99話
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寮に帰ると鬼のように顔を怖くさせた相澤先生が待ち構えていた。
何も言わせる隙もなく、いっくんとかっちゃんは拘束される。
「ヒーロー仮免試験終えたその晩に喧嘩とは…元気があって大変宜しい。」
「こわっ。」
「背後に炎が見えるニャン。」
言葉とは裏腹に怒りに燃える相澤先生をオールマイトが止める。
原因があったからだと、相澤先生の耳元で囁いている。何を言ったのか聞こえなかったが、相澤先生を説得し拘束が緩んだ。
「──…だからルールを犯しても仕方ない………で済ます事は出来ません。」
オールマイトの説得は失敗した。
「然るべき処罰を下します。
先に手を出したのは?」
負い目を感じているのか目を離してかっちゃんが答える。
「爆豪は4日間、緑谷は3日間の寮内謹慎!その間寮内共有スペース清掃、朝と晩。プラス反省文の提出。
怪我については痛みが増したり引かないようなら保健室行け。但しばあさんと妖見の個性に頼るな!勝手な傷は勝手に治せ!」
『え!?』
怪我が酷いようなら説教の後に治そうと思っていたのに…。
「当たり前だ!自業自得の怪我については治すな。
言っておくが清掃の手伝いも無しだからな。」
『!?』
私の心が読まれてる!?
内緒で…と考えたが、もし手伝ったら二人の謹慎期間を延ばすと言われて泣く泣く承諾した。
相澤先生に寝ろと命令されて、いっくんとかっちゃんが男子寮へ消えて行くのを見届けた。
『えー…と、先生?明日お出掛けしたいのですが…、』
怒り心頭な相澤先生に恐る恐る声を掛ける。
「明日が新学期なのはわかってるだろ。」
『終わってからです。妖魔界に行ってエンマ大王に聞いてこなくちゃいけないことがあって…。』
内容を話していいのか分からずオールマイトを仰ぐ。
「"敵"連合が妖怪絡みで動いている可能性がある。妖怪の重鎮と相談したいんだ。」
「"敵"連合がですか…。
…移動手段は前と同じだな?」
『部屋から妖魔界まで直行です。』
相澤先生は少し考え、二つ返事で認めてくれた。
オールマイトと一緒に頭を下げると、相澤が心の内を明かしてくれた。
「世間に妖怪の存在がバレれば妖見が使われるようになることは分かっていた。俺達の判断ミスだ…。」
『そんなことありません!』
ずっと相澤先生や根津は広まらないように手を回してくれていた。
最初から"敵"は妖怪の存在を知っていて、私が妖怪ウォッチを付けて体育祭に出場したことで、現在も妖怪との交流手段があるとバレてしまったのだ。"敵"が動き出したのは私が原因だ。
『妖怪は私の友達なんです。友達に危険が迫ったら助けたいです。私が好きで動くんです。
誰かの手足のように何でもかんでも動くことはしませんよ。自分の行動は自分で判断します。』
「、…そうか。
その意志を大切にしろよ。」
ポン、と相澤先生の手が頭に乗せられた。
細くて角ばっているが大きく安心出来る温もりに身を許す。
数回撫で上げすぐに離された手を物欲しげに見てた事に気付いたのか、相澤先生は困ったように話を変えた。
「それはそうと、オールマイトと連絡先交換したか?」
『あ。』
相澤先生に言われた通りオールマイトと連絡先を交換する。根津とはいつ交換出来るだろ?
軽く二、三こと話して夜も遅いのでお開きとなった。
自分の部屋に戻ると丁度ボロボロになったウィスパーと鉢合わせして、ぶっ飛んで行ったウィスパーを思い出した。
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─────
およそ1ヶ月ぶりの登校日。
日課となっているジョギングの為に朝早くに起きる。
テレビを見ながらお母さんの作った朝食を食べる──ことが出来なくなり、静かな食堂で1人寂しく食事をする。ウィスパーが気を聞かせてくれてずっと喋っていた。
少し胃を休ませてから外へ出ようとすると、男子寮の方から慌ただしく誰かが降りてきた。
「良かった、まだいた!」
『いっくんおはよう。』
「おはようございます。」
「僕も走るから待って!」
よほど大急ぎで降りてきたのだろう。靴下も履いてない。
玄関外の階段に座って靴下を履くのを見ながらストレッチをする。
『寮内謹慎なのに出て平気なの?』
「ゴミ出しで外に出るから寮の周りなら大丈夫だよ。
見栄えはしないだろうけど…。」
『いっくんと一緒なら何処だって楽しいよ。』
「霊和ちゃん…~っ!」
何故か悶えてるいっくんを不思議に見ていると、背後で軽快な音が聞こえた。
息を弾ませながらかっちゃんが近付いてきた。
『おはようかっちゃん。もう走ってたんだね。』
「おぉ。」
かっちゃんの目がいっくんを向く。二人とも詰まったのかのように何も発さない。
『ちょっと待ってて。すぐに準備運動終わらせちゃうから。』
「……。
速くしねえと置いていくぞ。」
こんなこと言っていても待ってくれているかっちゃんは優しいと思う。
何で皆かっちゃんは優しいって言っても信じてくれないんだろ…。
『寮暮らしになったから、もう皆で走れなくなるかと思ってた。昨日も喧嘩してたし。』
「ここでその話振ります!?」
『?』
「…っ
喧嘩じゃねえ。」
ムスッとした顔をして、かっちゃんは先に走り出してしまった。
慌てて私達はかっちゃんを追い掛ける。
『アレはオールマイトが言った通り、かっちゃんは悪くないんだよ。』
残り火程度にしか残っていない個性を増やすことは出来ない。医療に精通したかやぶれかぶれ院長だって無理だった。
個性と引き換えでもオール・フォー・ワンを捕まえる事が出来ただけ万々歳だ。
『かっちゃんもだけど、いっくんも自分を責めないでね。』
「うん…わかってる。
いつまでも自分を責めてちゃいけないよね。オールマイトのためにも。」
『そうだね。』
思ったよりいっくんは前向きに捉えていた。
私は嬉しくっていっくんの腕に飛び付く。かっちゃんが引き離そうとしてきたけど、かっちゃんの腕も絡んで三人で繋がる。
『皆でヒーローになろうね。』
「うん!」
「…あぁ。」
夏休み明け最初のジョギングは幼馴染み3人の絆が深まった日だった。