21話
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進路希望調査書を提出して数日、帰る支度をしていると担任が慌てて私に話し掛けてきた。
「妖見に来客だ!今から応接室に行ってこい。
だが決して失礼な事はするなよ?お前の将来に関わるかもしれないんだから。」
担任も後から行くから先に行ってろと言われて、帰りのショートホームルームはまだだが応接室に向かった。
「いったい誰でしょう?
しがない霊和ちゃんに訪問者など。」
『全然わからない…。』
「将来に関わる…。
………もしかして警察?
"敵"退治がバレたとか…。」
『え!?』
フゥ2の考察に身体が固まる。
「"敵"退治はオレっち達がしてるから霊和ちゃんがやってるとは誰も思わニャいニャン。」
『妖怪が見えてるのは私だけだもんね…。』
不安な気持ちを抱えながら職員棟の一階に行く。
閑散とした廊下に私の足音が響く。
他の部屋と違いドアノブが付いた少し豪華な扉が目の前にある。
ノックをすると男性の声がして入るように言われる。
応接室の中は真ん中に低いテーブルがあり、その両脇に数人用のソファーと一人用のソファーがある。
壁にトロフィーやメダル、賞状が飾られ、大きな花瓶に花が生けてある。
だが先程聞いたはずの男性の姿が見当たらない。
『あれ?』
「誰もいないね。」
「ここだよ、ここ。」
私から背を向けられていたソファーから発声られた。
部屋に足を踏み入れその場所を覗くと、数回会ったことのある人物がいた。
『え?何で根津がいるの?』
服を着た鼠がちょこんとソファーに座っていた。
何故か根津がソファーで寛いでおり、私を訪ねたはずの訪問者とやらはいない。
『根津が先生を操って呼んだの?』
「操るだなんてそんなことしないさ。」
では訪問者に憑いてきて、そのまま居座っているのだろうか?
そして訪問者はトイレなど席を外している?
頭がこんがらがって瞬きを多くすることしか出来ない。
「取り敢えず座らないかい?」
『う、うん。』
私とジバニャンで数人用のソファーに座ると根津は私の前のソファーに座った。
「さて、ボクは君に頼みたいことがあって、突然だけど君に会いにきたのさ。」
『そうなの?』
「その前にもう一度君の個性を詳しく知りたい。」
『いいけどどうして?
それに私に訪ねてきた人がこれから来るから余り話せないよ。』
「…うん。
君は色々勘違いをしているようだね。
まずその訂正から入ろうか。
まず訪問者はボクさ。」
『……?』
なら先程担任が訪問者がくると言っていたアレは根津が取り憑いて知らせたとしか考えられない。
だが操っていないと先程否定された。
「そして君は出会った時から勘違いをしている。」
『んえ?
根津って迷子だったんじゃなかったの?
もしかして道分かってた?』
私の考えは間違っているのだろう、根津は唸ってため息をついた。
「そうじゃないよ。
君はボクが妖怪だと思っているようだけどね、ボクは妖怪ではないよ。」
『「「「……ええぇぇえっ!!?」」」』
思わず立ってしまった。
『ま、待って!
妖怪じゃないって根津はフゥ2達見えてたよね!?』
「そうニャン!」
「そうだよ!俺達が話してても普通に返してくれて……な、い?」
『え!?』
「そんなはずありません!私達が騒いでも見守るような目で見てたじゃありませんか!」
「いや…、確かにウィスパーが煩い時に喋らなかったけど、そもそも俺達が根津に話し掛けることもなかった。あったのは挨拶した時くらいで…。」
フゥ2達の知り合いじゃない妖怪相手には、フゥ2達が会話を遮ることは余りない。だから必然的に私が喋ることが多いのだが根津の場合もそうだった。
根津も私とフゥ2達との会話を無理矢理遮るような事がなかったので見えているのだと思っていた。
『じゃ、じゃあ今此処にいるジバニャンも見えないの!?』
ジバニャンを持って根津の前に出す。
「…何も見えないよ。
霊和ちゃんの掌が見えてる。」
そんな…。
ずっと勘違いをして知らない人に妖怪についてアレコレ教えてしまっていたらしい。
「てことは"敵"退治も…。」
『あっ、』
さっきフゥ2が冗談で警察かもと言っていたが、根津が叱りに来た…?
「僕は2年前から"敵"の不可思議事件について個別に追っていたんだ。
そこで君を見付けた。」
やはりその事で来たのだ。叱られるのは何回されても慣れない。
無意識に身体を強張らせる。
「それで君の事を調べ、個性を知り得た。
そこで君の素晴らしい個性をボクの学校で活躍させて欲しいんだ。」
『………?』
「どういう事ニャン?」
叱られるでもなく、個性を調べた?ボクの学校?活躍?
一文字も理解出来なかった。
『あの…よくわからないんだけど、ボクの学校って?私転校するの?』
「ふふっ、そうじゃないよ。」
根津は胸ポケットから一枚の小さな紙を出してテーブルに置いた。
座って紙を見ると根津の名前と"国立雄英高等学校校長"と書かれていた。
『雄英の、校長…?』
「どええぇぇえ!!?
この鼠があの雄英の校長!?」
「こんニャ鼠がニャン!?」
ウィスパーが根津の周りを何周も回って頭から足先まで見る。
「君の個性は霊視。人成らざるものが見える個性。あってるよね?」
『う、うん。』
「よかった。
それでボクは是非とも雄英に君を迎え入れたいんだ。」
「っ!
霊和ちゃん、コイツの言葉に承諾しちゃ駄目だ!」
フゥ2が私の袖を引っ張って、少しでも根津から遠ざけようとする。
「そう警戒しなくとも大丈夫さ。君達をどうこうする気はないからね。」
「そんなこと言って霊和ちゃんを利用する気だろ!」
フゥ2が根津に怒鳴るが、フゥ2が見えていない根津は答えない。
『んと、私達を利用する気はない?』
「勿論さ。ただ君みたいな他にはない個性は"敵"にとってカッコウの獲物なんだ。
ヒーローを目指すなら世間に知れ渡るだろうし、君が"敵"に誘拐される可能性もなくはない。
君の個性が"敵"に渡ったらヒーローは破滅するだろうからそれだけは阻止しなくてはならない。
なら、日本一セキュリティの強いボクの学校にいれば安心だと思わないかい?」
「確かにそうですね…。」
話の密度が濃すぎて色々こんがらがる。
だが根津に勧誘されたりフゥ2に拒否しろと言われているが、かっちゃんとの約束があることを忘れてはならない。
『あの、私は最初から雄英高校志望してるの。
だから来て欲しいとか言われなくても行くつもりだったよ。』
根津はその言葉に目をぱちくりとさせて顔を弛ませる。
「そっかそっか。それじゃ手続きといこうか!」
『え?え?』
根津は電話をしだした。
「此方の方はある程度纏まったよ。そっちもそろそろ終わったかな?」
数回言葉を交わして携帯をしまう。
一分もしないうちに男の人と担任と校長が入ってきた。
「根津と一緒にいた…。」
「あの暗い男ニャン!」
『イレイザー……さん。』
私が敬称を忘れているとイレイザーは睨んできたのでくっ付けるように訂正した。
根津と一緒にいるからイレイザーも妖怪ではなく人間なのだろう。