24話
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入試の次の日。
私はいっくんが心配で、学校に行く前に家に寄ろうと決めた。
そのためにかっちゃん家に行って今日はランニング出来ない事を説明しなくてはいけない。電話で説明するにも携帯は持っていないし、家電は時間が時間なため迷惑になってしまう。
昨日のうちに電話しておけばよかったと後悔した。
私とウィスパーは朝食を早急に食べ終わり、荷物を持って家を出た。
今日に限ってはフゥ2もいっくんが心配なのか早く起きて付いて来ている。
「ウィスパーは昨日手術を見てたんだよね?」
「えぇ…。
やり方は独特でしたが、キズナース並みに治療が得意なようで。ちゃんと治っていましたよ。」
『独特?
それなら今日は学校来れるのかなぁ?』
今日も駆け足でかっちゃん家に向かう。
かっちゃん家の玄関への道が見える通りに曲がると、かっちゃん家の前に誰か立っていた。
「あ、霊和ちゃんおはよう!」
『いっくん!』
件の本人が元気そうに此方に手を振っていた。
『昨日試験が終わった後、いっくんを見ちゃって…。もう大丈夫なの??』
「見てたんだ。
そっか…、うん、大丈夫!
全部治してくれたよ!」
拳を握ってアピールしてくるいっくんだが、どこか顔色が優れない。
『本当に本当?もうどこも怪我してない?』
いっくんの頭から足の爪先、背中も見て確かめる。
「大丈夫だから。
だから服捲らないでくれると嬉しいかな…。」
苦笑いして身だしなみを整えるいっくん。
『うぅ…よかったぁ。
死んじゃうんじゃないかって心配してたんだよ。』
安心していっくんを抱き締める。いっくんがあたふたしているような気がするけど、抱き締め返してくれたのでもっと力を込める。
「よくわからないけど、治してくれた人が凄い生命力だって褒めてくれたんだ。」
『?』
首を傾げていると後ろに引っ張られていっくんから離れてしまった。
「人様の家の前でイチャコ…うざってぇマネしてんじゃねぇ!!」
『?
かっちゃんおはよ。』
目を尖らせていっくんを睨むかっちゃん。
いつ出てきたのか気がつかなかった。
「あー、イチャコラと言いたいんでしょうが、霊和ちゃんと出久くんをその対象に入れたくないのでしょうね。」
『どういう意味?』
ウィスパーとフゥ2はかっちゃんを生暖かい目で見つめるだけで教えてはくれなかった。
いつまでもかっちゃん家の前にいるのは迷惑なのでランニングを開始することにした。
約半年前に一緒に走っていた時よりも体力がついたのか、いっくんは軽々しく走っている。
怪我も本当に完治しているみたいだ。
いつも通りに公園まで走って制服に着替え、そして学校に向かう。
半年ぶりの懐かしさに口数が増える。
『もうお師匠さんとの特訓はいいの?』
「うん。元々入試までの約束だったんだ。
って言っても僕は決められたメニューをこなすだけだったんだけどね。」
オーバーワークをして怒られたと笑って話す。
「でも、試験もダメだった…。
仮想"敵"も10ポイントしか倒せなかったし、0ポイントを倒したら身体が動かなくなってた。」
「うぃす…。」
掛ける言葉がなかった。
だがかっちゃんとフゥ2は何か引っ掛かった。
「…カスを倒した?」
「…0ポイントを倒したの?
あんなばっかデカイロボットを!?」
確かにいっくんは言った。0ポイントを"倒したら"動かなくなってた。と。
私だってちからモチにばくそく、マサムネの力を借りて倒したのに、いっくんは個性もないのに倒したのか?
「う、うん。その、詳しくは言えないけど、いろいろあって個性が発動したんだ。
でも、まだ制御出来なくて……。
半年間一緒にいられなかったのも個性の為に身体作りしてたんだ。」
『そう、だったんだ。』
無個性だと思って他人より片身狭い思いで生きてきたいっくん。もう無個性だからと弄られる事はなくなるんだ。そう思ったら他人ながらも嬉しく感じた。
「ハッ。
つっても10ポイントでダウンだ?
個性制御出来ないクソしか稼げてねー奴が雄英なんて行けるわけねーだろ。」
『かっちゃん!』
咎めるがかっちゃんは顔を背けて取り付こうともしない。
いっくんも苦笑いしているが、憧れだった雄英に行けないかもしれない事に落ち込んでいるのがわかる。
どうにかして励まそうとするが気休めの言葉しか浮かばない。
『私もまだ行けるかわからないし、いっくんも行けないかわかってない!
だから今は祈ろう!
祈ってれば叶うかもしれないよ!』
「うん、ありがと…。」
拳を握って力説するが、いっくんはとぼとぼと先に行ってしまう。
「霊和ちゃん、それ励ましてませんよ。」
『え!?』
それから合格不合格通知が来るまでの1週間、いっくんはずっと心此処に在らずだった。
H30.05.03