ヒーロー育成学校の最高峰の学校だからと言って、授業は他の学校と変わらないみたいだった。

｢──…んじゃ次の英文のうち間違っているのは？」

相澤先生と同期らしいプレゼント・マイク先生。
入試の時はハッチゃけていたが今は淡々と授業をこなしている。
私達生徒も板書をしながら考える。
私の視界に入る空いた窓からマイク先生に向かって何かが飛んでくる。

『ぁ…。』

「おらエヴィバディヘンズアップ盛り上がれーー！！｣

「メラー！！」

炎で出来た鬣(ﾀﾃｶﾞﾐ)を持つ二足歩行のライオン、メラメライオンがマイク先生に取り憑いていた。

『授業中だから取り憑かないでー。』

小声で言うが教室の端と端で離れた私とメラメライオンには聞こえるはずもなく、暫くは取り憑かれたマイク先生の授業になってしまった。






そんな何気ない午前を終わらせ、いよいよ午後の授業となった。
待ちに望んでいたヒーロー基礎学だ。

｢わーたーしーがーー！！
普通にドアから来た！！！｣

講師のオールマイトが教室に入って来た。
No.1ヒーローの登場に、生徒達はザワザワと興奮する。

｢オールマイトだ…！すげぇや本当に教師やってるんだな…！｣

｢銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ！｣

｢画風違い過ぎて鳥肌が…！｣

『わぁ！オールマイトだよ！ジバニャン起きて！』

机の上に置かれたクッションの上に寝ていたジバニャンを揺さぶる。

｢ヒーロー基礎学！
ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う課目だ！｣

ヒーロー基礎学は最も単位数が多いらしい。
早速だがとオールマイトが突き出した本日の内容。

___戦闘訓練だ。

戦闘訓練という内容に、興奮する者、緊張する者、焦る者、様々だった。

｢そしてそいつに伴ってこちら！｣

オールマイトが手元のリモコンのボタン押す。すると壁から棚が飛び出す。
そこには１から２１までの番号が印されたケースがあった。

｢入学前に送ってもらった"個性届"と"要望"に沿ってあつらえた…戦闘服(コスチューム)！！｣

コスチューム、その単語に生徒達は顔を高揚とさせる。

「着替えたら順次グラウンド･βに集合だよ。」

オールマイトはそう言い残し、一足先に集合場所に行ってしまった。
私達はそれぞれ更衣室に向かった。

戦闘服は入学前に希望を取ってあるが実物は見ていないないのでワクワクする。
私は肩と手を出して、それ以外は出さないで動きやすい服装。肩を出すのは仲間に妖怪が見えるようにするため、私が手を繋がなくても触れるようにだ。
それからメダルを入れるようのポケットと、妖怪図鑑を入れられるポシェット。
そして何よりも重要な厚底靴にして欲しいと頼んだ。少しでも身長を高くしたいのだ。

ケースを開いて着替える。中には間違える事のないように説明書が入っていた。

私の戦闘服は上はハイネックの袖無しの身体にフィットした服に、動きやすいズボン、厚底のブーツ。
二の腕から手首にはアームカバーがついている。

『ポケットの中にポケットがある…！順番に入れとこ～。』

右側の太股に付けられた大きめのポケットは中も区切られていて６枚メダルが入るようになっていた。
メダルの順番を忘れないようにしておかなければならないな。と、ジバニャンから順に入れていった。

そしてポシェットは図鑑のサイズピッタリだ。
腰にベルトを付け、ポシェットの下の方にもあるベルトを左太股に回す。
図鑑の所為で慣れるまでは少々動きずらいだろうなと思うが召喚する妖怪の制限を無くす為なので仕方ない。

「わー！霊和ちゃん格好いい！」

戦闘服に着替えたお茶子ちゃんが褒めてくる。

『お茶子ちゃんも格好いいよ！』

「ちょっとパッツパツになっちゃったけどね～。」

ピンク色で纏めた戦闘服のお茶子ちゃんはアハハ～と苦笑する。
ヒーローっぽいからいいと思うけどなぁ。
梅雨ちゃんも身体のラインが出た服だった。

更衣室を出たらフゥ２達からべた褒めされた。

そして演習場へ行ったら既に男子達は待っていた。
皆奇抜な格好をしていてかっちゃんは刺々しい格好だった。
いっくんはオールマイトを基準にしたんだろうとすぐにわかった。

『かっちゃん格好いいね！』

「あﾞぁ！？ったりまえだろ！
…テメーはシンプルだな。」

「お、おい！爆豪女の子と仲良いのか！？羨ましいっ！」

かっちゃんに早速友達が出来たみたいで金髪に黒のメッシュが入った男子がかっちゃんに小突いていた。

「羨ましがってろ！霊和には近付くなよ！」

「ははーん。さては狙ってるな？」

「うるせェ！！」

金髪の男子に爆破するので慌てて止めた。

『私妖見霊和。よろしくね。
かっちゃんと、あそこにいるいっくんの幼馴染みなの。』

飯田くんと話しているいっくんを指差す。

「幼馴染みかー。いいな！
俺は上鳴電気！よろしくな！」

ラフな格好をした上鳴くんがニカッと笑顔で挨拶をする。
近く見ていた赤髪と黒髪の男子二人が俺も自己紹介していいか？と尋ねてきた。

「俺は切島鋭児郎っつーんだ。個性は硬化。」

「俺は瀬呂範太！肘からテープを出すんだ。」

瀬呂くんはヘルメットを脱いで紹介してくれた。
切島くんは上半身裸で寒くないのだろうか？

｢始めようか有精卵共！
戦闘訓練のお時間だ！！」

皆揃ったようでオールマイトが話し出した。

「先生！ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか!?」

「いいや！もう二歩先に踏み込む！屋内での対人戦闘訓練さ！」

屋外で"個性"を持て余せば多くの一般市民やヒーローの格好の的になる。なので大体の敵は逃げ道を用意している。
そうすると、屋内での犯罪行為がどうしても多いのだ。

「君らにはこれから"敵"組とヒーロー組に分かれて２対２の屋内戦を行ってもらう!!」

「「「!!?」」」

いきなり実戦みたいだ。
室内ならばくそくはいらないかなー？と悩んでいると、皆が次々にオールマイトに質問する。

「基礎訓練もなしに？」

「その基礎を知るための実践さ！
ただし今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ。」

「勝敗のシステムはどうなります？」

「ブッ飛ばしてもいいんスか。」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……？」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか。」

「このマントヤバくない？」

まさに質問の嵐。一人だけは戦闘訓練に関係のない質問だった。

「んんん～～～聖徳太子ィィ!!!」

オールマイトはカンペを見て戦闘訓練について説明をする。
"敵"組がアジトに核兵器を隠していて、ヒーロー組はそれを処理する。
ヒーローのノルマは制限時間内に"敵"を捕まえる、もしくは核兵器を回収する事。
"敵"は制御時間まで核兵器を守るか、ヒーローを捕縛する事がノルマになる。

コンビと対戦相手はくじで決めることになった。
オールマイトはくじの箱を持ち出して皆に引かせた。