64話
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───…
試験が終わり気が付いたら保健室に寝ていた。
『…んぅ…また寝ちゃったんだ。』
「霊和ちゃんおはよ。
やぶれかぶれ院長が回復してくれたんだよ。」
「1日に2度も呼ばれるとは思ってもいなかったわい!」
「いやースミマセンね。」
マッスルフォームのままでいるオールマイトとやぶれかぶれ院長がすぐ近くにいた。
眠気の覚めない頭で、やっぱり回復してもらってたんだと思った。
「霊和。」
『?』
オールマイトがいる方とは逆を見ると、隣のベッドにかっちゃんが座っていた。
『かっちゃんも起きたんだね。』
「ついでにだからそこの小僧ともう1人も回復しておいた。」
やぶれかぶれ院長は疲れたと言って保健室を出ていってしまった。多分帰ったのだろう。
「帰るぞ。…オールマイト、手を離せ。」
『うん。』
「あ、そうだった…。
今日は帰ってゆっくりするといい。」
挨拶をして保健室を出て、今日はさすがに疲れたからと雲外鏡で帰ることにした。
かっちゃんと一緒に潜って私の部屋に着くと、かっちゃんは早々に帰ってしまった。送ろうとしたが断られたのだ。
仕方なく玄関前まで送り、部屋に戻ろうとするとお母さんが私に気付いた。
「あら今日は早いのね。
少し早いけど夕飯食べちゃいなさい。」
『うん。』
制服から部屋着へと着替えて、まだ仕事中なのか家にいないお父さん以外の皆で夕飯を食べてお風呂に入った。
お風呂から出て軽くストレッチをする。
『回復してもらったのに眠いなぁ…。』
「精神的なものじゃございあせん?
霊和ちゃんでも緊張するんですね~。」
「回復って言っても、起きられるくらいにしか回復してもらってないからね。」
『え、そうなの?』
「自己治癒能力がなくなっちゃっても困るからねー。
今日はもう寝るといいよ。」
『そっかぁ。
…うん。寝て回復も身体には必要だよね!』
フゥ2の言葉に納得して、ストレッチを終了する。
ジバニャンの寝床とフゥ2の布団を敷いていると、扉からノックの音とお父さんの声が聞こえた。
『お父さんお帰りなさい。
今日は帰って来れたんだね!』
手が塞がっているのでウィスパーに扉を開けてもらう。
「もう寝ようとしてたの…?
話があったけど明日の方がいいかな?」
敷かれた布団を見て言ったのだろう。
話くらいなら今聞いても問題ないのでお父さんを部屋に招き入れた。
なのにいざ話すとなると、お父さんはどもってなかなか話が進まない。
「うんとね、ちょっと色々あって……少し面倒臭いというか…なかなか厄介なことがあって、こんなこと言うべきじゃないんだけど……」
「何ですか焦れったい!!
ズバッと言ったらどうですか!?」
「そうニャン!面倒臭いのはお前ニャン!」
『二人とも落ち着いて…。』
ゆとりを持って会話しようよ。お父さんもだけど。
「あーうん、そうだよね。お父さんが落ち着かないと……。
…本当はこんなこと娘に頼るようじゃいけないんだろう…。
だけどね、問題が起こってしまって霊和の手を借りたいんだ。」
『私の?
それって幽霊のこと?悪霊でも出たの?』
「…ヒーロー殺し・ステインが逮捕された後、ステインの動画が拡散されただろう?」
『うん、クラスでも会話に上がってた…。』
オールマイト以外のヒーローは偽物だ。偽物のヒーローは、ヒーローという肩書きを使って私利私欲を満たす醜い生き物だ。偽物のヒーローをのさばらしてはいけない。
ヒーロー殺しは誰もが見られるネットの動画投稿サービスにそう言った動画を投稿していた。
その動画は瞬く間に世界へ広がっていき、ヒーロー殺しに賛同する者が"敵"となりステインの代わりをするようになった。
「ヒーロー殺しに賛同する者の仕業だろうという殺人事件が起こり、私の部下がその現場に見に行ってくれた。
だがその部下はその次の日に無断欠勤をし、電話に出ても悲観的 自嘲的 攻撃的…とでも言うのだろうか性格が真反対のようになってしまったんだ。
その部下はいつも明るい性格で、個性も課の中では比較的強い方だ。そんじょそこらの幽霊に負けるような奴じゃない。」
悲観的、自嘲的、攻撃的、全部ネガティブな感情だ。
幽霊に取り憑かれるとそうなることもあるだろうが、心霊捜査課は取り憑かれたんじゃやっていけないから皆幽霊に耐性があるはず。
対心霊用の道具も持っている。
「それならばと二人で行かせたが駄目だった。二人はクスリでもしたのかのように異常な行動を繰り返すようになったんだ。
課で一番強い部下にも行かせたが、そいつとは音信不通になってしまった。
そいつは違う課に探してもらってるよ。
だがたった5人しかいなかった心霊捜査課にはもう私しかいないんだ…。
私が調査しようにも、課長ではあるが私の力は音信不通の奴より弱い。
私だけでは現場に行っても皆の二の舞になるだけだ…。
だから手を貸してほしいんだ。頼むよ。」
お父さんは手を床に付いて頭を下げる。
まるで、否、実際にお父さんもそうしようと思ってやったんだろう土下座のような姿勢になり、私はどうすればいいのか困惑する。
「霊和ちゃんのお父さんが職場の人間を心配するのはわかる。自分一人になっちゃって一人で切り盛りしなくちゃいけないのも。
だけどヒーロー免許も持っていない子供に言っていいことなの?警察には守秘義務ってのがあったんじゃ?」
『確かに……。
お父さん、フゥ2が守秘義務がいいのかだって。』
フゥ2のもっともな質問に、お父さんは目をグワッと開いて力説し始めた。
「そんなこと言ってる場合じゃないんだよー!
ステインのせいでまだまだ仕事が残ってるし、ステインに便乗した奴らの事件まで押し付けられたんだよ!?
お偉いさんから早く解決しないと部所潰すぞとまで脅迫されたんだ!一人じゃ寂しいよー!」
「一人が寂しいとか子供ですか!」
霊和ーっ!と泣きながら抱き着いてくるお父さんから離れてお父さんの言葉に承諾する。
『明後日休みだからその日に私も一緒に行くよ。
お父さんの部下さん達が可笑しくなったのは幽霊じゃなくて妖怪のせいなのかもしれない。もしそうだったら妖怪か私にしか解決できないだろうからね。』
「ぐすっ……、いい娘を持って私は幸せだ…。
明後日は私と現場までドライブデートしようね。早く終わればそのままショッピングしようか。」
『お父さんの仕事の為に行くんだからね!わかってる!?』
何の目的で一緒に行く事になったのかわかっているはずなのだが、娘の前に行けばただの親バカであった。
そんなこんなあってその日は早く寝るはずだったのにいつも通りの時間に就寝したのだった。
R01.07.09