65話
夢小説設定
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一般社会が休日の午前9時、霊和達は自家用車に乗り家を出ようとしていた。
「皆気をつけていってらっしゃいね。」
「ああ。行ってくるよ。」
お母さんは運転席側の窓から中を覗いて手を振る。
『もし何かあっても私がお父さんを護るから大丈夫だよ!』
「お父さん嬉しいなぁ。」
「普通そこは父親が、娘は何としてでも護るよ!と言うところですよ…。」
私は助手席に座り後ろにはフゥ2、お父さんの後ろにはジバニャン、その後ろにウィスパーがシートベルトをして座っている。
お母さんに見送られながら家を出発して、一度警視庁に寄って現場に向かった。
一時間も走っただろうか、両脇に木が生い茂る道を進んで行くと、小さな駐車場と小屋がある場所に着いた。
「この先だよ。付いてきてね。」
駐車場から出てしまい道沿いに歩いて行くと、KEEP OUTと書かれた黄色いテープが道一杯に張られていた。道の真ん中には看板が立っており、"この先立ち入り禁止"と書かれている。
「入っていいんですか?」
「テープは事件後に張られたものだけど、この看板はもっと前から置かれているんだ。」
不気味そうに私の後ろに隠れるウィスパー。
お父さんにウィスパーの声は聞こえないのでテープを跨いで先に進んでしまう。
『前から立ち入り禁止だったってこと?』
「ああ。
この先はダムがあって、その途中に橋がある。
その橋では昔から自殺者が後を絶たなくて、いつからか立ち入り禁止になったんだ。」
私もテープを跨ぐ。ジバニャンもジャンプして立ち入り禁止の土地に足を踏み込む。
『自殺……。』
自殺した者は天国にも地獄にも逝けず、輪廻転生も出来ずにこの世をさ迷う者が多い。
そして自殺者は妖怪にはなれない。自分の命を軽く見る者が妖怪となり人々に影響を与えるには些か心許ないからだ。
「でも"敵"が関わってる事件なんだよね?」
「"敵"は殺害した人を自殺したと思わせたいんじゃ?」
「ヒーロー殺しなら世間に報せるために殺人してたのに、ヒーロー殺しの模倣犯は自分が殺ったとバレたくなかったみたいに取られられちゃうよ。」
"敵"は自己満足の為に動いている説がある。
自己満足なら世間に知らしめた方が満足に浸りやすい。
だが今回の事件はこんな山奥で人目に付かず、自殺多発地なので自分が制裁したと世間に知られない可能性が高い。
『どうして警察はヒーロー殺しの模倣犯だと断定したの?』
「山の中でもこの先はダムもある。さっきの駐車場にも橋にも防犯カメラはバッチリだよ。
橋の防犯カメラに被害者と加害者が映っていた。」
被害者はまぁ…うん、アレなんだけど…。と言葉を濁す。
アレとは何か聞くがはぐらかされて答えてくれなかった。
「なんとまぁマヌケな犯人ですこと。」
「殺害そのものは映っていないが、行きは二人だったのに帰りは一人なんて殺人もしくは自殺幇助(ホウジョ)しか考えられないだろう?自殺多発地に態々幇助なんて必要ない。だからこれは殺人だと判断した。
"敵"だとわかったのは以前にも色々やっている指名手配の人間だからだよ。」
『一人じゃ寂しいから二人で自殺するつもりが、裏切られた可能性はないの?』
「それもなくはないが可能性としては低いかな。元々ヒーロー殺しの後釜として"敵"活動をする連中が誰かと一緒に自殺しようとするなんて考えられない。」
とするとやっぱり殺人になっちゃうのかな…。
「私も現場がどんな光景になってるかわかっていない。
細心の注意をして進もう。」
お父さんが言っているのは自然が壊されているとか死体が転がっているとかではない。
自殺多発地に幽霊がどのくらいいるのか心配しているのだ。
私は頷いて辺りを見回しながら歩く。
数分すると赤い大きなアーチ橋が見えた。川がある渓谷を跨ぐための、車が余裕ですれ違える程大きな橋だ。
『少し霧が出てるね。』
「下が川だからね。気温が低いんだよ。」
辺りを見回しながら橋の真ん中まで来て足を止める。
「何か見えるかい?」
『ん~…誰もいない…。
ここって本当に自殺した人いるの?』