからロング白髪(シラガ)の姑みたいなのが聞き付けるかもしれないからさ…。」
苦い顔をしたフゥ2が溜め息を吐こうとした。
「姑とは誰のことだ?」
「…?!」
低い男の人の声が病室に響く。
皆が一斉に扉横に立っていたうんがい鏡を見る。
うんがい鏡はボディーである鏡の部分を光らせて、誰かが出てくるのが見えた。
『貴方はたしか……──ぬらりひょん。久しぶりだね。』
10年前にフゥ2達に私を守るよう任を授けた人だ。
「私の髪は白髪ではなく銀髪だ。」
「誰のことかわかってんじゃん!!」
フゥ2はツッコむが、水色の顔は青くなっていた。
「実際に会うのは10年ぶりか?此方はいつも妖怪テレビ越しに見ていたので久しく思わないがな。
そして今回の件も見ていたぞ。情けないことにお供は全員主人を助けられなかったようだが。」
「ごめんなさい…。」
「お供の失態の所為であるが、妖怪ウォッチが盗まれた事は妖魔界に大規模な災害の前触れと謂えよう。
実害が起きる前に事を済まさなければならん。」
ぬらりひょんは何度かフゥ2を睨み付ける。その度にフゥ2はビクビクしていた。
堪らず私が頼んだから離れてしまったのだと訴えるが、最終的に決断した己自身が悪いと突っぱねられる。
「その事について、尊大なお方が説明をなさって下さる。」
『?』
「ぬらりひょんが言う尊大なお方って…まさか……、」
フゥ2が何かを思い付いたように扉の方に顔を向ける。
「ああ。俺が説明しよう。」
聞いたことのない男の人の声がうんがい鏡から発せられた。
また鏡の部分が光り、誰かが出てくる。
金髪のツンツンした無重力ヘアーに赤を基調とした重厚感のある服を着て、ちょっと日焼けした肌が健康的に見える。2~30代くらいのイケメンな青年だった。
「エンマ大王!?」
「大王様!」
「わざわざ大王様が!?」
辺りがざわつく。
『エンマ大王って妖魔界の長の…?』
「そうだ。
俺は妖魔界を統べるエンマ大王をやっている。
お前が小さい頃から暇があれば妖怪テレビ越しに見ていたぞ。ぬらりの目から抜けて何度も会いに来ようと思ったか……。
フゥ2達との冒険…楽しそうでなによりだ。」
エンマ大王は苦い顔をして私のなにもない左手首を見る。
「妖怪ウォッチがあったのは100年も前のことだ。
人伝(ヒトヅテ)に妖怪ウォッチの言い伝えが有ろうと、妖怪ウォッチを見たことのない他人が手に入れようとは思わないだろう。それも霊和が一度テレビに映ったくらいじゃ妖怪ウォッチを使っているとは気付かない。何か決定的な思惑がなければ盗らない。」
「俺がおじいちゃんから武勇伝として妖怪の事を聞いてたって、妖怪ウォッチを手にしてなかったら信じなかっただろうからね。」
100年も前じゃ曾祖父母より前の時代になり、実際に妖怪ウォッチを使った体験を聞くということもない。
「今はあれこれ考えていても仕方ない。
一刻も早く妖怪ウォッチCとメダル、ついでにジバニャンを取り戻して欲しい。」
しかし…、と一度間を開けてエンマ大王は深刻な顔をするので、私は思わず固唾を飲む。