66.5話
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~残された人間と幽霊と猫~
霊和が父の横を走って橋を飛び下り、慌てて手すりから身を投げ出して下を見る。
「霊和っっ!!!」
「オレっちを置いていかないでニャーーン!!」
「あの子やっぱり自殺願望者だったの…っ?」
霊和は手っ取り早く下に行くために飛び降りたのだが、誰に言うでもなくいきなり飛び下りたので皆が驚くのも当たり前だ。
幽霊でさえ、先程まで話していた相手が何十メートルも高さのある橋から飛び下りるとは思っていなかった。
「着地したようだけど心臓に悪いよー!」
「よかったニャン…。
オレっち霊和ちゃんの所に行きたいニャン!どうしたら行けるニャン?」
ジバニャンは谷を見るが降りられそうな傾斜はない。
父が下へ行く道を知っていたようで、下に降りられる階段があるダムへ走る。
「ナイスだニャン!」
「あ、ちょっと待ちなさいよ。私も付いて行ってあげるわよ!」
必死に走る父にジバニャンと幽霊が続く。娘の無事を間近で見なくてはと焦る父は二人を置いてどんどん進んでしまう。
「あんな高さから落ちて生きてるなんてあの子人間じゃないのかしら?
そういえば下に何かいるって言ってたけど、私(幽霊)にも見えない幽霊でもいるのね~。」
普段人間と話すことの出来ない幽霊は饒舌に話す。だが人間は一切聞いておらず道を探していた。
「確か階段はこっちに……、」
「階段ならこっちから行った方が早いわ。」
「こっち…いや、あっちだったかなぁ…。」
「だからこっちだって言ってるでしょ。」
「私の記憶の限りでは右だったはず。よし、こっちだ!」
「こっちって言ってんでしょうが!!少しは話を聞きなさい!!」
「っうぁあッッ!!?」
幽霊が指し示す方角とは違う方へ足を進めるのでイラッと来てしまい怒鳴り散らす。
それに異常な程に驚く人間に全く聞いていなかったと怒りと呆れが同時に胸の中を渦巻く。
「道はこっち!
いい?私が案内してあげるからこんな簡単な道で遭難とか止めてよね!」
「…あぁ、と…。
すまないが、私は君の声を聞くことは出来ない。
私の"個性"は幽霊を見る事と幽霊の強い感情を聞くだけなんだ。
浮遊霊並みの思考しか持たない君の声は激情した時にしか聞こえない。」
「は?個性?何言ってるの。さっきは私と普通に喋ってたじゃない。」
橋の中央では普通に話せていた。幽霊も感情の起伏はなかった。
「娘の"個性"のお陰でさっきは話せていた。
娘と手を繋いでいただろう?娘は他人と素肌を触れ合う事でその人物まで幽霊が見えるようにしてしまうんだ。
私の上位互換だから幽霊と会話することも可能だ。」
「何話してるニャン。早く進めニャン。」
「個性って…彼女(橋から飛び下りるくらい)個性的ではあるけど。
てか人間に対して上位互換て…物じゃないんだから失礼じゃないかしら。」
「だからわざと無視してるってわけじゃないからね!あと道を教えてくれてありがとう。」
あっちだよね?と幽霊が指した方へ進む。
勿論幽霊の声は聞こえていないので答えないし、ついでに言うとさっきから父の後ろにいるジバニャンの声はどちらにも見えていなく聞こえてもいない。
ジバニャンも父の姿しか見えていない。
足を進めた父の後ろを納得の行かない顔をしながら幽霊は付いていった。
だが、
「あーもう!また間違えてるわよ!
階段はこっちだってば!あんた下に降りる道知ってるんじゃなかったの!?」
父がなかなかの方向音痴だと悟った幽霊はこのままじゃ下に行けないと案内役を買って出た。
そしてやっとこさダムの階段までたどり着き、階段を降りていると霊和に召喚されたジバニャンだった。
R01.08.02