次はコマさんそっくりのマイティードッグ狙いだ。ジバニャンにはレッドＪが此方に来ないように囮となってもらう。
マイティードッグの標的となった私は、マイティードッグの周りをぐるぐると回る。爆弾が飛んで来てたまに当たりそうになるがなんとかかわし、マイティードッグは目を回ってよろけポロッと爆弾を足元に落とした。

「おーっと、マイティードッグが爆弾を落としてしまい自爆！まんまと霊和ちゃんの作戦に引っ掛かってしまったようです！」

残りはレッドＪのみになった。
ジバニャンが爪で引っ掻いたり殴ったりして一ヶ所に攻撃する。小さな傷でも何度も傷を付ければ段々と大きくなるのだ。そのダメージを負った場所に雷をぶつける。
野太い叫喚が会場にこだまする。それでもレッドＪは倒れなかった。
レッドＪは雄叫びをして妖気を放つ。その妖気は青い炎となり身体を纏った。

「こ、これは…なんということでしょうか！？レッドＪは"覚醒"しました！」

覚醒とは、身体が壊れない為に普段無意識下に抑えている力が解き放たれたこと。自身でさえ気付いていないので覚醒と言われるのだとウィスパーが解説した。

「マジかニャン…絶対勝てたと思ったのにニャン。
…っニャニャッ、負けた気になっちゃダメニャン！」


ジバニャンは自分を奮い立たせてレッドＪに攻撃した。私とコマさんもジバニャンのやる気に引かれ攻撃する。
私は後方からや、直接身体に触って雷を放ったり、レッドＪの前後左右に動き回る。ジバニャンも大きく動き回り攻撃する。
レッドＪは覚醒したことによって動きが速くなり、腕を横に振っただけで突風が吹いた。当たってしまい吹き飛ばされるがなんとか受け身を取って骨は守った。
そしてジバニャンと合体していた時に立てた作戦を実行するためにタイミングを計る。

『(ここじゃない…

もうちょっと…

)うﾞっ！』

土壇場で思い付いた作戦だ。倒せるかもわからない。それでも一欠片の望みがある限り諦めたくない。

何度か叩き付けられ吹き飛ばされで身体に無数の傷が出来る。
タイミングさえ合えば…っ！

何度も何度も走り回って攻撃してを繰り返し、足を踏み込む時にピタ。と作戦を実行するタイミングが全て整ったと分かり、私はレッドＪに真っ直ぐ飛びかかる。

左からレッドＪの拳が物凄い勢いで迫ってくる。それでも私はかわさずに突っ込む。
拳に力を込め、殴る……動作をする。そう、動作だけだ。

レッドＪの拳がぶつかる直前にコマじろうのメダルを外した。

「！？」

妖怪ウォッチＣを使用する時の仕様で、レッドＪは力任せに拳を振り回したので空振りをしそのまま身体が傾く。

『百烈肉球・一点突き！！』

私を覆っていた靄が散布する前に飛び出し必殺技を打つ。先程ジバニャンとコマじろうの技で痛め付けた所へ何度も何度もだ。

「なんと！合体を解いたと思ったらジバニャンと合体しています！」

そう。私はコマじろうのメダルを外すと共にジバニャンのメダルを挿入した。靄の中ではどんなことが起きているのか私にもわからないが連続で使用出来るのではないかと思い付いた。ぶっつけ本番ではあるが成功し、レッドＪに膝を付かせることが出来た。
隙を充分に作れ、とどめの技へと頭部に踵落としをする。

猫であろうと脳を激しくぶつけられ脳震盪を起こしたレッドＪはフラフラした後にゆっくりと地面に伏せた。

「…………気絶してます。
…レッドＪ戦闘不能。よって霊和ちゃん率いるＨチームの勝利です！優勝おめでとうございます！！」

紙吹雪が舞う中で、息を切らしながらも皆でハイタッチをして勝利を喜ぶ。

フゥ２が客席から飛んで来て抱き付いてきた。

「おめでとう！やれば出来る子だと思ってたよー！」

『あ…ありがとー。…えへへ。』

フゥ２から抱き付いてきてくれるなんて小さい頃以来だ。嬉しくて顔が弛んで戻らない。
ニヨニヨとしているとジバニャンも司会のウィスパーまでも抱き付いてきて、しまいにはコマさんも来て揉みくちゃにされた。



暫くして司会に戻ったウィスパーから優勝商品として妖楽という一日一組限定の超高級料亭の招待状を貰った。

「ここめちゃくちゃ美味しいんだよ。」

『行ったことあるの？』

「変なおじさんに招待状貰ってね～。それ以降100年以上行ってないよ。早く行きたいなー！」

「残念ですが参加者の４人と、完璧な司会を遂行した私の分しかありませんよ。」

「俺のは！？完璧な応援をした俺にも招待状ちょうだいよ！
凡庸な司会しかしてないウィスパーにはあるのに！」


「なんですってー！！」

戦闘が全く出来ない為参加しなかったフゥ２は端っこにいるだけでも出れば良かったと後悔した。

身体を動かして疲れた私達は帰宅し、妖魔界の見学は終わったのだった。





R02.06.06